キャリア不足
監督としての資質を疑う者もいるが、キャリアがないことが一番だろう。二軍やBCリーグ等の監督キャリアを除いて、NPB一軍監督だけのキャリアをみると、ラミレス(DeNA)が一番長くて5シーズン目。矢野(阪神)・与田(中日)が2シーズン目、高津(ヤクルト)・佐々岡(広島)が1シーズン目。原は通算で14シーズン目である。この現象は偶然である。5球団が監督の若返りを図った時期に原がカンバックしてきたまで。このことは、球界全体に指導者の人材不足が蔓延していることの証左であろう。その理由については別の機会に論ずる。
セオリー無視
5球団の監督に共通する特徴はセオリー無視である。なかで目立つのが盗塁失敗。たとえば0-2ビハインドでランナー1塁、打者が中軸の場面で単独盗塁を試みて失敗、チャンスを潰す。最近の事例を挙げると、与田(中日)は読売戦で大事なランナーを盗塁させ失敗、その後に長打が出て同点の機会を失った。最も印象的なのが、前回の当Blogで取り上げた「カオス矢野(阪神)」。なんとノーアウト、ランナー2塁、打者サンズの場面で、3盗のサインを出した。タイミングはアウトだったが相手3塁手が送球をこぼしてセーフ。結果オーライだがあり得ない采配である。サンズは得点圏打率.449の好打者。3盗の成功率がどのくらいか知らないが、まさか40%を超えることはあるまい。あまりにハイリスクな作戦である。
それだけではない。筆者がイライラするのは読売の投手がコントロールを乱してボールを多投している場面で盗塁を試み失敗するケースが多いことだ。経験のない監督が「名采配」を求め、自己満足で盗塁を試み失敗し、流れを読売に渡して負ける。例を挙げなかったが、佐々岡も高津もラミレスも同じようなもの。状況を顧みない無謀な采配が目立つ。
不可解な選手起用
選手起用も不可解である。「カオス矢野」が打率1割台の坂本を起用し続ける謎については当Blogですでに述べたが、近本を起用し続ける理由もわからない。近本の打率は2割7分前後、俊足で守備はうまい。しかし、あの弱肩はプロではない。9月7日の読売戦、ランナー3塁で浅いセンターフライを本塁にバックネットに直接あてるような大暴投をして1点を献上した。次に、これまたランナー3塁で浅いセンターフライを本塁まで届かずのゴロ返球でやすやすと生還を許した。読売のサードコーチは近本の弱肩を見越して、ホーム突入を指示し、ゆうゆうセーフ。この程度の選手がレギュラーであれば、読売に勝てるわけがない。
チーム内に競争がない
読売を除くセリーグ5球団に共通しているのはチーム内に競争がないこと。監督が特別視した選手がレギュラーの座につくと、その座を脅かす選手が出てこないまま、シーズンを終る。レギュラーを脅かすような選手がいないのならば、トレードに活路を見出すことも可能だろうが、それもしない。
5球団がそろいもそろって選手層が薄いわけはない。そろって選手層を厚くする手立てを講じないのが不思議である。ドラフト制度が定着したいま現在、読売に優秀な新人選手が集まるような状況ではないし、FA制度を利用しているのは読売だけではない。
監督の権限が不明確
監督の権限が曖昧なのもセリーグ5球団のの特徴である。これは個々の監督の能力の問題ではなく、球団経営の問題ではあるが。読売は原が全権をもっているというが、他の5球団はどうなのか。GM制度を敷いているのか敷いていないのかも定かでない。GM不在ならば、監督は球団のどのポジションの人に要望を出すのか。そのあたりも明確ではない。ドラフト、トレード、育成、FA利用に係る権限を明確化しないと、強いチームは永遠につくれない。セリーグ5球団の監督は、今シーズンの失敗を糧にして、合理的な作戦を組み上げる勉強をしてほしい。