2012年1月16日月曜日

大学入試センターを解体せよ

大学入試センター試験において、地理歴史と公民で問題配布ミスなどのトラブルが相次いだ。事実上の学歴社会、卒業大学名格差社会である日本において、試験を運営する大学入試センターの責任は重い。

報道によると、トラブルは大きく分けて2つで、1つは試験官が地歴と公民の2冊を配布するのに時間がかかるなどしたため開始が遅れ、終了時間を繰り下げたケース。もう1つは、2冊配布する必要があるのに、地歴のみを配布、その後誤りに気づいて公民を配ったケース。少なくとも全国58会場の計4565人の受験生に影響が出たといわれている。運営側の不手際によるトラブルとしては過去最悪規模。今後の調査で影響人数がさらに拡大する可能性もあるという。

センター試験の必要性については、筆者はおおいに疑問を持っている。大学入試センターの存在「意義」は、文科省の天下り先確保ではないかとさえ思っている。が、この問題には、今回は触れない。

さて、大学入学試験で思い出されるのは、昨年、某国立大学の受験において、受験者が試験場にて、携帯電話を使用して問題の解答をウエブサイトに求めた「事件」ではないか。携帯電話を使用したカンニングが発覚したのち、大学側は偽計業務妨害の被害届を警察に提出した。そして、新聞・テレビが大騒ぎをして、未成年者である予備校生が「犯人」として警察に「逮捕」され、「事件」は「解決」をみた。

筆者は、この「事件」の大学側の対応、すなわち、カンニングを偽計業務妨害で警察に被害届を提出した大学当局の行為を、当該大学が自ら定めた「入学試験実施規程」等に反するのではないか、という疑念を抱いていたが、大学当局が規程類を公開していないので、実際のところはわからないままだ。当時、マスコミも、大学の試験実施に関する管理ミスを追及しなかったので、「事件」の真相は不明なまま。

常識的に考えて、管理・監視体制が厳重な試験会場において、受験者が長時間にわたり、携帯電話でメールを打ち続けることが発覚しないというのは考えにくい。そんなことができたのは、試験管理者・監督者が居眠りでもしていて、この受験生の異常な行動を発見できなかったからに違いない。大学当局は、警察に「事件」として届け出て、受験者を逮捕させるのではなく、大学当局自らの管理・監視の怠慢をこそ反省すべきだった。

そして、今回のセンター試験のミスの多発である。これは受験生の不正行為ではなく、センター試験管理者・運営者のミス以外のなにものでもないから、いかなる抗弁も許されない。センター試験の責任者は、引責辞任をしてもらいたい。また、文科省大臣は被害者に謝罪をし、センター試験の責任者を免職処分にすべきである。その論拠は、メール・カンニングをした受験者は警察に逮捕までされたのであるから、それに相当する責任の取り方がセンター試験の責任者に求めらるのが当然だと考えられるからである。

ミスの原因はなんだろうか。筆者の憶測・推測にすぎないが、今日多くの大学において、派遣社員によって、大学入学試験が実施されていることと無関係ではないような気がする。このことは、派遣社員の実施能力が劣ることを意味しない。今年のセンター試験が派遣社員によって実施されたかどうか確認していないが、もしそうであるならば、同センターの試験実施責任者が、派遣社員に対し、十分な訓練を行っていないことがミス発生の主因だと推測できる。派遣社員に試験実施事務を円滑に行わせるためには、事前に十分な説明及び実施訓練を施さなければならない。にもかかわらず、試験実施費用を節減したいがため、同センターが派遣会社と試験本番当日に限り派遣契約を交わしたことも考えられる。当日契約では、試験運営事務実施者(=派遣社員)が試験実施の詳細を理解できないまま、本番を迎えてしまい、ミスを犯すことになる。

派遣社員を活用することは、さまざまな状況に鑑み、それを規制することはできない。だが、センター試験の重要度を考慮するならば、より慎重かつより厳格な試験実施が求められるはずだ。同センターが試験を満足に実施できないのならば、ほかの実施機関にセンター試験実施事務を委託する方法もある。試験実施に限り、予備校等を活用することも検討に値する。