2017年9月10日日曜日

スーパー歌舞伎の衣装デザイン塗り絵

スーパー歌舞伎「新・三国志ーⅠ」の衣装デザインの塗り絵が発売されました。

この塗り絵は、同スーパー歌舞伎の舞台美術・衣装デザインを担当した毛利臣男さんのデザイン画。

作品としてすばらしいものです。






2017年9月6日水曜日

落日の本田圭佑

サッカーW杯アジア地区最終予選の最終試合、サウジアラビア―日本は、ホームのサウジアラビアが1-0で勝利し、ロシア行きを決めた。この試合、先のオーストラリア戦でロシア行きを決めていた日本にとっては消化試合、一方のサウジアラビアにとっては予選突破を決める大事な試合、両国のモチベーションの差が結果にあらわれた。

FWはオーストラリア戦から総入れ替え

日本の先発メンバーは次の通り
GK=川島永嗣
DF=昌子源、長友佑都、酒井宏樹、吉田麻也
MF=井手口陽介、柴崎岳、山口蛍、
FW=本田圭佑、原口元気、岡崎慎司
※交代=本田→浅野、岡崎→杉本、柴崎→久保

フォーメーションはオーストラリア戦と同じく4-3-3。最終ラインには選手の変更がなく、中盤はアンカーに前回の長谷部の代わりに山口が入り、前回の山口の位置に柴崎が入った。攻撃陣は右に本田、左に原口、ワントップに岡崎と、前回から総入れ替えとなった。

なお、控え選手は、長谷部、香川が試合前に帰国し、大迫がベンチ外となったため、オーストラリア戦ベンチ外だった杉本、武藤、高萩がベンチ入りした。

前半限定の本田が大ブレーキ

前半はサウジアラビアがとりわけ守備的で前に出ない作戦。日本に主導権があったはずだが、日本の攻撃も鋭さがない。最悪だったのが本田で、本田にボールが出るとスローダウンというかノッキングというか、日本の攻撃のテンポがとたんに悪くなる。本田が得意とするといわれるボールキープについても、たいして強くないサウジアラビアのディフェンスのプレッシャーでバランスを崩して奪われたり、転んだりする始末。原口が左サイドで守備攻撃を問わず豊富な運動量で献身的に動き回るのと好対照をみせた。そんなわけでチャンスが生まれず前半を終了。本田は前半で退いた(浅野に交代)。

不調の本田を見越していたハリルホジッチ

報道によると、ハリルホジッチ監督はいまの本田の状態が相当悪いことをオーストラリア戦以前につかんでいて、先発を見送ったとのこと。この試合も前半限定の起用だったという。もしかしたら、オーストラリア戦はベンチ外でもよかったのかもしれない。日本がリードされているような展開になったとき、最後の切り札として、彼を使うつもりだったのかもしれない。いずれにしても、監督は決戦(オーストラリア戦)で先発起用する意思はなかったようだ。

メキシコリーグで本田は使えるか

本田のいまの状態は、サウジアラビア戦における彼のパフォーマンスが示したとおり、きわめて悪い。メキシコに戻ってすぐ回復するとは思えない。筆者はメキシコリーグについて知識がないが、おそらく守備についてはサウジアラビア(アジア諸国)よりは厳しいだろう。

本田については彼の体調を含めて一時的に状態が悪いのか、それとも加齢による退潮傾向にあるのかを判断する材料がないが、筆者は後者だと考える。ミラン時代の長期にわたるベンチ要員(試合出場せず)から、気候的に厳しいメキシコへ。かの地の諸々の環境への順応不足、足のケガ…といったストレスがプレーに影響しないはずがない。

ストレスを抱えたまま試合出場に恵まれないと、さらに体力、運動能力は弱まる。本田の不調が続けば、本人の意志とかかわりなく、監督・コーチの見る目は厳しくなり、試合出場機会が激減する。いわゆるスポーツ選手が陥る負のスパイラルだ。

