2025年12月13日土曜日

巨人のチーム編成が見えない



MLB,Winter Meetings

 読売ジャイアンツ(以下「巨人」)のオフシーズンが落ち着かない。大げさにいえば不穏な状況にあり、チーム編成に暗雲が立ち込めているとも言える。

(一)発端は桑田二軍監督の辞任

 
 発端は拙Blogですでに取り上げた通り、桑田二軍監督の辞任だった。桑田が辞めたのは阿部監督との指導方法の対立だったと言われている。「理論の桑田」と「根性の阿部」が対立し、阿部が桑田を追い出した、というナラティブができあがった。


(二)山瀬捕手のSNSによる球団批判


 続いて、山瀬慎之介捕手による契約更改をめぐる球団批判ともとらえられかねない情報発信があった。二軍で活躍しながら出場機会に恵まれないのは甲斐をFAで獲得したことだと暗に、球団を批判した。
 岸田の台頭、ベテランで強肩、リードに定評のある小林、強打の大城と巨人の捕手陣はそろっていたのだが、打撃に難のある小林、そしてなぜか打撃不振に陥った大城――との競争ならば山瀬にチャンスはあった。しかし、甲斐の加入で山瀬の一軍昇格は阻まれ、その甲斐が活躍したとはとても言えないままシーズンは終わった。甲斐の獲得については、投じた費用ほどの効果を生まなかった。山瀬の発信は正当だと言える。山瀬のSNSは、チーム強化の失敗の責任を問うべきだと読めるかもしれない。

(三)オコエの突然の退団


 第三弾はオコエの突然の自由契約発表だ。彼の自由契約は、阿部が秋季キャンプのテーマとして「猛練習」を掲げた時点と偶然にも重なった。阿部は、前述のとおり、「昭和」の根性論野球の継承者とされ、秋季キャンプはその再現を計画したかのように報道された。もちろん、阿部の猛練習は象徴的表現であって、取り組むべきテーマはそれなりに用意されているはずだ。「昭和の阿部」といえども、「走り込み」や「千本ノック」だけを練習に取り入れるほど愚かでないことは誰もが認めるだろう。けれども、言葉が足りない、表現力の欠如。言葉だけでチームのまとまりは得られないけれど、選手、メディア、ファンを動かす表現が阿部にはない。具体的テーマを表現しないと誤解を招くし、現にオコエの自由契約の原因を阿部の秋季キャンプの猛練習と関連づけた報道があった。この報道は憶測の域を出ないものだが、いかにもありそうな話に聞こえてしまう。

(四)チームづくりが見えないまま


 秋季キャンプの成功もしくは失敗については、来シーズン終了までまたなければならない。けれども、筆者は結果が出ないものと予想する。その理由については、実は秋季キャンプ云々ではなく、いま(2025/12/09)のところ、巨人のチームづくりの骨格が見えないからだ。

難航中の選手補強


 巨人を引退、戦力外、自由契約等により退団するであろう主な選手は、岡本、オコエ、ヘルナンデス、長野、重信、グリフィン、ケラー等であり、その一方、新人を除いて入団が決まった主な選手は、松本剛(日ハムからFA入団)ただ一人だ。補強がこれで終わるとは思えないが、この先、国内の主力級で行き先が決まっていないのは、つまり、巨人が獲得できる選手は、ソフトバンクを自由契約になった有原航平投手しかいない。その有原はMLB復帰を目指しているというから雲行きはあやしい。NPBを自由契約になった外国人選手については後述する。

現役ドラフトは不発か


 現役ドラフトが12月9日に行われたが、驚くような補強になったとは思えなかった。もちろん、昨シーズンの田中瑛のように、嬉しい誤算になる可能性を否定できないのだが。
 なお、FA入団の松本剛の人的補償として、巨人はもう一人選手を放出しなければならなくなる可能性もある。

先発投手が足りない


 2025シーズン、巨人が3位で終わった主因は、先発投手のコマがそろわなかったことだった。菅野の流出、戸郷の不振、井上、赤星、グリフィンの故障と先発5人がダメで、ローテーションを守れたのは山崎のみ。赤星はフォーム改造(肘を下げた)が裏目に出た。改造を奨めたのは阿部監督だったとも言われている。ブルペンでは高梨が勤続疲労でダウン。船迫も安定感を欠いた。中川は辛うじて合格点だが、シーズン終盤の登板過多が2026シーズンに悪い影響を及ぼす可能性は高い。

