NPB‐2018シーズンは、広島の丸のFAによる読売入団をもって幕を閉じた。そこで、徒然なるままに今年のNPBをふり返ってみよう。
セは1強(広島)、5弱が継続
セリーグが広島、パリーグは西武が優勝した。CSはセが広島、パはソフトバンクが制し、日本シリーズはソフトバンクが優勝した。
筆者のリーグ戦セリーグ順位予想は3月14日付の拙Blogにて示したとおり、1.広島、2.阪神、3.読売、4.DeNA、5.中日、6.ヤクルト の順であった。
結果は、1.広島、2.ヤクルト、3.読売、4.DeNA、5.中日、6.阪神となり、ヤクルトと阪神の順位がそっくり入れ替わっていた。ほかの4球団の順位は予想どおりで、なんとも奇妙な順位となった。筆者の予想が当たったわけではないが、それなりの結果だったと思う。要するに2018シーズンのセリーグは昨年と同様、1強(広島)5弱(ほか5球団)の構図に変化がなかった。
金本(阪神前監督)に采配のキレなし
5弱の分析をしても意味はないと思うが、2位と予想した阪神が最下位にまで沈んだのは意外だった。その第一の要因は金本采配。筆者及びメディアが阪神の戦力を過大評価したこともあるが、それ以上に金本采配に疑問が多かった。
加えて2018年は夏季に猛暑が続き、野球界全体に打高投低傾向が著しかった。阪神打線は糸井、福留のベテラン頼り。とうとう彼らにも衰えが顕著になった。しかるに、若手が伸び悩んだ。要するに、ベテラン頼みで若手育成に失敗したまま、シーズンを迎えてしまったわけだ。金本采配も疑問だらけ・・・最下位は必然だった。
分厚い選手層で、読売3位を死守
ペナントレースで3位となった読売。分厚い選手層でどうにかAクラスに踏みとどまった。この球団も故障者に泣かされた。投手陣ではマシソン、カミネロ(退団)、ヤングマン、桜井、畠、西村(引退)、杉内(引退)が戦力にならなかった。打線も坂本、吉川尚、陽、長野、ゲレーロ(体調不良?)、石川らが長期間、戦列を離れた。これだけの選手が戦列を離れながら3位をキープできたのは繰り返すが、ぶ厚い選手層ゆえだ。2球団分の選手を抱えている。
岡本(読売)の成長は筆者には大サプライズ
読売の、というよりもNPB最大のサプライズは岡本の大活躍。入団一年目(2015年)はともかくとして、彼の2年目(2016年)の成績は、打率.100(3試合、10打数、1安打、0本塁打、打点0、三振2)。続く2017年は、打率.194(15試合、31打数、6安打、0本塁打、打点0、三振10)にとどまった。
ところが今シーズンにはなんと、打率.309(143試合、540打数、167安打、33本塁打、100打点、120三振)の強打者に大変身した。3年間の平均打率が1割台の選手が4年目にして、これだけ打撃成績が向上した事例については覚えがない。大変身、大サプライズ、大驚愕という表現でも足りない。アスリートとはこんなものか。
爆買い再開した読売
岡本の活躍に象徴されるように、読売は高橋(前監督)体制3年目で若手育成への方針転換の兆が見えたものの、高橋の退任、原元監督の再就任で、以前のFA制度依存体質に戻ってしまった。2018オフシーズンのFAで炭谷捕手(西武)、そして超大物の丸外野手(広島)を獲得。オリックスを自由契約になった中島内野手、MLBパドレスで20本塁打の実績を誇るビヤヌエバ(内外野手)も獲得した。
阿部が捕手復帰を表明しているから、読売が想定する野手陣のレギュラー(先発)候補と序列は以下のように予想される。
捕手=炭谷→小林→阿部(1塁)→大城(捕手)
1塁=ビヤヌエバ→阿部(捕手)→岡本(三塁)→大城(捕手)
2塁=中島→吉川尚→田中俊→山本
3塁=岡本→中島→吉川大
遊撃=坂本→吉川尚→山本
左翼=ゲレーロ→(ビヤヌエバ→亀井→重信)
中堅=丸→(ビヤヌエバ→陽→亀井→重信)
右翼=長野→(ビヤヌエバ→亀井→陽→重信)
一軍ベンチ入りが微妙なのが炭谷に押し出される大城、宇佐美。大城は打撃センスを買われて一塁の練習に取り組んでいるようだから、宇佐美よりは一軍出場機会が残されているかもしれない。中島に押し出されるのが吉川大、山本。ビヤヌエバに押し出されるのが阿部になるが、阿部も捕手復帰と代打でベンチ外というのは考えられない。
