注目の東京都知事選は現職の石原慎太郎の4選勝利という結果となった。各候補者別の獲得票数は、石原261.5万、東国原英夫169万、渡辺美樹101.3万、小池晃62.3万と、落選3者の合計が300万票を超えていて、石原都政に対して「ノー」を出した有権者のほうが多かった。
「ファシスト」「スターリニスト」「叩上げ実業家」「元お笑いタレント」の中から誰を選べというのだ、ということになるが、仮に、石原の後継者といわれる松沢成文と渡辺美樹と小池晃の三者の戦いだったならば、接戦で渡辺が勝利した可能性もあった。そういう意味で、東国原が立候補し、石原が復帰し、松沢が退場した結果できあがった今回の候補者の組合せは、「反石原」票を分散化させる効果を招き、石原を勝利に導いた。計算どおり、東国原が石原を救ったことになる。
投票日前、筆者の周囲に限定しての話だが、都知事選に関する話題では、“石原は嫌だ”という人が圧倒的に多く、じゃ、誰に入れるのかとなると、“小池か東国原かで迷っている”という声が圧倒的に多かった。前出のとおり、「反石原」の票が300万超あったことから、投票日前に筆者がつかんでいた「反石原」の感触は外れてはいなかった。
今回の都知事選に係る投票結果の分析については、専門家から出されると思うが、筆者の直感では、石原の獲得票は、創価学会(公明党)等の宗教関係組織票、高齢者保守層をベースとした固定票にとどまり、無党派層を掘り起こして得た票は、そう多くはなかったものと推測する。
石原を支持しない有権者は、共産党員=小池支持者を含めて、三分化してしまったことになる。“石原は嫌だ”という声がいくら強くなっても、その思いがまとまらず、組織的投票行動に結ぶつかない限り、4年後も、その4年後も、「石原なき石原都政」が続くことになる。
組織に属さない、“自由で、頭がよく、趣味のよい”都会的東京都民は、自分の好みにあった候補者を選ぶことができる。候補者はよりどりみどりというわけだ。いかにも、民主的な外形だが、その結果は、「反石原」的政治理念が組織化されず分散化し、その間隙を縫うようにして、「石原的勢力」の代表者が都知事に当選するという筋書きを書き変えることができない。「石原的勢力」が都政を掌握し続け、本来多数派であるはずの「反石原」東京都民の暮らしは、一向によくなる気配がない。豊かな都財政にもかかわらず、弱者、福祉が切り捨てられ続けるのだ。
民主党という政党は、都政をどう考えているのだろうか。民主党は「反石原」なのか「石原支持」なのか。民主党は、東京都をどうしたいのか。反石原を統合できる組織が有効に機能しない限り、東京都は「石原的勢力」が支配し続ける大都市のままだ。