2018年3月28日水曜日

日本代表に失望

ベルギー遠征中の日本代表は27日、リエージュでウクライナと親善試合を行い1―2で敗れた。日本代表が海外組を招集して行った試合は5戦未勝利。一方のウクライナ代表は、W欧州地区予選I組で、アイスランド、クロアチアに次ぐ3位で敗退したチーム。W杯出場を決めている日本だが、予選敗退のウクライナに力負け。実力においては、得点差以上の開きがあった。欧州とアジアのサッカーの力の差を再認識させられた。

いいところなしの本田圭佑

右サイドで先発出場した本田圭佑はまったくいいところがなかった。「得意」のキープ力、「ため」が期待されたが、ウクライナの選手に寄せられてボールを奪われるシーンが散見された。本田にボールをわたすと、ウクライナ選手が複数で奪いにかかり、失う場面が多かった。アジアの試合では相手は自陣深くまで引いて守る場合が多いが、世界標準の相手ならば、そんな戦い方はしない。日本が本田にボールを集める作戦だと認識した段階で、奪いにかかる。“ボールを本田に集めて、本田からのパスで攻撃の形をつくり、本田が決める”なんて試合展開は「アジアの幻想」であって、欧州中堅国との親善試合でも、実現はほぼ困難なのだ。「ポゼッション」「ため」がモダンサッカーで無意味とまではいわないが、それを基軸・基本にする戦い方では立ち行かない。

ところでその本田だが、彼はロシア・リーグでプレーした経験(2010-2013)がある。ロシア開催のW杯に本田の経験が生かせるのだろうか。まったく初めての国で試合をする選手よりも、そこに定住しリーグ戦を3年経験した選手の方にアドバンテージがあるのは当然だが、5年近く前の話。筆者が代表監督ならば、若手にチャンスを与える。

この期に及んで「勝利」を欲しがるハリルに落胆

ハリルホジッチ監督は速い縦の攻撃を日本代表に徹底させようとしたが、「ハリルの4年」は残念ながら、失敗に終わりそうな気配が濃厚だ。ロシアで日本が予選リーグを勝ち抜ける可能性がゼロだとはいわないが、かなり困難な仕事だろう。

ハリルホジッチ監督の采配の難点は、6人交代制の親善試合において、後半、相手のスタミナが切れるころを見計らって「高速ドリブラー」といわれるスピードが持ち味の選手を起用して勝利を得ようとするところ。3人交代枠の本番では使えない。代表選手の「テスト期間」はとっくに終わっているはず。勝利が欲しい気持ちは理解できるが、この時期ならば、W杯本番を想定して3人交代枠の試合をしてもよかった。

「テスト」と称して、この期に及んで勝利を欲しがるハリルホジッチが嘆かわしい。本来ならば、信頼できる攻撃的エースが育っていなければならない時期。その選手を中心に先制点を狙う試合ができていなければおかしい。アルゼンチン代表でメッシが後半限定で出場なんてことはあり得ない。ハリルホジッチはジョークで日本にはCロナウド、メッシ、イブラヒモヴィッチ・・・がいないというが、欧州で得点を上げている中島翔哉、乾貴士らを代表でもっと早くから使い続けていたら、彼らが得点源として代表に定着した可能性もあった。

中島は新星となる?

ベルギー遠征の2試合(1敗1引分)がW杯前の日本代表の到達点だとは思いたくない。唯一の希望は中島だろう。彼こそ、日本代表の窮状を救うべく新星となる可能性がある。本番H組、日本代表(FIFAランキング55位)が、コロンビア(同13位)、セネガル(同27位)、ポーランド(同6位)を相手に2位以内に滑り込むのには、中島の活躍がなければ困難ではないか。

2018年3月26日月曜日

2018年3月25日日曜日

21世紀のサッカーはアフリカの時代か

サッカー国際親善試合、日本―マリ共和国は1-1のドローで終わった。マリは日本がW杯ロシア大会を見据えた相手。予選リーグで日本と同組のアフリカ勢、セネガルを仮想したものだ。一方のマリはW杯アフリカ予選で敗退したため、この試合には4年後を想定して、若い選手構成で臨んだという。

モハメド・マガッスバ・マリ代表監督
マリ共和国のサッカー?