読売が補強した丸、ビヤヌエバ、炭谷、中島の4選手と2年目のゲレーロは年俸1億円を超える選手たち。8枠のうち5枠が補強選手及び外国人選手で占められる。次いで、坂本、岡本の2枠がレギュラー確約だから、空席は1。その一席も長野、亀井、陽との争いに勝たなければならない。読売の若手の出場機会は、前出のレギュラーに故障者が出た場合か、不調に陥った場合に限られる。
読売の爆買い効果は微々たるもの
読売の爆買い補強はチーム強化につながるのだろうか。もちろん答えは「NO」。2018シーズンの1点差ゲーム勝率 をみると(読売はチーム防御率リーグ1位なのにもかかわらず)、セリーグの最下位で他の5球団に比べて著しく低い。
その主因はセットアッパー、クローザーの人材不足。クローザーとして期待された澤村の防御率が4.64(49登板)、カミネロが同5.79(20)、セットアッパーとして期待された上原が3.63(36)、マシソンが2.97(34)とこちらも芳しくない。
リリーフ陣となると、池田4.07(27)、谷岡5.76(25)、田原2.56(29)、中川5.02(30)、宮國1.97(29)、吉川光4.26(22、先発登板を含む)となり、防御率1点台は宮國ただ一人。読売が強化すべきは、投手陣しかも中継ぎ、抑えであった。
しかるに、今シーズンオフ(2018/11/30)時点において、読売が投手陣強化のための補強情報は伝えられていない。来シーズン開幕前までに読売フロントが行わなければならない第一の仕事は、外国人を含めたクローザー及びセットアッパー探しだ。頭数だけでも上原、カミネロの抜けた穴を補修しなければならない。
丸のFA移籍について
FA宣言した丸(広島)が本日(11/30)、読売入団を公表した。この結果は驚くに当たらない。彼がFA宣言した時点で、その行き先が読売であろうことはだれもが予想し得た。契約金、契約年数、引退後の待遇等において、金満・読売に勝てるところはない。心情的には広島残留してほしいが、選手生命は短い。稼げるときに稼ぐべきだ。
丸は読売で活躍できるのか
丸が2019シーズン、新天地・読売で活躍できるのか。筆者は、ある程度の成績を残すだろうが、2018を下回ると予想する。
その理由は、彼の打撃フォームが変則であること。丸の打撃フォームの特徴は、バットの先端を揺らせてタイミングをとる点。このフォームはタイミングを狂わせると、長期スランプに陥る難点をもっている。極めて微妙な動きをインパクトの前に取り入れる。ボールを打つ前に一段階余分の動作をとる。そこにリスクが生じる。好調時のタイミングをひとたび失うと、一気に崩れる。崩れの要因は、①加齢による体力の衰え及び動体視力低下、②精神面の変調及び環境変化、③相手投手の研究――などによる。どれか一つというよりも、複合的要因として丸を襲う。丸が打撃フォームを崩せば当然、打率は下がるし打点も上がらなくなる。読売という人気球団のプレッシャー及び広島退団の後悔などが丸を襲い、心労が重なる。打撃不振は長期に及ぶだろう。彼の成績は2018シーズンを頂点として、以降、下り坂に向かう。
丸は読売との試合でよく打った。ところが、その読売に入団したのだから、得意球団が減ったことになる。広島(投手陣)は丸の弱点を知り尽くしているから、広島投手陣はそこをついてくる。他球団も広島の攻め方を真似るから、その結果だけでも、丸の打撃成績は落ちる。丸も広島投手陣を知り尽くしているが、読売投手陣と同程度打ち崩せるかというと、そうはいかない(と筆者は思う)。
読売・阿部の捕手再転向
これは論ずるに値しない。まず成功はない。阿部が捕手にすわれば、他球団に盗塁のチャンスが生まれる。
今シーズンの日本シリーズでソフトバンクの甲斐捕手が広島の足を封じMVPに選ばれ、「甲斐キャノン」という新語を生んだ。
甲斐が強肩の持ち主であることは間違いないが、それ以上に下半身が素晴らしい。捕球してから投球動作に至るフットワーク(わずか1歩半程度だが)と、腰を下ろした姿勢から投球動作をつくる立ち上がるスピードがすごい。その基盤となっているのが下半身の安定、強さ、速さだ。
二塁投球の正確なコントロールを支えているのは甲斐の強い体幹だ。天性の身体の強さと適正なトレーニングの結果だろう。阿部が甲斐のような捕手に復活することは、奇跡が起きない限り無理だ。