ブラジルサッカー界が懐く、3つの本田への不信感
カリオカの本田に対する熱狂的歓迎ぶりの一方、ブラジルのサッカー専門家の間では、本田の成功を危ぶむ声が強い。Web Sportivaによると、①直前、本田がオランダリーグのフィテッセをわずか4試合出場しただけで退団したことに対する不信感、②本田が昨年、マンチェスター・ユナイテッドやミランにTwitterを通して逆オファーしたことが、笑い話のように伝えられているということ、③本田がカンボジアの代表監督(正式ではないが)を兼任していることと、オーストリアではクラブチームを経営していたこと。これらのことは、本田がサッカーに全力で取り組んでいないという評価につながっているという。
以上の3点はきわめて当然であり、本田がプロのサッカー選手として真剣に試合に臨むつもりがあるのか、とだれしも思う。本田は、現役サッカー選手というよりも、スキャンダラスな人物であり、経営者・指導者だと評価されている。
本田を阻むブラジルの5つの壁
本田がこれからブラジルでプレーするに際し、待ち受ける困難性について推測してみよう。第一の壁は、相手選手から厳しいマークを受けることだ。サッカー王国を自負するブラジル選手が、鳴り物入りでやってきた東洋人に自由にプレーさせるとは思えない。イエロー覚悟で潰しにかかるのではないか。ブラジルに限らず、南米サッカーの基盤は強力な守備力である。堅く厳しい守備をいかに突破するかが逆に、ブラジルサッカー選手の攻撃力のレベルを上げてきた。もちろんその逆もある。守備力と攻撃力の相互性だ。華麗なサンバのリズムのような…というブラジルサッカーに対するイメージは幻想に近い。筆者は、本田のスピードでブラジルの守備陣を突破できる確率は低いように思う。
第二の壁は、周囲からの強いプレッシャーだ。本田が順調に滑り出せばそれは杞憂にすぎないが、壁にぶつかればメディア、サポーターから情け容赦ないブーイングを浴びる。極論だが、生命の保証もない。
第三の壁は、ブラジルの熱帯・亜熱帯気候と国土の広さだ。広いロシアでプレーした経験のある本田だから、ブラジルくらいOKだと考えがちだが、彼はすでに33才。厳しい気候のもとでの長距離移動は過酷だろう。ちなみに、2018年シーズンのブラジル選手権(リーグ)は全国26州・1連邦直轄地のうち、9つの州にある20チームが2試合総当たりで勝点を競った。
第四の壁は、言語。ブラジルはポルトガル語の国で欧州に比べると英語は一般的でない。オランダ、ロシア、イタリア、メキシコ、オーストラリアといろいろな言語圏でプレーした経験を持つ本田だから、言語の壁は高くないのかもしれないけれど、不安要素であることに変わりない。
第五の壁は、本田のフィジカル。これは前出の気候・風土及びブラジルの治安の悪さ、言語等からくる精神的疲弊を含んだ総合的な壁とも言える。コンディションを上げるのにどれだけの時間を要するのだろうか。
本田の挑戦を揶揄する気持ちはない。成功してもらいたい。だが筆者の予想では、彼のブラジルでの挑戦は不発に終わるように思う。