2025年11月11日火曜日

クマ被害を防ぐ


  クマが人間を襲う事件が、日本列島東日本を中心に続発している。これまでの人的被害の発生状況は、人間がクマの領域である山間部などに侵入して襲われることが一般的だったが、いまや市街地(コンビニ、スーパー、民家、病院等)にクマが出没し、そこで偶然出会った人間を無差別に襲撃するところが特徴となっている。

 原因は明らかで、地方における人口減、高齢化であり、それにともなう、耕作放棄地面積の増加や、里山といわれる集落――田畑・水辺・その周辺の二次林などが融合した地域――の荒廃が、人間とクマを隔てていた境界を市街地側に引き寄せた結果だと思われる。里山において、人間集団が活発に生活していたならば、クマはそこを境界として奥山にみずからの生活圏を定めていたはずである。 

 クマ被害が多発する秋田県を例に取ろう。 

 秋田県の人口は(2022年8月時点での推定)93万2227人、面積が 11,610 km²である。東京23区の世田谷区(人口:950,540人、 面積:58.05㎢)と比較すると、およそ200倍の広さのところに、2万人少ない人が住んでいる――それが秋田県である。 その他のデータ〔註〕をみても、秋田県の民力低下が著しい。 

〔註〕人口増減率:-1.47%(全国47位)、自然増減率:-1.03%(同47位)、社会増減率:-0.44%(同47位)、死亡率:人口1000対15.8人(同1位)、出生率:人口1000対5.2人(同47位)、高齢化率: 36.4%(同1位)、75歳以上高齢化率:19.7%(同1位)、年少人口比率:10.0%(同47位)、婚姻率:人口1000対3.1人(同47位) 

 クマが秋田諸地域の民力低下を本能的にかぎ分け、市街地への侵攻を開始したと考えて不思議はない。それまで活発に人や車が行きかい、クマには近づきにくかった市街地だったが、民力低下とりわけ高齢化によって、市街地の活力が失われ、そこがクマにとって危険の少ない脆弱な生き物(人間)が棲む地域へと変容した結果が、人間にとってのクマ被害となって表出している。 

 人口増、高齢化の早急な歯止めは不可能だ。即効性があるのはすでに行われている、自衛隊派遣である。自衛隊部隊とライフル等殺傷力のある武器を携行できる警察官、民間ハンター、自治体職員(全国から応援も必要)が部隊を編成し、県内のクマ出没地域を重点的に巡回し、クマを見たら、ライフルで即刻駆除する以外にない。そこでクマが部隊すなわち人間を恐怖の対象だと学習すれば、人間とクマの境線が山間地等に後退し、越境するクマは減少するだろう。とにかく、人海作戦で境界を山奥へと押しを戻すほかない。 

 いまのところ、残念ながら、即効性ある対策としては、人海作戦以外思いつかない。短期間だが、大規模な部隊の展開が必要となろうが。〔完〕