2018年12月2日日曜日

NPB、今年最後のお楽しみ(読売の人的補償選手は?)

炭谷(西武)、丸(広島)のFAによる読売への移籍が決まった。そのことによって人的補償で読売から出ていく選手がだれになるのか、2018-シーズンオフ、最後のお楽しみといったところ。NPBファンは、読売のプロテクトから外れる選手の予想に興味津々である。人的補償選手を予想るす前に、FA制度により発生する補償の概要を確認しておく。

(一)FA宣言した選手のランク付け

FA宣言した選手が他球団に移籍した場合、移籍された球団はその見返り(補償)を移籍先に求めることができる。補償は、移籍した選手の元球団の年俸による〈格付け〉に基づく。〈格付け〉は、日本人選手の旧年俸順に上位3位までを〈ランクA〉、4位から10位までを〈ランクB〉、11位以下を〈ランクC〉とする。〈ランクA〉と〈ランクB〉がFA移籍した場合に限り補償が発生する。

炭谷(西武)は〈ランクB〉、丸(広島)は〈ランクA〉であるから、西武、広島とも読売に対し補償を求めることができる。補償は、〔金銭補償〕+〔人的補償〕である。

(二)補償の内容

〔金銭補償〕
移籍先球団は〈ランクA〉の選手獲得の場合は旧年俸の50%(2度目以降のFAでは25%)を、ランクBの選手獲得の場合は旧年俸の40%(2度目以降のFAでは20%)を前球団へ支払わなければならない。
〔人的補償〕
 移籍先球団は前球団が指名した上記の獲得制限外の選手1名を与えなければならない。ただし前球団が求めない場合は、〈ランクA〉の選手獲得の場合は旧年俸の30%(2度目以降のFAでは15%)、〈ランクB〉の選手獲得の場合は上記の獲得制限外の選手1名または旧年俸の20%(2度目以降のFAでは10%)を前球団へ支払わなければならない。
人的補償を求めない場合(金銭補償に加えて、〈ランクA〉の選手獲得の場合は旧年俸の30%(2度目以降のFAでは15%)、ランクBの選手獲得の場合は旧年俸の20%(2度目以降のFAでは10%)を得ることができる。

(三)丸(広島)の場合の実際の補償内容

丸(推定年俸2.1億円)のFA移籍により、広島は読売から金銭補償として、2.1×0.5=1.05億円が入る。人的補償をしない場合、1.05+2.1×0.3(=0.63)=1.68億円が入る。広島は6300万円か人的補償を選択することになるわけだが、人的補償のほうが魅力的であるから、前出の金銭補償に加えて人的補償を求める。

(四)人的補償と獲得制限選手(プロテクト)

獲得制限選手名簿(28名)がいわゆるプロテクトであり、プロテクトから外れた選手が人的補償対象選手である。前球団はその中からチーム強化に必要とする選手を移籍先球団に申し出ることとなる。また、前球団が人的補償できないのは、プロテクトした28名の選手のほか、FA権取得により外国人枠の適用外になった選手を含む外国人選手、直近のドラフトで獲得した新人選手である。

(五)西武と広島の人的補償の優先順位

複数名のFA宣言選手と契約した場合には、それぞれの球団に異なる獲得可能選手リストを提示できる。万一、人的補償選手が複数の球団で重複した場合には、移籍先球団と同一連盟内の球団が優先される。同一連盟内であれば同年度の勝率が低い球団が優先される。読売は炭谷(西武)と丸(西武)の2選手をFAで獲得したから、西武と広島がともに人的補償を要求した場合、双方に向けて2種類のプロテクト名簿を提出する。西武と広島が同一選手の獲得を申し出た場合は、広島に優先権がある。

(六)補償に係る日程

補償に関する日程は、まずFA選手と移籍先球団との選手契約締結がコミッショナーより公示された日が起点となり、2週間以内にまず移籍先球団が上記の獲得制限選手を除いた選手名簿を提示する。この後起点より40日以内に全ての補償を完了しなければならないが、金銭補償に限り前球団の同意があれば40日を延長することができる。人的補償として選ばれた選手が移籍を拒否した場合、その選手は資格停止選手となり処分が解除されるまで試合をすることができなくなる。補償は金銭補償のみだった場合と同じになる。

(七)プロテクトから外れる読売の選手は?

読売がプロテクトする28選手及び外れる選手を予想すると――
  • 投手(13)=澤村、菅野、畠、山口俊、今村、田口、鍬原、宮國、内海、野上、吉川光、高田、中川森福、大竹、桜井、谷岡、池田、戸根、高木京、大江)
  • 捕手(2)=小林、大城(宇佐美、岸田、田中貴)
  • 内野(6)=吉川尚、坂本・阿部・岡本・山本、田中俊(北村、若林、湯浅、増田、吉川大)
  • 外野(7)=陽、長野、亀井、重信、石川、松原、和田恋(立岡、村上)
  • 28選手がプロテクト選手。赤太字がプロテクト外=人的補償対象選手
2019-シーズンの読売の新戦力(ドラフト入団以外)は、炭谷(捕手)、丸(外野手)、ビヤヌエバ(一塁・三塁・外野)、中島(内野手)がすでに決定しており、さらに外国人の抑え投手の獲得も確実視されている。また、昨シーズン実績を残しながら故障で離脱したヤングマンが先発に復帰する。金子(オリックス自由契約)、MLBマリナーズを退団した岩隈の入団も視野に入れているという。昨シーズン後半、先発から中継ぎに配置換えした、野上、吉川光のブルペンが固定化しそうなので、中継ぎ投手が余剰となる。

プロテクトか人的補償対象かのボーダーラインにいる選手は、先発投手陣では昨シーズン1勝の大竹及び桜井。リリーフでは谷岡、池田、利根。大竹が人的補償として広島が指名すると、古巣復帰となる。捕手は阿部が捕手復帰を希望しているというから、宇佐美あたりか。野手では、ユーティリティープレイヤーの中島の入団で、同タイプの吉川大ではないか。

(八)西武、広島が人的補償で獲得する選手

西武、広島は野手が豊富。補償の優先順位は投手→捕手→野手 の順になろう。プロテクトから外した読売の選手のうち、広島、西武が欲しい選手はいるか。筆者の見立てでは、広島が投手で、西武が捕手。ずばり、広島が左のワンポイントの利根、西武が炭谷の代替として宇佐美を人的補償として要求すると思う。