2022年2月18日金曜日

うんざり五輪

 


プーチン大統領はシドニー五輪選手団の壮行会で「スポーツでの勝利は100の政治スローガンよりも国民を団結させる」と述べているという。いまどき国民を団結させてやることといえば、戦争ぐらいしか思いつかない。 

専制政治家の五輪利用

スポーツは勝ち負け、すなわち白黒がはっきりしている。あいまいで混沌とした現実の社会現象よりは結果が頭に入りやすい。専制的政治家がポピュリズムによって支持を得るように。すなわち、スポーツが強い国はよい国、そして世界のなかで優越的な地位にいる国、あなたはその一員なんだよ、そして僕がその強い国のリーダーなんだよ、という展開にもっていく。自国の選手が五輪でメダルを取るということは、自国が強い国であり、運動音痴の人間でも、メダルをとった選手と一体化する。専制的政治家にとって、スポーツは都合の良いツールなのだ。

このことに最初に気づいたのは、20世紀、ナチスドイツだったのではないか。ナチスドイツは五輪を首都ベルリンで開催し、同時に、当時の先端的メディアであった映像を駆使して、自国のスポーツ選手の肉体美を強者、優越者、支配者として国民に提示した。アーリア民族という幻想の共同体をつくりあげる一助とした。そればかりではない。五輪が人種差別を促進した。五輪開催にあわせて、ベルリン(周辺部を含む)にいたロマは強制収容所に入れられた。五輪の直後からユダヤ人狩りが激しさを増した。なお、2020東京大会においても、都心のホームレスが公園等から排除された。

祝賀型資本主義と五輪ーーメディア産業が五輪開催を推進

五輪を契機とした祝賀型資本主義によって、経済の底上げ効果が期待されるようになった。競技場に代表されるハコモノ建設、道路整備、観光客目当てのホテル建設、競技場周辺における都市計画の規制緩和などなど、経済界が五輪景気に期待する。 

併せてメディア業界、とりわけテレビ業界は五輪中継及びその関連番組の視聴率が高いこと、及び、広告収入増の観点から、広告代理業者と結託して、五輪開催推進勢力となった。その結果、専制的国家とマスメディアは五輪推進において共同戦線を張るに至った。

アメリカの場合、全国3大ネットワークのうち、NBCしか五輪放映権をもっていないから、CBS、ABCのライブ中継はない。ところが日本の場合、五輪開催中、地上波の過半が特別編成で競技中継番組を流す。地上波、BSあわせて数局が五輪のライブ中継をし、加えて、ニュース番組、情報番組、特別番組、スポーツニュース番組などで五輪関連番組が放映される。五輪に興味がない人間はテレビを消す時間が長くなる。 ナショナリズムを高揚させたい政治家、そして、祝賀型資本主義で恩恵を受ける建設業者、不動産業者、メディア業者等のための五輪にはもう、うんざりだ。