2012年12月21日金曜日

有権者は民主党を許さなかった

◎世論調査どおりの結果に終わった総選挙

総選挙は自民党の圧勝で終わった。事前に各報道機関等が行った「獲得議席予想」等と称する調査結果どおりだった。2000人程度を母数とした調査が国家規模の選挙の結果を十分予想し得るのである。統計学とはこういうものなのだな、と改めて感心した次第。“世論調査ほどいい加減なものはない”という一部の識者の断言は根拠がないことが証明された。

事前の選挙調査結果を大雑把にまとめれば、以下のとおりだった――▽およそ4割が「支持政党なし、もしくは投票先未定」、▽支持政党の1位は自民党だが、他党(民主、第三極・・・) と大差つかず、▽第三極といわれた新党はドングリの背比べ、▽卒原発=反原発を前面に出した日本未来の党は支持率が伸びず・・・であった。

◎「支持政党なし」「未定」は棄権 に

実際の総選挙の結果もそのとおりとなった。まず、棄権が約4割。これは事前調査における「支持政党なし、未定」にそっくり該当する。比例区の議席獲得結果は、事前調査の支持率の比率を概ね反映した結果に。つまり、自民党の獲得議席は57(民主党30)にとどまった。ところが、小選挙区では自民党237で民主党30を天文学的に上回った。選挙区自民党の固定的支持層が自民党に投票し、その数がその他の政党を上回った結果である。

棄権の4割は、民主党には絶対に投票しないかわりに、ほかの政党にも入れる気がしない、よって投票に行かないと決めった層ではなかったか。

◎有権者は「民主党憎し」の思いを晴らす

今回の総選挙は、有権者が自民党を支持したというよりも、民主党憎し、民主党だけは許せない、民主党に裏切られた恨みを晴らす・・・という有権者の意思表示以外のなにものでもなかった。「民主党憎し」の投票行動としては、消極的意志表示として「棄権」であり、積極的なそれとしては第三極等への投票となったが、後者はすべて死に票で終わった。

投票は政策を見極めてといわれるが、小党乱立の今回のような状況では、政策が入り組んで提示されたため、有権者にとって選択が難しい。たとえば、自民党の経済優先については是とするが、原発推進は困るとか、維新は官僚体制打破のスローガンは是だが、憲法改正は困る…といった具合だ。

このような状況では、支持政党をもたない無党派層は、最終的な価値判断として、「民主党憎し」のみが拠り所なり、民主党は固定的支持母体である労組組織を獲得したにとどまり惨敗した。

◎小鳩は泥船を脱した

総選挙の敗北を予期した民主党創設者・鳩山由紀夫元首相及び小沢一郎元幹事長(以下、「小鳩」と略記)は、沈みゆく野田民主党の下を離れ、大敗北の惨状からいち早く逃亡した。当然である。

自民党から政権奪取に成功した民主党であったが、その立役者であった小鳩はともにマスコミの報道テロで党内主流から追放をうけ、民主党は旧日本新党(細川派=松下政経塾派)にのっとられた形となっていた。このたびの、野田の「自爆テロ解散」の敢行も細川の示唆であるとの噂もあった。

小沢は日本未来の党へと緊急避難し、鳩山は政界引退をした。二人の政治家としての前途ははなはだ暗いが、少なくとも、惨敗の汚名を着ることだけは免れた。賢明な選択だと思う。

◎大勝・安倍自民は暫定政権

大勝した自民党だが、勝負は来年夏の参院選だという説が流れていて、筆者もその通りだと思う。今回の選挙は、前出のとおり、有権者が「民主党消滅」に向けて鉄槌を下したもの。自民党を積極支持したわけではない。有権者はこの先、およそ半年間の自民党の政権運営や政治行動を見届けたうえで答えを出す。その間、民主党はおそらく解体しており、乱立した小党の整理も進む。

しかし、いずれかの第三極が与党・自民党の対抗馬となって成長するには時間が足りない。参院選で自民党独走を阻止するためには、投票日に、およそ4割を占める棄権=無党派層が非自民のいずれかに投票する以外に方法がない。それが<自民党>vs<○○党>という二大政党制の構造を確立する唯一の方法である。