筆者はマリも含めて、アフリカのサッカー事情について何も知らない。試合実況中のアナウンサー氏や、試合前のメディアから提供された情報及び常識的知識から得たものとしては、サハラ以北と以南ではサッカーの質が全く違うことを前提として、以南に属するアフリカ勢の特徴は以下のとおりだろうか。①身体能力が高いこと、②組織よりも個中心、③経済状況を反映して、代表チームに対する協会等のバックアップ力が弱いこと、④有力選手は国内から欧州に移籍していること、⑤マリは前出のセネガルの隣国同士でサッカーの質が近似していること。もっとも④については、アフリカ勢に限ったことではないが。

この試合に臨んだマリ代表の特徴は、①主力が外れて若手中心だったこと、②若手といっても、試合出場メンバーはことごとく欧州各国のリーグに所属し(ビッグクラブではないが)ていて、レギュラークラスであること――だという。なお、この親善試合、客席は閑散としていたが、欧州各国リーグのスカウトが集合していたという情報が実況アナウンサー氏から提供された。若手のマリ代表選手のモチベーションは日本選手よりも高かったかもしれない。

日本代表に見るべきものなし

試合結果は1-1のドロー。PKでマリに先制された日本だったが、試合終了間際(ロスタイム)に同点に追いついた。6人交代枠(W杯は3人まで)の親善試合では結果を云々しても意味がない。内容を云々するならば前半45分を重視するべきだろう。その前半45分の序盤、日本にも得点を予感させる場面もあったが至らなかった。序盤以降、失点からロスタイムの中島の得点まで、日本はまったく好機をつくれなかった。結果はドローだが、W杯出場を決めている日本のほうがはるかに格下に見えた。

日本代表選手に覇気なし

ベルギー遠征ということでアウエーというわけではないが、応援はない。欧州リーグ所属選手以外は時差がある。慣れないピッチに気候等々、力を出しにくいかもしれないが、この試合でいいパフォーマンスを見せれば、W杯メンバーに近づける。だが、頑張ったのは日本人選手ではなく、欧州クラブのスカウトの目を意識したマリの選手のほうだった。スカウトたちも中島(途中出場)以外の日本人選手は気に留めなかったのではないか。中島は、得点を上げたからではなく、ドリブルで局面を開ける力を示したように思う。同じく途中出場の本田はいいところがなかった。メキシコリーグでの活躍が嘘のようだ。スピードがない、他選手との連携もとれていない、キープ力もない・・・筆者は拙Blogにおいて、本田は「過去の人」といい続けてきたが、それが現実になりつつあることを実感できた。

この遠征における次の試合は27日のウクライナ戦。W杯グループリーグの相手、ポーランドを仮想したものだという。ウクライナもロシアW杯予選で敗退している。ウクライナの選手にマリと同様のモチベーションが働けば、日本は苦戦を免れない。

異次元のサッカー

さて、最後にマリ代表の印象を書いておこう。日本代表が苦しんだのは、マリの選手のボールに触れるスピードだった。日本のメディアは、アフリカ勢というと即“身体能力の強さ”と反射的に形容する。しかし、サッカー(プレー)における身体性はボールを媒介したもの。さらに“相手選手”という条件の下でのものだ。

速く走れる、ジャンプ力がある、競り合いに強い、ボールを強く蹴ることができる…のだとしても、相手に妨害される状況で、ボールをコントロールできなければサッカーではない。相手選手と対峙しながら動くボールに触るスピード及びタイミング――それがサッカーにおける身体の強さということになる。日本がPKを与えたシーンが象徴的だった。DFの宇賀神がペナルティーエリア内で蹴ったのは、ボールではなく相手選手の脚だった。宇賀神はボールを蹴ったつもりだったのだろうが、マリの選手の脚が既にボールにタッチしていたのだ。

マリの選手からは相手との競り合いにも非凡さが認められた。体格はアフリカ勢の中ではそれほど大型ではない。しかし、日本選手から簡単にボールを奪うし、日本のディフェンスをかんたんにかわす。チャージに対してもボールを奪われない。ハリルホジッチ監督が力説する「デュアル(決闘)」というと、ぶつかり合いに勝つことのようなイメージがあるが、サッカーにおいてはマリの選手のような「身のこなし」が重要だと感じさせた。

このようなマリの選手の身体性はどこから来るのか。民族、人種に還元してしまえばそれまでだ。筆者の推測では、幼少期からのストリートサッカーから始まって、相手からボールを奪うこと、相手にボールを奪われないこと…がマリの選手の原点にあるためではないか。それを生活過程といえばそれまでだが、日本人選手が身に着けられないなにかがあるように思う。

変わるアフリカのサッカー

日本人がもっているアフリカのサッカー(サハラ以南)の印象は、日韓W杯(2002)のときに来日したカメルーンが決定づけた。手足が長く高い身長の選手が、自由奔放で力強いサッカーを繰り広げる。組織よりも個人、チームワークとはほど遠い。報酬で揉めるのは当たり前、代表監督はすぐ解任されるし、協会のガバナンスもない・・・

