2009年10月27日火曜日

魔術師マーリン

筆者は、テレビといえば、スポーツ、映画、ニュース・天気予報しか見ないのだが、最近、毎週見ようと思っている番組ができた。久々の「お気に入り」である。

その「お気に入り」は、『魔術師マーリン』(毎週月曜日午後8時、NHK衛星第2)。マーリンは、アーサー王伝説に登場する魔法使い。彼はアーサー王の危機を得意の魔術で、幾度となく救う。

さて、この連続テレビドラマは、キャメロット(アーサー王の城)を舞台に、ベンドラゴン一族(ウーサー王、王女モルガーナ、アーサー王子)、宮廷医師でマーリンの魔術の師匠ガイアス、マーリンに心を寄せるモルガーナの侍女ガウェイン、そして、アーサーに仕えるマーリンを登場人物とする、ホームドラマ仕立てになっている。

マーリンはしばしば、このドラマの中でもアーサー王(子)を助けるし、また、反対にアーサーに助けられることになっている。キャメロットを脅かすのは女魔術師で、彼女は黒魔術を駆使して、しばしば、キャメロットを危機に陥れる。マーリンとアーサーは、協力して、黒魔術を退ける。

しかし、いくつかあるアーサー王の物語(伝説)は、ホームドラマというわけにはいかない。不倫あり悲恋あり悲劇あり裏切りあり、の波乱万丈である。

さて、このテレビドラマでは、ウーサー王の統治する領土では「魔術」が禁止されている。だから、魔術を使った危機に対しても、ウーサー王は、ガイアスに対して、「科学的」にそれを解決させようと命ずるのである。それゆえ、ガイアスもマーリンも魔術を封印するのだが、結局は魔術には魔術で対抗することになる。筆者には、この筋書きがいかにも無理があるように思えるし、中世社会のおどろおどしさが薄れて、きわめて陳腐にうつる。

そればかりではない。また、しばしば、ウーサー王は息子アーサーに対して、統治とは、王道とは、国家(領地)とは・・・を説こうとする場面が出てくるのであるが、そうした場面は国会議員の「世襲問題」の馬鹿馬鹿しさが論じられるいまの日本において、はなはだ胡散臭い。この番組のマーリンは、近代化された魔術師マーリンである。だから、いくら、魔術がつくりだした怪物が出てきても、恐ろしくない。

などなど、いろいろと理屈でけちはつけられるのだが、ブリテン(英国)の地では、アーサー王伝説がいまなお伝えられ、生き続けていることが確認できるという意味で、筆者にとっては貴重なテレビドラマである。