プロ野球・読売巨人軍の高木京介投手(26)が野球賭博に関与していた問題で、プロ野球の熊崎勝彦コミッショナーは22日、高木京に1年間の失格処分、読売球団に対して制裁金500万円を科した。この処分は、日本野球機構(NPB)の調査委員会(委員長=大鶴基成弁護士)による報告書の処分案を受けた結果だ。
報告書によると、高木京は2014年4月末ごろから5月上旬ごろにかけて、同僚の笠原将生元選手(25)を介し、飲食店経営の男性らとともに、3、4回にわたってプロ野球の試合8、9試合で賭けを行い、野球賭博への関与を禁じた野球協約第180条(有害行為)違反にあたるとした。読売戦への賭けや敗退行為(八百長)、野球賭博常習者との交際は認められなかったという。
高木京の甘い処分に違和感
あれれ、読売選手による野球賭博関与問題では昨年11月、笠原、福田聡志(32)、松本竜也(22)の元選手3人が無期失格処分となったが、高木京への失格処分は1年間。違和感を覚えた人は筆者を含めて少なくなかろう。
調査委は、元選手3人に比べて(1)賭博を行った期間が短く試合数も少ない(2)野球賭博をやめた後、笠原元選手から再三、野球賭博に誘われたが断った−−など、野球賭博への関わり方の積極性の違いを挙げている。
だが、高木京の場合、前出の3投手が賭博関与問題で騒動になった後の調査では自らの関与を明かさなかった、と報道されていた。高木京の賭博関与発覚は週刊誌の読売球団への取材がきっかけだったはず。つまり3投手賭博関与後の当初調査では「だんまり」を決め込み、逃げ切ろうと図ったのではなかったのか。高木京は、「逃げ切れない」という状況判断により、やむなく「出頭」「白状」したのではなかったのか。このような高木京の態度は、むしろ前出の3投手よりも悪質だと判断するのが一般的ではないのか。
戦力として計算できる高木京は読売にとって貴重な存在
単純に考えれば、▽高木京が当初、調査に非協力的であった事実、▽逃げ切れないと判断してやむなく白状した事実、▽彼が前出の3投手とは違って、一軍の試合にレギュラー格として出場していた事実――に鑑みれば、彼こそが、野球賭博から八百長への最短の道筋にいたと考えられるわけで、高木京の処分が最も重くなるのが自然ではないのか。
ではなにゆえに高木京の処分が3投手よりも軽くなったのかといえば、読売球団が高木京を貴重な戦力として評価しているからだ。野球賭博のキーパーソンといわれる笠原は伸び悩み、福田は峠を越え、松本はこれから――の選手である一方、高木京は、あと5年は一軍の貴重な左腕中継ぎ投手として使えるメドがたっている。それゆえ、読売球団(=渡邊恒雄)はコミッショナーに対し、高木京を軽い処分とするよう働きかけたと推測できる。
読売の便宜を図る熊崎勝彦コミッショナー
今回のNPBコミッショナーの裁定は、「NPB=日本野球機構」が「YPB=読売野球機構」であることの証左にほかならない。熊崎勝彦といえば、検察官、最高検察庁公安部長、東京地方検察庁特別捜査部長を歴任して、第13代日本野球機構コミッショナーに就任した人物。東京地検が正義の執行機関だと思っている人はいまでは少数派だと思うものの、日本の検察界の大物の一人だ。それが読売グループの走狗として、読売球団に便宜を図るとは、ナベツネに恩義を感じての措置なのか、読売グループによほど世話になったのか――と想像したくもなる。
読売に由来し、読売が行使し、読売が享受する日本プロ野球
今回の熊崎勝彦の措置は公正さに欠け、NPBが読売グループの一部として機能していることの象徴だ。日本のプロ野球が、 from the people,…of the people,…by the peopleならぬ、from the YOMIURI,… of the YOMIURI,…by the YOMIURI(読売に由来し、読売が行使し、読売が享受する日本プロ野球)であることを熊崎が図らずも証明した。野球賭博事件の真相究明への道は固く閉ざされた、と判断せざるを得ない。