メキシコが本田最後の地か

メキシコに限らず、中南米のサッカー界は、高給とりの異邦人に厳しい目を向ける。一方、今回のW杯予選2試合で本田の商品価値は日本国内で著しく下がった。となると、日本の経済力が本田を媒介にしてパチューカに恩恵を与える機会も自ずと減少する。本田の広告塔としての価値が低下すれば、本田がメキシコで求められるのはプレーによる貢献だけ。今シーズンのメキシコは、まさに本田にとって正念場となった。

2017年9月4日月曜日

Daoさんから

ベトナムに帰省していたDaoさんと再会。

すてきなお土産をいただきました。

ありがとう。


2017年9月1日金曜日

オシムからハリルホジッチへ――日本流サッカーの完成を

先発選手の選択がすべて

サッカー日本代表がオーストラリアに2-0で勝利し、W杯出場を決めた。

勝因はハリルホジッチの大胆な選手起用と、その起用にこたえた若手選手の活躍ということに集約できる。先発には本田も香川も岡崎もいなかった。

ということで、この試合の先発メンバーとフォーメーションを整理しておこう。

  • GK=川島永嗣(メッス)
  • DF=長友佑都(インテルミラノ)、吉田麻也(サウサンプトン)、酒井宏樹(マルセイユ)、昌子源(鹿島)
  • MF=長谷部誠(フランクフルト)、
  • 山口蛍(C大阪)、井手口陽介(G大阪)、
  • FW=浅野拓磨(シュツットガルト)、乾貴士(エイバル)、大迫勇也(ケルン)

フォーメーションは、4-3(1-2)-3(2-1)。アンカーに長谷部を入れ、インサイドハーフに山口、井手口を配した。後述するが、この形が勝因の一つとなった。前出のとおり、先発に本田、香川、岡崎がいない。筆者が故障明けでベンチ外と予想した大迫がワントップに入った。大迫は想像以上に回復していたようだ。

勝因は献身性と運動量

試合展開の詳細は割愛するが、ハリルホジッチの先発起用の肝は、コンディションが良く、90分間、走れる選手だった。先発選手の選択は、選手の近くにいる内部の者(監督・コーチ等)にしかわからない。ハリルホジッチはオーストラリアの攻撃を前線から封じる策を目指し、そのことが可能な選手を選択し結果成功した。

得点者は浅野と井手口。浅野の裏への飛び出し(スピード)、井手口のゴール前のねばり(運動量)――得点シーンは対照的な形ながら、2つのゴールの根底には献身性と運動量という共通点が見いだせる。

勝因を大雑把に表現すれば、前出のとおり献身性と運動量だ。それは得点場面に限らない。90分間、全局面で労を惜しまず、攻守にわたり走る続けたことと換言できる。乾もそれに邁進した。いまの本田及び香川にはそれができない、とハリルホジッチは考えた。ハリルホジッチのゲームプラン――攻撃的守備からゴールに結びつけるイメージ――の中に、彼らは入っていなかった。

筆者は前回拙Blogにおいて、ベンチ入り23名と先発11名を予想したが、間違った部分があるものの、選手を選ぶポイントは正しかったと確信している。

筆者の予想は、
DF=吉田、昌子(控え=植田、槙野)、SB=長友、酒井宏(酒井高、三浦)、MF=長谷部、山口、柴崎(井手口、香川、小林)、FW=久保、原口、岡崎(本田、乾、浅野)であった。実際には、MFでは柴崎の代わりに井手口が、FWは岡崎の代わりに筆者がベンチ外とした大迫が先発し、久保、原口の代わりに乾、浅野が先発した。

ベンチ外については、MF高萩、FWの大迫・杉本・武藤の4人と筆者は予想したが、前出のとおり大迫が先発であったものの、高萩、杉本、武藤の3人については的中し、DF植田がベンチ外であった。

