2017年5月26日金曜日

NPB、序盤戦を総括する(セ・リーグ)


NPB(日本プロ野球)が開幕からおよそ2カ月が経過した。野球評論家諸氏によると、30試合経過でおおむねリーグ戦の動向が把握できるという。順位表等を見てみよう。

【セ・リーグ順位表】
1阪神(43試合26勝17敗0引分、勝率.605)打率.246防御率2.83
2広島(46、26-19、1引分.578).276、3.72
3読売(44、23-21、0引分.523).240、3.10
4DeNA(45、20-23、2引分.465).249、4.05
5ヤクルト(44、19-25、0引分.432).243、3.36
6中日(46、17-26、3引分.395).246、3.65

※2017年05月25日13:00現在

好調阪神の主因は投手力充実

セ・リーグは阪神が堂々の首位。筆者の予想は最下位だったから、これは「サプライズ」。つまり、筆者の見方では、この先首位をキープできるとは思えない。ここまでの阪神快走の要因は、NPB業界でいわれているような、若手の台頭によるものではない。攻撃陣では移籍の糸井、福留、鳥谷といったベテラン勢の活躍があり、守りの面では、セットアッパー、クローザーの両外国人投手の好調、秋山の成長、メッセンジャーの安定といった投手力の充実にあった。防御率2点台(両リーグ唯一)が示すように、いまの阪神は投手力のチーム。

この先、どうなるのか。攻撃面では、鳥谷が昨日死球で負傷、糸井、福留は絶不調。ベテラン打撃陣は危機的状況にある。一方の自慢の若手だが、強権的金本体制で委縮が目立ち、ミスが多い。致命的なのが内野の守備の弱さ。投手陣に疲労が蓄積した時点で、首位陥落する。

読売は構造的危機から脱せず

FA選手爆買い等の大型補強を敢行した読売は3位。筆者の予想が4位だったから、こんなもの。読売の弱点は捕手と二塁だと指摘してきたが、そのとおりの展開だ。WBCで「成長」したはずの小林の低打率は相変わらず。二塁は中井が先発だが、一軍レギュラーの器ではない。三塁マギー獲得で村田の出番がなくなったが、外国人枠の関係でクルーズも出番が無くなり、マギーのおかげで野手2選手が試合に出られないというわけ。マギー獲得は彼の阪神行きを阻止するのが目的だから、それでいいのかもしれないが、自ら仕掛けた罠につかまったようなもの。かりに阪神の新外国人キャンベル(三塁)が打ちだしたら、読売は大損となろう。

投手陣については、人材豊富のはずだったが、故障者があまりに多い。6連戦、先発6本柱のうちマイコラス、田口、菅野の勝ちは計算できる。ところが、内海、大竹、宮国(吉川光)が不安定で、4勝2敗の形がつくれない。勝率5割すれすれで、安定してしまった感がある。先発四本柱確立には、FA移籍の山口俊の復帰しかない。

それだけではない。ブルペン・スタッフ(山口鉄、戸根、西村、田原、澤村、高木勇、今村)も開幕直後から故障調整中で一軍出場を果たしていない。移籍の森福も不調で二軍調整。しかし、先日、森福、田原が一軍に復帰し、賭博事件関与の高木京もイースタンで復帰したから、現在の不調の中継ぎ陣(桜井、谷岡、篠原、池田…)が総入れ替えとなる日も近い。

読売の弱点は若手が伸びないこと。特に若手打撃陣はまるでだめ。岡本、和田、辻、重信らに共通する弱点は速球を打てないこと。速球はどんな打者でも打ちにくいものだが、彼らはそれに反応する力が極端に鈍い。今年、日ハムから移籍してきた石川慎吾がレギュラーの座をキープしているのは、彼が速球に反応することができて、しかも、スイングスピードが速いこと。弱点は内角だが、それでも岡本ら読売プロパーよりは期待感が持てる。石川慎吾を媒介にして読売プロパーをみると、基礎的身体能力(筋力、反応力…)が石川より劣っていることがよくわかる。このことはドラフト時点で指名選手の見極めが出来ていないことの証左。読売がこの点を改善するのは長期を要する。

昨年の覇者・広島も不安材料山積

昨年覇者、現在2位の広島も故障者だらけ。先発の柱ジョンソン、クローザー中崎が出場できず、野村もここにきて故障。投の主軸三枚を欠き、へーゲンズ、一岡の調子があがらないのだからまぎれもない危機なのだが、首位に肉迫しているのは、リーグトップの打撃陣のおかげ。とはいえ、早晩、故障者は復帰し戦列が整う。いまの戦力で読売に1敗しかしていなのだから、広島と読売の自力の差は明確だ。

DeNA、中日にもチャンスあり

現在下位3チームのなかで上昇可能性の高いのは、筆者が2位と予想したDeNAと同じく3位と予想した中日の2チーム。DeNAは先発若手投手陣が経験を活かしてシーズン中に成長する可能性が高く、WBC後遺症で不調だった筒香が早晩復調する。中日も投手陣が再整備されるだろうから、読売より上にいける可能性は残されている。