2016年2月5日金曜日

テレビ、「清原覚せい剤報道」のくだらなさ

清原逮捕は「甘利隠し」?

元プロ野球選手、清原和博が覚せい剤取締法違反の疑いで現行犯逮捕された。清原が覚せい剤をやっているという週刊誌報道があってから2年余り。この報道に特に驚きはなかった。というよりも、なんでいまごろ?という疑義すら生じた。「甘利隠し」「TPP隠し」「株価下落隠し」…政権にとって都合の悪い事象は、芸能ネタや民間企業の不正報道で民意をそらすのが現政権の常套手段。今回もその一環ではないかと。確かにその疑いは拭えない。株価下落で安倍政権が声高に叫ぶアベノミックスも風前の灯火、マイナス金利導入も効果なし。そこで民意をそらすため、手持ちのカードであるとっておきの一枚を当局にきらせたと。そのような推測はじゅうぶんすぎるくらい説得力をもっている。もしかしたらそうかもしれない。

「清原逮捕」はそれでも大事件

それはそれとして、それでも、清原逮捕は「大事件」だ。甲子園の大スター、日本プロ野球における輝かしい実績、「涙のドラフト事件」という物語性、独特の存在感、濃いキャラクター等々、プロ野球を引退したいまでも、彼は逮捕前まで、テレビというエンタメ業界のスターであり続けていた。その実績を遺産として、彼はエンタメ業界でじゅうぶん活躍できた。プロ野球業界に復帰すれば、解説者、コーチ、監督、リポーター・・・なんでもできた(はず)。凡人からすれば、なんとももったいない、あれだけの才能があり、いい仕事を成し遂げながら、晩節をこうまで汚さなければならなかったのか――理解に苦しむばかりだ。

手持ちの映像でお茶を濁すテレビ

であるがゆえに、テレビの清原覚せい剤報道は情けない。テレビ局にしてみれば、清原の映像はいくらでもある。清原を知るプロ野球業界人(元選手、監督、コーチ…)はいくらでもいる。だから、本件のテレビ報道は、清原の現役時代の映像(ホームランを打った場面等、涙のドラフト…)や、彼の同僚、友人(桑田真澄、佐々木主浩…)、OB(王貞治…)のコメントばかり。しかも、それがどの局でも使われていて、まるで代わり映えしない。テレビ局とはまったく情けない存在というほかない。

逮捕前まで一緒に仕事をしていたテレビ局の人間は清原をどう見ていたのか?

前出のとおり、元プロ野球かつ現エンタメ業界の大スターである清原和博が、なぜ、覚せい剤におぼれたのか、そこが最大のポイントだ。清原を“知る人”にコメントをもらうのならば、“かつての”ではなく“いま”の清原を知る人でなければ意味がない。その人とは、清原と現に親交があり、彼がどのような生活をしていたかを知る人ということだ。

彼が最近まで飲みに行っていた飲食・接客業者、ゴルフ仲間、飲み仲間、仕事仲間…なんでもいい。彼の周辺の者がどのように清原を見ていたのかが明らかになれば、清原がなぜ覚せい剤なのか――という疑問の一端を知ることができる。知名度が抜群で豊富な資金力、多数の人材を擁したテレビ局ならば、それくらいの取材は朝飯前のはずだ。

仕事仲間といえば、当然、テレビ局の人間も入る。逮捕前まで清原と仕事をしていたテレビ局の人間は、清原の動向をどう見ていたのか。

エンタメ業界における危険薬物使用者一覧

芸能業界、プロスポーツ業界における危険薬物等に係る犯罪は少ないとはいえない。ウエブサイトの『NEVERまとめ』によると、覚せい剤関連の主な逮捕者は、高部あい(2015)、ASKA(14)、酒井法子(09)、槇原敬之(1999)、清水健太郎(83、86、94、04、10)、小向美奈子(09)、岩城滉一(97)、中村耕一元・J-WALK(97、10)、赤坂晃光・GENJI(07、09)、大森隆志元・サザンオールスターズ(06)、加勢大周(08)、西川隆宏・元DREAMS COME TRUE(02)、尾崎豊(87)、江夏豊(93)、ミッキー吉野・ゴダイゴ(92)、田代まさし(00、01、04、10)、野村貴仁・元巨人ほか(06)。

同じく大麻では、内田裕也(77)、萩原健一(83)、桑名正博(77、81)、長淵剛(95)、美川憲一(77、84)、錦野旦(77)、カルーセル真紀(01)、井上陽水(77)、研ナオコ(77)、といった具合だ。
※(  )内は逮捕された年

大麻から覚せい剤へ

概ね1970~80年代が「大麻の時代」、そして90年代から2000年代以降は「覚せい剤の時代」といえる。覚せい剤において、再犯率が高くなることもわかる。大麻に比べて依存性が高く危険な覚せい剤の使用が増加しているということは、いかにも不気味。この傾向はおそらく、社会全体の傾向に敷衍できるのではないか。

当然のことながら、清原逮捕事件からテレビ局が取材、報道すべき展開は、エンタメ業界のスターたちが危険薬物に手を染める要因を明らかにすることだ。その入手先、人脈、売人との接触場所などを取材しなければいけない。テレビ局ほどの情報収集力ならば、逮捕から数時間も要することなくその現場に到達できるだろう。しかも、エンタメ業のテレビ局は、前出の逮捕された芸能人、元プロスポーツ選手と同じ業界人。いわば同業仲間同士なのだから、その生態に詳しいはずだ。

テレビは清原、清原と騒ぐだけ

なぜテレビは、芸能人等の麻薬関連の事件において、浅い報道しかしないのだろうか。だれもが疑問に思う部分に手を付けないのだろうか。テレビが覚せい剤を止められとはいわない。そんな期待はしない。けれど、犯罪を報道するのならば、社会性をもたなければいけない。騒ぐだけなら、バ○でもできる。テレビ局に知性はないのか。