今回の自民党大勝総選挙結果については、サッカーのオウンゴールに譬えられる場合が多い。民主党の自滅、第三極の準備不足等が自力のある自民党に有利に働いたという譬えだ。しかし、サッカーでいうならば、相手チームの選手がことごとくレッドカードで退場していなくなり、自民党がやすやすとゴールを量産して大勝した試合展開に最も近いものがある。
その一方、一票の格差の違憲状態が改善されずに総選挙が敢行されたことは、この選挙自体に正当性が認められないわけであり、無効ではないのか。つまり、正式なルールに基づかない試合なのだから、オウンゴールもレッドカードもない。そのことが第一。
とはいえ、総選挙は行われ、野田民主は大敗し、自民党が再登場した。国民がいやがる増税を「決断」することが大政治家の力量であると盲信した野田。彼がだれにどのように洗脳されたかはわからないが愚かだ。彼は自分のことを正直の上にバカがつく者だと自己規定したが、正直がつかないバカそのもの。マニフェストを破った大ウソは証明済みなのだから、野田が正直だと思う国民は皆無だ。
自民党大勝により国民が警戒すべきは、改憲の流れだ。安倍自民党は参院選までは「改憲」を表に出さず、インフレ誘導策によってミニバブルを引き起こす。その結果、株価、地価等が高騰し、それをマスメディアが経済の回復だと誤報すれば、国民はこれで何度、騙されたことになるのだろうか。経済の実態において実需に向かわない余剰マネーがインフレ誘導策で行き場を失い、資産投機に走りだしたのにすぎないのに。
そんな「アベノミックス(ミニバブル誘発政策)」を国民が支持し、参院選で自民党が単独過半数を得れば、改憲は具体的な日程にのぼる。維新、みんな、民主の一部(旧自民及び旧日本新党の残党)も当然、改憲になびいているから、改憲は国会内において現実の流れとなる。日本の改憲、すなわち国防軍改名、集団的自衛権の発動の現実化によって、日本の軍事力膨張を目の当たりにすれば、それを危惧する東アジア各国の緊張は一気に高まる。日中間の軍事衝突もあり得る。それでも有権者は、投票行動を規定する価値観において、「経済回復」を最優先順位とするのだろうか。
自民党はすべての原発の再稼働及び新設をも辞さないかまえだ。核燃料のゴミの再処理及び貯蔵問題の具体策もない。もちろん安全基準も国際水準以下のまま。福島、被災地は見捨てられたままとなる。
さて、今回の総選挙における最大の変移は、選挙運動におけるインターネット活用の是非が現実化したことではないか。マスメディアは、その合法化によって選挙広告掲載料、選挙CM放映料等の減収が予想されるところから、この件については熱心には報じない。
しかし、立候補予定者にとっては、媒体料金、印刷料金、郵送費用等が大幅に節減できるところから、ネット活用の合法化は強い願いとなっている。有権者にとっても、選挙運動中の立候補者の約束が簡易に比較閲覧でき、かつ保存可能なところから、当選後の変貌さえもチェック可能だ。 ネットユーザーが選挙に関心を示せば、棄権者が減少するかもしれない。つまり、有権者の投票意識が変わり、投票行動を変える可能性もある。そのことは当然、政党支持率に変化を生じさせるだろう。そればかりではない。選挙運動をネットに限定した立候補者が現れる可能性もあり、ネット活用が日本の選挙そのものを変える。ネット解禁こそ急務でなくて、なんであろうか。