不可解な投手コーチ全員留任


 来季、巨人投手陣を再建する任務を負っているのは、一軍の杉内、内海、二軍の山口、大竹(いずれも留任)のコーチ陣だ。2025シーズンの成績からすれば、一軍・二軍の投手コーチが留任し、二軍監督の桑田が事実上解任された理由の説明ができない。つまり、留任の4コーチでは投手再建は難しい。

目ぼしい外国人選手はMLBか


 巨人残留が決まっている外国人選手はマルティネス、バルドナードの2投手とキャベッジ外野手の3選手。投手2人はいずれも先発ではない。外国人選手獲得枠はじゅうぶんすぎるほど空いている。
 NPB在籍の外国人選手については、契約交渉中なのでなんともいえないが、阪神のゲラ投手、デュプランティエ投手、ビーズリー投手、ヘルナンデス野手、ネルソン野手、ドリス投手自由契約となった。 DeNAでは バウアー投手、ケイ投手、オースチン野手の自由契約が発表されている。広島ではハーン投手が自由契約、ロッテのポランコ野手、ソト野手の自由契約が濃厚となっている。
 巨人がこのうちのどの選手と交渉しているかしていないかは不明であるが、望む選手ほどMLB入りを希望しているというから、有力選手の獲得は難しかろう。最終手段は米国MLB、AAA、メキシコリーグ等の海外球団を自由契約になった選手となろうが、ウインターミーティング真っ最中なので、現時点では確定的情報を得られない。

(五)好材料なしのまま2026シーズンを迎える予感


 以上から、いまのところ、巨人の戦力は2025シーズンと比較しても大幅にダウンしている。昨シーズンが3位だから、既存戦力の台頭およびドラフト入団の新人の活躍およびウインターミーティング後、MLB球団から声がかからずNPB行きを希望して獲得できた外国人選手の活躍という好条件がそろわない限り、リーグ優勝は難しい。
 そこで新人を除く既存戦力をポジション別に並べてみよう。(◎レギュラー候補、△レギュラー期待)

・投手
先発=◎山崎、◎戸郷、◎井上、◎森田、田中将、赤星、西舘、外国人A
ブルペン=◎中川、◎高梨、◎船迫、◎田中瑛、◎石川、◎バルドナード、◎大勢、◎マルティネス、宮原、泉
起用法未定=横川、堀田、平内、又木

・捕手
◎岸田、甲斐、小林、大城、山瀬

・一塁
△リチャード、荒巻、増田陸、外国人B

・二塁
◎吉川尚、門脇、中山

・三塁
坂本勇、石塚、(門脇、中山、リチャード)、外国人B

・ショート
◎泉口、石塚、(門脇、中山)

・外野
レフト=◎キャベッジ、松本剛、若林、岡田、浅野、萩尾、外国人C
センター=◎丸、松本剛、若林、岡田、浅野、萩尾、外国人C
ライト=△佐々木、松本剛、若林、岡田、浅野、萩尾、中山、外国人C

(六)結論――リチャードがキープレーヤー


 巨人が補強すべきは先発投手、一塁手、三塁手、外野手である。
〔投手陣〕
 外国人を除く先発候補投手としては、赤星、西舘、横川、堀田、平内、又木以外に、園田純規が注目されている。2025年、三軍で防御率0.20を記録し、二軍に昇格後は先発ローテーションに定着。イースタン・リーグで14試合に登板し、8勝0敗、防御率1.42を記録している。
〔野手陣〕
 野手については、出場機会を増やすために複数ポジションを守れるというのはもちろん大切なことで否定しないが、安定した打撃を維持し、レギュラーポジションを確保した選手が主力と呼ばれる。2025年、巨人はエラー数がNPBで最多を記録した。人工芝がホームでありながら、この結果はいただけない。筆者はこの惨状を招いた主因について、阿部監督が選手の守備(対応)能力を把握せず、安易に守備位置を変更して起用した結果だと考えている。
 喫緊の課題は、一塁手・三塁手を確定することだ。就中、阿部監督はリチャードに賭けているようだから、阿部がこの賭けに勝てば、巨人の内野は安定する。もしリチャードが期待に応えられなければ、巨人の一塁と三塁のレギュラー不在は決定的な瑕疵となって、巨人を苦しめることになるだろう。〔完〕