2014年10月17日金曜日

アギーレの歴史的采配―日本ブラジルに惨敗

サッカー日本代表がシンガポールにおいてブラジル代表に0-4で惨敗した。日本の4失点は相手のエース、ネイマールにすべて奪われたもの。ネイマールをマークしてほかの選手に点を取られたのならばわからないでもないが、相手のエースに思うようにやられたとはみっともない。それにしてもお粗末な日本代表だった。北京で宿敵アルゼンチンと戦ったブラジル、一方日本はホームで格下ジャマイカと戦った。その両者がシンガポールにやってきたのだから、コンディションの面では日本に分があったはず。それでも歯が立たないのだから、日本は相当弱い。試合後の選手のコメントは、「収穫」やら「経験」やら「課題」やら。この大敗のあと、御託を並べている暇はない。闘争心をもって真剣に闘わなければ、日本はますます弱くなる。敗者のメンタリティーを醸成してはいけない。

日本サッカー界についに訪れた人材払底のサイクル

W杯ブラジル大会後の日本代表の試合ぶりを見ていて感じるのは、先のW杯で明らかになった世界との差ばかりではない。「パスサッカーからフィジカル重視」といったトレンドを論じるよりも、いま、日本人フットボーラーのなかに人材払底現象が見受けられることだ。ついに恐れていた事態がやってきた。ロシア大会に希望をつなぐ才能、資質を感じさせる選手が見当たらないのだ。

モチベーションを失ったブラジル組

第一に、ブラジル大会代表レギュラークラス(海外組=FW本田、FW香川/ブラジル戦では故障によりベンチ外、DF長友、GK川島、国内組=DF森重)がモチベーションを完全に失っていること。海外組には欧州からの移動という疲労もある。だから、ブラジル戦を休ませたのだろう。ジャマイカ戦でも短い時間の出場にとどまったFW柿谷(ブラジルでは控え)も、代表サッカーにおけるモチベーションを失っている。ブラジル大会に選ばれたことで満足したのか。そんな中、唯一闘う姿勢を貫いているのがFW岡崎だ。

学生アルバイト(武藤)に代表を奪われるJリーガーの無力

第二は、前出のいわば「過去の人」を追い抜くだけの新戦力が育っていないこと。そのことを象徴するのが「今売り出し中」のFW武藤だ。武藤は大学在学中という。Jリーグのトップクラスが学生アルバイトとは情けない。Jの選手はいったい何をしているのだ。学生アルバイトが代表に選出される現状を「プロ」が許しているとは論外。

それとも学生とは名ばかりで、勉学の方はサッカーで免除されているのか。もしそうならば、武藤が通っている大学にも問題がある。文武両道とは聞こえはいいが、大学生とプロサッカー選手の二足の草鞋をはくことは、世界のサッカー界ではまず、あり得ない。もっと言えば、この現状を異常だと思わないメディアがそもそも異常だ。大学生がアルバイトでJリーガーとしてやっていける日本のサッカー界のレベルとは・・・

たとえば、前出のブラジルのネイマールは武藤と同年齢だという。ネイマールはブラジル代表のキャプテンをはっているのだが、彼が大学生であることはおよそ考えつかない。プロフェッショナルスポーツのアスリートは年齢も学歴も関係ない。その分野でとにかく一流であることだ。だから武藤が大学生でバイトでサッカーをやっていることを非難するのではない。学生とプロサッカー選手を両立できる日本のプロサッカー界が不思議なだけなのだ。世界のサッカーリーグはそんなに甘くはないだろう。ましてやブラジル代表とバルセロナのレギュラーと、大学生を両立できるはずがない。

武藤が代表で「輝いている」現実が、日本のサッカーの最高峰リーグであるJリーグの低レベルを象徴している。だから、武藤に続く、MF柴崎、MF森岡、FW小林、DF塩谷のレベルも押して知るべし。

アギーレのここまでの功績は、日本代表が弱いことを白日の下に晒したこと

それにしてもアギーレは正直な人物のようだ。かつての代表監督ではできないような選手起用を行った。アギーレは、ブラジル戦に臨むにあたって、移動でコンディションの悪い海外組主力を思い切って外した。その結果明らかになったことは、いや、アギーレが明らかにしたことは、先述のとおりの日本代表の惨状にほかならない。アギーレは、日本のサッカーファン、いや日本代表に期待する日本国民に対して、日本代表のレベルの低さを明らかにした。日本のみなさま、日本のサッカーの実力はこの程度ですよ、過剰な期待をされては困りますよ、世界レベルとは、こんなにも開きがありますよ――というわけだ。これまでの代表監督は、サッカー協会、広告代理店(TVメディア)、スポンサーの手前、この事実を隠し続けてきた。

「岡崎中心」の日本代表をつくるしかない

では、ここまで弱体化した日本代表をどう再建したらいいのか。これはかなり難しい課題とはいえ、アジア杯は目前に迫り、そこで結果を出さなければ先に進まない。

奇策、奇手はない。現状の駒のなかで最強チームをつくるしかない。まず考えられるのは、前出のとおり、フィジカル的に強く、好調を維持し、しかも高いモチベーションをも維持しているFW岡崎を攻撃の中心、というよりも、チームの中心とするしかない。彼の闘争心、諦めない姿勢、運動量の多さをもって、チームを引っ張るしかない。岡崎の性格にキャプテンシーが備わっているか否かについては、会ったことがないのでわからないが、いま日本代表に必要なものすべてもっているのが岡崎であることだけは間違いない。

アジア相手ならば高さのあるハーフナーも武器になるはず

戦術的には、岡崎をワントップとするかサイドにおくかが第一の選択。筆者の見方では、アギーレが4-3-3を貫くと仮定するならば、ワントップに長身FWハーフナーをおいて、高さを武器としたい。長身選手が少ないアジア相手ならば、ハーフナーの高さは機能する。アギーレはハーフナーを招集しながら使わなかった。このことは疑問として残る。

本田はイタリアで結果を出しているのでそのまま右。岡崎は左となる。アンカーは「守備の職人」と言われる細貝で鉄板。

問題は細貝の前の列。どうもここが人材難のようだ。柴崎、森岡、田中、小林には情熱が感じられない。彼らに頑張ってもらうか、新たな戦力を探すしかないのだが、決め手となる選手はいない。強いて挙げれば、米本拓司(FC東京)か。

香川がこのポジションで真価を発揮するとも思えないので、香川は4-2-3-1に変化するまで控えになる。

SBは左が長友、右が内田。内田が代表引退ならば酒井高で仕方がない。酒井高のクロスの精度は大いに問題だが。

日本最大の弱点CBは、カテゴリーにこだわらず若手に切り替えろ

SBは森重、鈴木、水本らをそろそろ見切る必要がある。年功序列を排して、A代表に西野貴治(G大阪)、岩波拓也(神戸)、植田直通(鹿島)らを早く合流させたほうがいい。U21、U23、五輪といったカテゴリーにこだわりすぎるのは、日本サッカーの悪弊である。ブラジル戦の経験を彼らにこそ積ませたかった。

ブラジル戦で明らかになった日本代表の惨状。ここから立ち直るには、ディスパレートな精神力をもった選手を代表にできるだけ多く呼ぶ以外にない。