あれから15年余りが経過した今日、サハラ以南のサッカーは様変わりした。有力選手が欧州に出て組織、規律の重要さを体得し、戦略・戦術も洗練化された。サッカー協会のガバナンスも強くなり、若手を国際大会に出場させる経済力もついてきた。日本がW杯グループリーグで勝点をあげるならアフリカ勢から、というセオリーも成立しなくなった。

モロッコ、アルジェリア、チュニジア、エジプトと、W杯常連国が集まる北アフリカ勢、そしてマリを含めて、ナイジェリア、カメルーン、コートジボワール、ガーナと強国が集まる西アフリカ勢、そして豊かな経済を背景にW杯を開催した南部アフリカの南アフリカ共和国、中部アフリカの雄、コンゴ民主共和国も忘れてはならない。21世紀のサッカーはアフリカ勢が主導権を握る。

2018年3月16日金曜日

2018、NPB(日本プロ野球)パリーグ順位予想

パリーグの球団を大雑把にランク付けすると、Aランクがソフトバンクと楽天、Bランクがなくて、Cランクに西武、オリックス、日本ハム、千葉ロッテの順となる。昨年2位だった西武は主力2投手の移籍によりCランクに格下げしたが、菊池雄星という絶対的エースが存在することから、Cランクの中では最上位を占める。西武については後述する。

順位は、1.ソフトバンク、2.楽天、3.西武、4.オリックス、5.日本ハム、6.ロッテ、と予想する。

西武、オリックス、日ハムは戦力ダウン、ロッテは戦力不足

2018シーズンにおけるパリーグ各球団の戦力補強はセリーグに比べて、きわめて静かであった。2017ドラフト会議では日本ハムが高校野球界のスーパースター清宮幸太郎を引き当てて賑わいを見せたが、実際にはレギュラークラスがFA等で、セリーグ・MLBに移籍してしまって、リーグとしてはかなりな戦力ダウンである。

その代表球団が日本ハム。なんといっても「二刀流」、大谷翔平の抜けた穴が大きすぎて修復不能。前出の清宮はキャンプ・オープン戦でいいところがなく、加えて13日、腹腔内の一部に炎症が見られる限局性腹膜炎のため、都内の病院に入院。症状等は不明だが、オープン戦をチェックしたところ、彼の打撃技術はプロの投手のスライダーの球筋が見極められない段階。腹膜炎が癒えて練習を再開したとしても、一軍でプレーをするには相当の時間を要する。今シーズンは無理かもしれない。では既存戦力の底上げはどうなのかな、ということになるが、目立った素材は見当たらない。

話題性とは別に最も戦力流出が著しかったのは西武。FAで先発投手の野上亮磨が読売に、セットアッパーの牧田和久がMLB(パドレス)に移籍してしまった。野上は昨シーズン11勝10敗、防御率3.63、牧田は28ホールド、防御率2.30の成績を上げた。西武が既存投手陣の底上げ及び新加入選手で2投手の穴を埋められるとは思えない。

オリックスは平野佳寿が、アリゾナ・ダイヤモンドバックスに移籍した。平野は昨年29セーブ、2014年には40セーブを上げている。この穴も大きい。

新監督を迎えたロッテについては、これといった補強はなく、新人及び既存戦力の底上げでチーム強化を図るつもりなのだろうが、今シーズン、ブレイクしそうな人材が見つからない。

ソフトバンクと楽天で首位争い

Aランクのソフトバンクと楽天については、両チームとも切札的存在の投手が2枚揃っているのが強み。前者には千賀滉大、東浜巨が、後者には則本昂大、岸孝之である。とはいえ、彼らに続く投手を比較すると、ソフトバンクのほうが人材豊富。とりわけクローザーの差(ソフトバンクのデニス・サファテが54セーブ、楽天の松井裕樹は33セーブ)が大きい。。

ソフトバンクの弱点は捕手

ソフトバンクの選手層の厚さは球界一だが、今年に限れば捕手が手薄。レギュラー捕手の髙谷裕亮が故障でオープン戦を欠場。開幕に間に合うのか不明の状態だ。昨年レギュラーになった高谷だが、年齢は36才と若くない。フルシーズンをレギュラーで通した経験がないだけに、故障明けでどれだけやれるのか不安が残る。高谷不在の間は甲斐拓也がマスクをかぶるのだろうが、ベンチ登録残り2選手に新人の九鬼隆平を入れざるを得ないかもしれない。まさに捕手に関しては非常事態だ。

