賭博発覚は、白昼堂々賭け金取立人の登場という不気味さ
報道で知る限りだが、この事件にはいくつかの疑問点がある。その第一は、賭博発覚の不自然さ。不自然というよりも、不気味といったほうがいいかもしれない。報道によると、賭博の胴元の関係者と思しき者が、福田投手の賭け金未払い分の取り立てのため、わざわざジャイアンツ球場までやってきたという。この手口は、闇金融業者等が利息未払い及び元金未返済の借り手に対してプレッシャーをかけるため、借り手の職場に押しかけるものと似ている。
普通のサラリーマンの場合、世間体を考えると、自分が借金をしていることを外部に知られたくないし、それを返済できな事態はもっと知られたくない。その筋の貸し手である金融業者等は、借り手の“知られたくない心理”を利用して、わざわざ借り手の職場に出向き、返済を促す。貸し手も非常識的手段を用いるわけだから、覚悟のうえの行為、つまり、合法的金融業者というよりも、反社会的勢力に属する者であると考えてもいい。いまのところメディアは、福田投手のところへ取り立てに来た者については報道を控えている。その理由は定かではない。
さて、賭博は胴元が機能してはじめて「業」として成り立つ。単一の「胴元」と多数の「賭ける者」という、組織的関係が構築されてはじめて「業」として拡大する。その反対のケースとしては、賭け麻雀や賭けゴルフといった、当事者同士で賭け金をやりとりするケース。この場合は、レートを異常に高くしなければうまみはない。加えていうならば、組織的非合法の賭博において、素人が胴元になるケースは稀である。
そんな賭博の構造を踏まえて、今回の取立人の存在を推測してみよう。一説には、“口封じ”だという。それもおおいに考えられる。福田投手はじめとするプロ野球界の賭博関与者に対し、「この先、なにもしゃべるな」という警告を与えたという。つまり、賭博行為の発覚については覚悟のうえの「取り立て」ということになる。別言すれば敢えて、プロ野球界に賭博が常態化していることを、非合法の胴元が積極的に明らかにしたことになる。そんなことができるのは、「反社」勢力以外に考えられない。
賭博関与の3選手がみな投手だったのは偶然か
第二点目は、読売球団の野球賭博常習者が3人とも投手だったこと。3選手が野球賭博に入り込んだのは、同じポジション同士で仲が良かったから、という推測も成り立つ。だが筆者は、投手というポジションの特殊性に注目している。なかんずく、中継ぎ投手というポジションは、ほかのどこよりも八百長に関与しやすい。福田、笠原は中継ぎ投手として一軍での実績があるのだが、彼らのような中継ぎ投手が勝負所で登板して四球を連発、塁が埋まったところで長打を食らえば、試合は決まってしまう。つまり、読売の負けを決定するにはもってこいのポジションなのだ。観戦者からは、コントロールに苦しんでストライクを取りに行き、長打を食らったように見えるから、その投手が八百長に関与したとは思わない。
松本竜の場合は先発型のようだが、一軍戦力にはなっていない。八百長を仕組む側が、松本竜の将来性を買って、八百長の実践者として育成しようとしたという推測も成り立つ。中継ぎ投手は登板機会が多いから、八百長を仕組む側にとって、八百長機会も多い分、都合がいい存在だ。しかも、前述のように、単独で勝負を決められる機会が多い。
同じ投手であっても、先発投手の場合は中5~6日の登板間隔のうえ、先発して八百長による負けが続けば目立つ。さらに負けが込めば、ローテーションから外される。先発投手は八百長を仕組む側からすれば、適当なポジションではない。
野手の場合は、八百長の使命を帯びた単一の選手が打席に立ってチャンスにわざと三振しても、後続打者が試合を決めるヒットを打てば、八百長は成立しない。試合を決めるタイムリーエラーを犯すことも、確率的にみて極めて低い。野手に八百長を仕組ませても、野球というスポーツではその成立は難しい。
賭博関与者がセリーグ最強球団の一つ、読売「巨人軍」所属だった理由
三点目は、賭博関与者が読売の選手だったこと。読売は戦力的に見て、セリーグでは最強球団の一つ。毎シーズン、優勝候補に挙げられている。八百長を仕組む側から、つまり胴元の立場からすれば、強いチームが負けた方が潤う。
賭ける側は、堅く稼ごうとするから、読売の勝利に大金をつぎ込む。そこで読売が負ければ、逆ばりしていた側に大金が転がり込む。たとえば、伝統の一戦といわれる読売―阪神の場合、今シーズンの対戦成績は16勝9敗と、読売が阪神に大きく勝ち越している。しかも、読売のホーム・東京ドームでは圧倒的に強い。東京ドームで行われる読売―阪神を賭博の対象にしたとすると、読売勝利の確率は8割を超える。賭ける側は、堅く見込んで、読売の勝利に大金を賭ける。そこで、八百長を仕組んで読売が負ければ、阪神勝利に賭けた側は大金を得るという筋書きだ。
八百長はなかったのか、あったのか、あるいは・・・
▽疑惑の取立人、▽賭博関与者が全員投手、▽賭博関与者が読売「巨人軍」という、強豪チームに所属、という3点から推測すると、読売球団の選手が野球賭博をしていたという段階にとどまらず、八百長を??あるいは関与?た可?性を否?できない。なかったとしても、八百長を企てようとしたことが????か。もちろん、これは推論の域を脱しないし、証拠もないので確言することは憚れる。
筆者のような邪推や疑惑を抱かれないためにも、読売球団は外部の調査機関を立ち上げ、徹底的に調査を行うことが必要だ。また、メディア及び広告代理店側はプロ野球という、彼らにとって都合の良いコンテンツを傷つけない配慮をするよりも、独自取材で深層究明を図ってもらいたい。この問題をうやむやにすれば、プロ野球界及びメディア、広告代理店業界は、将来に禍根を残す。