道半ばだったオーストラリアの仕様変容

日本にとって幸運だった面がある。相手オーストラリアのプレースタイルの変容だ。同国は従来のロングボール、空中戦というイメージを変え、ポゼッション重視のパスサッカーに仕様を変更していた。同国は今年のコンフエデレーション杯で強豪を苦しめたため、仕様変更に自信を持ち始めていた。

しかし、オーストラリアの仕様変更は日本にとって結果が実証したように、好都合だった。同国の中盤に人数をかけた3-4-3のシステムは日本にとってプレスがかけやすい。日本の前線からの積極的守備により、オーストラリアの攻撃のスピードは失われた。

日本のゲームプランは、オーストラリアの仕様変容を見越して、スピードと運動量で相手を封ずることだった。同国がその裏をかいて、アンチフットボールに徹したら、日本のプレス作戦は空を切る。ボールキープせずにロングボールで前線の長身選手に当てられれば、プレスは空回りする。ロングボールの返りを拾われて決定的パスを出されることもあるし、予測しにくいこぼれ球に対応できず、ミスも出る。オーストラリアのフィジカルを生かした強いプレッシャーや接触プレーは、日本にとって脅威だった。ところが、ポゼッションサッカーではそうしたオーストラリアの強みを発揮しにくい。オーストラリアの仕様変更はこの試合時点では、それほど完成したものではなかったのだ。

新生日本代表の出初式

この試合の前、ハリルホジッチに対する批判が強かった。一つは国内組を起用しないことの批判であり、もう一つは、本田、香川等の「主力」といわれる選手を外すことに対する批判だった。前者については拙Blogで既に書いたので繰り返さない。

後者は広告塔である彼らを起用しないことに対する広告主(広告代理店)からの不満の表れということになる。広告主の圧力はハリルホジッチに限らず歴代の代表監督にかけられた。広告代理店は複数のメディアを使って、代表監督に圧力をかける。「この試合で勝てなければ監督更迭」という言説が協会関係者(幹部)の声として流される。実名のときもあれば、匿名のときもある。

代表監督の若手抜擢については、「経験がない」の一言で断罪し、「スター選手」で試合に臨むことを好む。その実は、広告塔を起用してくれ、なのだが。

プロなのだから、スポーツとはいえ利権が絡む。カネがすべての世の中だから、投資した者は回収を望む。回収を望む声とチームが強くなるプロセスとは一致しないこともある。ただいえるのは、この試合の前から、本田、香川は「過去の人」だったということ。広告主=広告代理店はそのことを予見できず、いまだ彼らの広告塔としての価値を疑わなかっただけなのだ。代理店も広告主も先を見る目がなかっただけなのだ。それを代表監督の力量のせいにしようとする。愚かなことだ。

日本流サッカーで世界と闘うしか道はない

日本は予選を勝ち抜いたとはいえ、W杯本大会において予選通過し、決勝リーグで勝ち進む実力を身に着けるには時間がなさすぎる。この先すぐに世界レベルのストライカーが輩出される予兆もない。だから本大会で負けてもいい――わけはない。

サラエヴォ(筆者撮影)
日本が本戦で勝利するためには、この試合のように、献身性と運動量で相手を上回るしか道はない。スター主義を排し、規律を重視し、チームプレーに徹する道だ。この道はかつて、あのオシム元日本代表監督が目指し、完成させようとした「日本サッカー」だった。FW浅野が示したアジリティー(俊敏性)を加えたほうがいいのだが、それもオシムは指摘していた。

モスタル(同上)
オシム(ボスニアヘルツェゴビナ・サラエヴォ出身)は道半ばで病に倒れたけれど、彼の志は同じ国の出身者、ハリルホジッチ(同・モスタル出身)に受け継がれた。余談だが、サラエヴォもモスタルも筆者が大好きな街(サラエヴォとモスタルはバルカン半島、ボスニア・ヘルツェゴビナの都市で、至近距離に位置している)。新旧の代表監督の話から、いま、筆者の思いははるかバルカン半島に飛んでいる。