2024年5月7日火曜日

NPB序盤戦から見えてきたもの


 ゴールデンウイーク中、NPB各チームがひととおり、ホーム&アウエーの戦いを終えた。この時期の順位は無意味であるが、開幕前に予想した各チームのおおよその状況が把握できたし、予想もつかなかった事象も確認できた。  

(1)セリーグ 

 

 いま(2024/05/06)のところ首位が阪神で、2位に2.5ゲームの差をつけている。以下5チームが5割前後で団子状態。筆者が今季優勝と予想した阪神だが、チーム状態はきわめて悪い。クリーンアップの大山、佐藤が絶不調。この状態で首位にいられるのが不思議である。同じく2位と予想した広島は両外国人選手が故障で欠場中、さらに昨年打撃覚醒した末包昇大も故障で出遅れている。大砲3門を欠いて現在5位に低迷している。3位と予想した読売はDeNAと並んで同率2位。そんなところだろう。最下位と予想した中日が4位、4位と予想したヤクルトが最下位であるが、いずれも超僅差なので、いまの順位はどうでもよい。DeNAは筒香がNPBに復帰し、順位上昇の材料を見いだしたが、今永が抜けた先発陣が手薄。Aクラスは難しいだろう。 

 

(2)パリーグ 

 

 なんといってもソフトバンクの強さが目立つ。筆者が首位と予想したオリックスは借金2の4位。いまのところ健闘しているのが日ハムで貯金4の2位である。5位と予想した西武が借金9の最下位。しかも、上位を狙える資源が見当たらない。 

 

(3)小心者の阿部監督――読売「巨人軍」を考える(その2) 

 

大城が危ない 

 

 前回に続き、読売「巨人軍」について書く。まずもって、阿部新監督がチームに取り返しのつかない危機を生ずるような予兆を筆者は感じている。著しい打撃不振だ。 

 まず、開幕前、キャンプ・オープン戦で昨年打撃開眼した秋広を潰し、序盤で強打の捕手大城が潰れかけている。阿部監督は前回書いたようにアスリートタイプでチームを固めようとしているのだが、秋広、大城は阿部の価値観にそぐわない。大城のいまのチームにおける打撃序列は、岡本、坂本の次に位置する強打者でしかも捕手である。現在の読売が、大城に犠打を要求するようなチーム状態にない。彼がバントで送った走者を次打者が返せる確率は限りなく低い。 大城はチャンスで犠打をくり返し失敗し、阿部監督の精神的圧迫に耐えかねている。ノイローゼだろう。彼の打棒復活が攻撃力アップのカギとなるのだが・・・

 

大勢、西舘、横川が心配 

 

 投手陣も心配の種が尽きない。クローザー第一候補の大勢が開幕前、いまだ回復途上にあるとの報道があったにもかかわらず、身体状況を見定めずに序盤で使ってしまい、いま故障者リスト入りした。チームドクター等の医療スタッフのミスともいえるが、決断を下したのは監督である。 

 またグリフィンの故障は想定外だろうが、完治する前に登板させKOを食らった。 

 新人の西舘を2連投1休で使い続けている。西舘は大勢とは異なるタイプだが、変則フォームの投手であることは一致する。右投げのオーバースローでなんとクイック投法だから、体重が右足に乗り切らず、上体(肩、肘)にかかる負担が大きい。下半身の力がボールに乗り切らないのだ。NPBではオーバースローの右投手の場合、二段階スローのように右足に体重を十分のせて投げ下ろす投手が少なくない。上体が強い米国の投手ではあまりみかけないが、西舘がMLB投手並みの上体の強さをもっているようには見えない。西舘の投手生命が一日でも長くあるためには、二軍でフォーム改善し、先発型に切り換えることをすすめる。なお、前出の大勢もスリークォータ気味の変則フォームの力投型投手。彼がこの先長くクローザーを務め続けられるか心配である。「太く短く」という野球人生もあるが。 

 補強したブルペン陣だが、計算違いが生じている。ベテランの中川皓太 、高梨雄平が精彩を欠き、若手の直江、松井、菊池、井上温大が不安定。大勢、西舘は前出のとおり。安定しているリリーバーはいまのところ、船迫、バルドナードだけ。ケラー、馬場、近藤、泉もリードの局面では使いきれない。堀田、京本に期待がかかる。  

 先発候補6人中、戸郷、山崎、メンデス、菅野が生き残っている。高橋礼が先発を立派にこなし、ローテーションに入っているのは立派。

 先発の6人目、グリフィンの代役となった横川が心配だ。5月7日の中日戦終了直後、登録抹消(二軍落ち)となった。故障ではない。この試合の彼の成績は4回被安打6、2四球、自責点2で、その日までの防御率は1.38である。打線が2点以上取っていれば、クオリティースタートの勝利投手になる可能性もあった。この成績でノーチャンスはないだろう。 

  

野手の新戦力が出てこない 

 

 外野手では、松原、オコエ、重信、岡田、浅野が篩にかけられ、新人の佐々木、2年目の萩尾が残り、丸、長野、梶谷が復活したものの、梶谷は故障で登録抹消になり、秋広が消去法で登録された。 

 内野は前回のとおり、岡本(1B)、吉川(2B)、坂本(3B)、門脇(SS)は不変。彼らの内の一人が故障欠場した場合、即座に非情事態に陥ることは、坂本が休養した5月7日の中日戦のゼロ敗が実証したとおり。 

 

読売が打つべき手 

 

 攻撃力強化に資する既存戦力からの台頭の予兆は、いまのところ見られないし、これからもないだろう。MLBから放出された筒香どりに失敗し、日本人の大物選手をトレードで獲得する機会は失われた。残るは、MLB 、AAA等からの輸入しかない。この分野の情報がないので具体的な選手名を特定できないのだが、成功事例が思い浮かばないほど、難しい方策である。 

 既存戦力を有効活用するとするならば、丸、岡本、坂本、大城で3番~6番を固定する。吉川、門脇、秋広をレギュラーとして固定する。打順は相手投手との相性で決める。 

 オーダー例としては以下のとおりだが、弱点は2番。この打順にかぎり、犠牲バンドもあり得る。クリーンアップが塁を埋めて下位に下る打順である大城、秋広を自由に打たせ、得点力を上げることだ。そしていうまでもなく、キャプテン岡本が打ちまくることだ。

 松原、オコエ、重信、岡田、浅野といったアスリート・タイプが伸び悩んでいる以上、阿部監督の理想は棚上げして、1点にこだわる「細かい野球」「守りの野球」を放棄し、攻撃力をアップすることに専心すべきだ。菅野の復活で投手力がよくなったのだから、得点を上げることに注力すれば勝率は必ず上がる。 秋広、大城が復活しなかったらどうするか、今シーズンはあきらめるしかない。

 

1.吉川(2B) 

2.萩尾or佐々木(CF) 

3.丸(RF) 

4.岡本(1B) 

5.坂本(3B) 

6.大城(C) 

7.秋広(LF) 

8.門脇(SS) 

9.投手