そして11日(2011年)には、東日本大震災があった日。死亡15,891人、行方不明2,584人を数える自然災害である一方、福島原発事故も発生した。
20日はオウム真理教による地下鉄サリン事件があった日。死亡者13人、負傷者約6,300人という最大規模の無差別テロ事件だ。
戦争、自然災害・原発事故、無差別テロ事件と、内容は異なるけれど、日本の歴史に大転換を迫る性格をもっている点で共通する。マスメディアはそれぞれに鎮魂の報道を行うものの、報道の内容はいずれも希薄だ。事件・事故・災害の本質に迫れない。
まず東京大空襲――これは非戦闘員(市民)を空爆で虐殺する戦争犯罪。にもかかわらず、それを行った連合軍(米国)の残虐性を非難することがない。第二次世界大戦において、ドイツと日本に対して行った無差別空爆は近年におけるベトナム戦争、イラク戦争、そして、イスラエルによるパレスチナ弾圧作戦・無差別空爆の先駆けとなった。
制空権を握った側による無差別爆撃は地上の市民を死の恐怖に陥れ、生き残った者を思考停止(白紙化)に追い込む。いわゆる「ショック・ドクトリン」だ。思考停止(白紙化)は、加害者に対する憎しみを白紙化する作用と、通常の道徳観を破壊する作用となって現れる。
ISISの源流「タウヒードとジハード集団」の創設者アブムサブ・ザルカウイ(ヨルダン人)は2006年、イラクで米国の空爆で死亡している。ザルカウイの後継者たちで組織拡大したISISの過激性・残虐性は、空爆の恐怖による思考停止(白紙化)が育んだとも考えられる。
東日本大震災は記憶に新しい大災害だ。いまなお、8万9千人が仮設住宅で暮らしているという。復興とは名ばかりだ。復興していない現実を伝えることの方が、復興成功事例の一つを紹介するより重要なことは言うまでもない。
福島原発事故はさらに深刻化している。放射性物質による汚染は海・地下に垂れ流し状態。土壌汚染は除去しようがない。もちろん、住民が帰還できるはずもない。人体への影響が顕在化するのは時間の問題だと思われる。
さらに深刻な問題は、かかる重大な事故が発生しその後処理の道筋がつかないまま、日本政府が原発再稼働を推進することにある。原発は巨大なマネーを動かす。政府広報、電力会社広報によって潤う大手広告代理店=マスメディア業界は原発再稼働推進に積極的なため、反原発勢力をメディアから一掃しようと図り、ほぼそのとおりとなってしまった。
日本社会に変質、変容を指摘する声は多いが、「社会は変わっていない、変わったのはマスメディアだ」という、ある識者の呟きがSNSにあった。そのとおりだと思う。