2.22は日本では「猫の日」。
いつにもまして、可愛がりましょう。
女性蔑視発言で東京オリ・パラ組織委員会会長を辞任した森喜朗。この人はいったいどんな人物なのか――総理大臣経験者の自民党の大物政治家という評価が一般的だが、それだけではない。文科官僚トップ(事務次官)を極めた前川喜平が『本音のコラム』(東京新聞2/7朝刊)において、森喜朗を端的に論評しているので紹介する。
森喜朗は正真正銘の右派政治家
前川は森のこれまでの危ない発言を列挙する――「日本は天皇を中心とした神の国」「教育勅語には時代を超えて普遍哲学がある」「子どもをつくらない女性を税金で面倒を見るのはおかしい」「国歌も歌えない選手は日本人ではない」などなど。これだけの妄言失言を繰り返してなお、国の要職にとどまっているのが不思議なのだが、選挙で勝てばすべてが許される日本の貧しい政治状況を反映する象徴的存在でもある。森の同類に、いまなお副総理の職にある麻生太郎がいる。
前川は森が清和会の領袖であり、自民党文教族のドンであった点を指摘する。安部・菅政権の文科大臣6人中5人が清和会、スポーツ庁長官も二代続けて森に近い人物だという。森がスポーツ利権最大のプロジェクト(生涯に二度はない)=東京オリンピック利権を貪ったことは容易に想像できる。
文科行政の面ではどうなのか。森は総理大臣時代(2000~2001)、教育改革国民会議を立ち上げ、教育基本法の改正と道徳の教科化を提言(2000年)し、第二次安倍政権がそれを実現させた。前川は、「日本の教育は森政権を境に右傾化した(略)。安倍政権は森政権の戦前回帰的な教育政策を忠実に継承した」と、また、森の信条は「神話的国体観念、滅私奉公、忠孝の道徳、家父長制秩序、男尊女卑だ」という。文科行政に半生携わってきた前川の指摘には説得力がある。
次期会長に必要とされる資質
森の差別発言辞任後、メディアは組織委員会長の後任人事報道で賑やかだ。候補者として五輪メダリストがあがっている。東京の組織委が合い渉らなければならない組織はIOCである。その幹部たち、バッハ、コーツは弁護士である。彼らはアスリート経験者ではあるが、いまや法律の専門知識を駆使した交渉ごとの専門家として、現職を全うしている。彼らの第一の目標は五輪精神遵守、世界平和実現ではなく、IOC(すなわち自分たち)及び五輪スポンサーの利益確保である。彼らがいま想定しているのは、最悪の事態が到来したとき、彼らのダメージをいかに最小化するかであり、これまで築いてきた五輪ビジネス・モデル及びそのブランド価値を維持することである。
日本人はIOC幻想に取り憑かれていて、ナイーブ(うぶ)な理想をIOCに託そうとする。次期組織委会長候補の顔ぶれを見ると、失礼ながら、国際弁護士の御仁を相手に交渉できる資質をもった方々とはお見受けできない。事務方がしっかりしているからIOCとの交渉については心配ない、という楽観論はタフな交渉を経験したことがない者のこれまた楽観論である。国際間取引は、トップの力量で決まる。