2022年10月4日火曜日

NPB、2022シーズンを総括する(セリーグ)

  


 NPB(日本プロ野球)2022シーズンペナントレースが終了した。セリーグはヤクルトが首位をほぼ独走し、横浜も安定した戦いぶりをみせ、けっきょく勝率5割前後の3球団がCS進出をめぐり混戦模様となったが、阪神が辛うじて勝ち残った。  パリーグは大混戦、最終戦でオリックスが勝ち、ソフトバンクが負けて順位をひっくり返し優勝するというまさに、ドラマチックな幕切れとなった。 
 コロナ禍、感染した選手、監督及び濃厚接触者の戦線離脱があり、連敗を余儀なくされた球団もあったけれど、おおむね全球団にコロナ禍が及んだと思われ、成績への影響はほぼ平等だったともいえる。まずはセリーグ編である。 

 

横浜の2位は大健闘 

 

〔セリーグ〕 

 順位は以下の通り。 

 1. ヤクルト2.横浜3.阪神4.読売5.広島6.中日 

 シーズン前に筆者が予想したのは、 

 1.阪神、2.ヤクルト3.読売4.広島5.中日6.横浜 

 

 筆者が最下位と予想した横浜には、その非礼を詫びなければなるまい。阪神はセリーグの中では投打のバランスがもっとも取れたチームなので、3位は納得できない。序盤の連敗が響いた。外国人選手のケガ、不振、藤波の出遅れなど、計算外が続出したとはいえ、序盤の連敗が悔やまれる。   ヤクルトの優勝を牽引したのは村上である。優勝決定後とはいえ、三冠王獲得と日本人選手最多本塁打記録を更新した活躍は称賛に値する。交流戦の圧倒的成績がリーグ優勝に貢献した。 

 それにしても、ヤクルトの先発投手陣の顔ぶれで優勝を果たしたことが信じがたい。ブルペン陣の充実が優勝のもうひとつの原動力となった。  横浜の2位は破壊力ある打線、クローザー山崎の復活、中継ぎ陣の充実(エスコバー、伊勢ら)だろう。ソトが一塁に定着して内野守備に安定感が増したことも見落とせない。二年目の三浦監督の落ち着いた采配も記憶に残る。 

 

選手層が薄かった読売 

 

 読売の4位は筆者の想定内だ。3位阪神との差は無きに等しいもので、このチームの実力はこんなもの。読売は選手層が厚いと筆者も書いてきたけれど、2022年シーズンではむしろ、その薄さが目立った。遊撃の坂本が長期離脱するとその穴を埋めるべき選手と、レギュラー坂本との力の差が大きすぎた。トレードで獲得した廣岡は二軍に埋もれたまま、ヤクルト時代より下手になっている。守備位置をたらいまわしにされ、得意の打撃を生かし切れていない。彼を坂本の控えに定め、せいぜいもう一つの守備位置として一塁にしておけば、打撃に専念できただろう。  三塁岡本が打撃不振に陥ったけれど、その代役を務める選手がいない。岡本ほどの長打力はなくても、脚力やヒットを打つ確率の高い選手で穴を埋めなければチームは勝てない。原監督は選手の特性を生かす起用ができない。   読売のレギュラー野手陣をみてみると、ベテラン坂本を除くと、前監督が育てた岡本(三)、トレードで獲得した中田(一)、外野はFA移籍の丸(中)、元MLBのポランコ(右)、メキシコ独立リーグのウォーカー(左)の5選手が主軸で、吉川(二)、大城(捕)の生え抜きが残るが、大城の捕手としての力量、とりわけインサイドワークには疑問符が残ったままだ。中田に一塁の座を奪われた増田陸、香月、そして、丸・ポランコ・ウォーカーに外野の座を奪われた松原・重信・立岡・石川、そして、故障した坂本の穴を埋めるべく前出の廣岡、中山、湯浅と並べてみると、彼らにレギュラーは務まりそうもないことがわかる。彼らに才能がないわけではない。一軍の経験がないこと、自信がないことが、力を発揮できない主因だろう。  全選手を生え抜きで賄うことは困難だけれど、読売はなんのために、二軍(三軍)、育成で大量の選手を抱えているのかがわからない。2022シーズン、下から上がってきてレギュラーを獲得した野手がいないのはどういうことなのだろうか。


故障者多い読売投手陣

 読売の野手陣に比べれば投手陣の若返りは目覚ましい。ところが、先発をみると、戸郷、菅野、メルセデスがほぼローテーションを守れたが、山崎伊、赤星、シューメーカー、井上、アンドリュース(途中退団)、戸田、堀田らは新人、新入団で、一軍で実績のある山口俊、高橋優、井納が脱落という異常な陣営となった。ブルペンはクローザーの大勢が大活躍したものの、セットアッパーの平内で勝ちゲームを落とした試合が何試合かあった。中川、大江、鍵谷が故障離脱、畠、桜井、鍬原、利根、ビエイラ、デラロサ、高木もシーズンを通して投げられなかった。高梨、今村がシーズンを投げ切ったが、今村の成績はいまひとつであった。

 

読売投手陣の再建は大事業

 

 ここで、2022シーズンの読売投手陣を素材にして、現代プロ野球の投手陣のあり方について考えてみよう。   繰り返しになるが、読売投手陣の崩壊ぶりはすさまじかった。前出の通り、山口俊・高橋優・井納・中川・大江がほぼ一軍登板なし。鍵谷・畠・桜井・利根・ビエイラ・デラロサ・高木もほぼ脱落に近かった。   今般の日本プロ野球では、週6連戦が一般的である。ゆえに勝ちが見込める先発投手は6人いれば理想的だが、なかなかそれだけ集めきれないので、最低4人で6連戦4勝2敗でよしとしたい。つまりカード(2勝1敗)勝ち越しである。その結果として勝率.667となれば優勝は間違いない。読売の先発投手陣はあと一人いればよかったのだが、その一人が出てこなかった。   現代プロ野球の役割分担は、先発が6回まで3点以内(クオリティースタート)、7回・8回(セットアッパー/和製英語。アメリカでは「setup pitcher」または「setup man」 )、9回(クローザー)の組み立てである。読売のクローザー大勢はほぼ完ぺきであった。筆者が監督ならば、7回は右の山崎伊、左の今村で固定。8回のセットアッパーに高梨・平内で固定。この4投手を補助する新戦力、既存戦力が万全なら、4位より上に行けたはず。  あたかもガラクタのような惨状に陥った読売投手陣を立て直すのは、たやすいことではなかろう。FA、外国人獲得、トレードで応急措置をするしかないが、トレードは交換選手が見当たらないので難しい。

(次回はパリーグ)