橋下大阪市長vs朝日新聞グループ(『週刊朝日」』及び『朝日新聞』。以下、「朝日」」と略記)の抗争は、「朝日」側が謝罪文を出し、週刊誌の連載を中止することを宣言して終息するかにみえた。ところが、22~23日のツイッタ―において、橋下が“「朝日」の謝罪の仕方が悪い”というような意味の発言で問題を蒸し返し、再び「朝日」攻撃に打って出た。
繰り返すが、『週刊朝日』が連載として掲載した記事内容については、これまで、橋下本人が自身の街頭演説などにおいて、「けっこう、けだらけ…」発言等として大筋で認めてきたもの。いまさら、誹謗中傷、人権等々で非難するにあたらない。それでも橋下は「朝日」に猛抗議し「朝日」に対し取材拒否宣言をした。これを受けた「朝日」側は謝罪声明を週刊誌及び新聞に掲載し、連載も中止した。
橋下がそれでも「朝日」を許そうとしなかった背景には、この間の「朝日」との一連の喧嘩が大衆の支持をそれほど受けていないことを地方遊説で実感したためではないか。TV報道によると、橋下が維新の会として行った最初の地方遊説の地・九州各所における彼の人気は、直前に訪れた小泉進次郎に遠く及ばなかったという。維新の会を支持する層は、地元大阪もしくは東京といった大都市居住の人びとで、理性的というよりも感情的に状況判断をするような層なのではないか。維新の会が掲げる「維新八策」といった政策は地方から支持される内容ではない。橋下が掲げる「小さな政府」「自助の精神」は、政府の補助金や公共事業で食いつないでいる地方においては理解されにくい。地方において後援会組織や労組をもたない維新の会が、国政で勢力拡大を図るための足場を築くのはそう簡単ではない。「地方」が維新の会のアキレス腱なのである。
「朝日」との抗争とその勝利がそれほど浸透していない現実を理解した橋下は、この問題が尻つぼみで終われば、賞味期限切れまで打つ手が何もない。橋下及び維新の会の政治生命を延命させるためには、「朝日」イビリで社会の関心を引っ張るしかない。橋下の「朝日」叩きは、彼と維新の会の断末魔のあがきとも言える。