そんなこんなで、首位争いはソフトバンクと楽天とで接戦となると思われるが、選手層の厚さでソフトバンクが逃げ切る。3位は昨年から大幅戦力減となったとはいえ、投の要、菊池を擁し、打撃の強い西武。4位以下はロッテの最下位は固いが、オリックス、日本ハムの4位争いは、両者に大きな力の差はないものの、外国人の差でオリックスが上にいく。

2018年3月14日水曜日

2018、NPB(日本プロ野球)セリーグ順位予想

去就が注目されていた野球界のビッグネーム3人、イチロー(マーリンズ→マリナーズ)、上原浩治(カブス→読売)、村田修一(読売→栃木ゴールデンブレーブス)の移籍先が決まり、NPB各球団の戦力再編が一段落した。この先、サプライズが絶対にないとはいえないが、各球団とも現状の戦力で開幕を迎えると思われる。そこで、順位予想をセリーグからしてみたい。

1位は広島、読売は3位

今年の順位は、1.広島、2.阪神、3.読売、4.DeNA、5.中日、6.ヤクルト、と予想する。
(※昨年の3位DeNAが4位に落ちて、読売が3位にいれかわっただけ。)
各球団の戦力分析は以下のとおり。

(広島=昨年1位)
昨年、リーグ戦優勝したものの、CSで敗退し日本一奪回を逃した広島。例年どおりFA補強はなし。この球団は、ドラフト及びアカデミーで獲得した新人を育成しつつ、補いきれない部分について外国人選手を手当てするという方策を続けている。広島の戦力は、〔レギュラー〕+〔控え選手の底上げ〕+〔新外国人〕で計ればいい。

レギュラー陣は野手、投手とも概ね体力・経験において伸び盛りの選手が占めていて、昨年以上の成績が期待される。唯一の弱点は捕手で、正捕手の石原慶幸が今年39才に達することから、曾澤翼、白濱裕太、磯村嘉孝との併用になるが、白濱、磯村には不安が残る。甲子園のスター、中村奨成が一軍でプレーするにはもっと時間を要する。投手陣についても野手同様、昨年に比べて力を落とすような要素は見つけられない。ずばり、広島が優勝すると筆者は予想する。

(阪神)
昨年2位と阪神は健闘した。その要因はまちがいなく、投手陣にあった。先発陣はベテランと若手がうまく融合し、セットアッパー、クローザーが安定した成績を残した。今年も若手に逸材が揃い、昨年よりも投手選手層は厚みを増した。藤波晋太郎が伸び悩み状態から脱却できるのか注目を集めているが、藤波が10勝を稼ぐようならば、阪神は広島に対抗できる。

阪神の弱点は第一に捕手。練習試合、オープン戦をチェックしたかぎり、梅野隆太郎、坂本誠志郎に進歩が見られない。打撃の良さを買われて原口文仁が捕手に復帰したようだが、このポジションはそう簡単にはいかない。今年捕手に復帰させるくらいなら、昨年から捕手の実戦経験を積ませるべきだった。金本監督の見通しの悪さ、判断ミスである。

第二の問題点は外野陣。糸井嘉男(36才)、福留孝介(40才)の両ベテランと控え選手との差が大きすぎる。メディアは、金本監督の積極的若手起用を称賛するが、筆者は彼らの実力が話題性ほど伸びているとは思っていない。糸井、福留のどちらかが故障したとき、大幅な攻撃力ダウンは免れない。豊富な投手陣を背景として、守備、走塁等のミスを減らし、接戦で勝てるような緻密な采配がなされるようならば、広島とペナント争いする可能性はある。

(読売)
昨年DeNAに競り負けてCS進出を逃した読売だが、今年も派手な補強を敢行した。投手陣ではマイルズ・マイコラスを放出して、前MLBの上原浩治、FAで前西武の野上亮磨、さらに、テイラー・ヤングマン(前ブルワーズ)を獲得。野手は村田修一を放出して、昨年中日で本塁打王に輝いたアレックス・ゲレーロを獲得した。相変わらずの金満補強である。だが、この補強が理にかなっているのかというとそうでもない。そのことは後述する。

(DeNA)
昨年、読売を接戦で制しCSに3位で進出。CSでは2位阪神、1位広島を撃破して日本シリーズに勝ち上がったDeNA。戦力的にみれば、広島、阪神、読売よりかなり見劣りするところでのこの成績は、立派というほかない。しかし、この調子が今年も続くのかというと、大いに疑問符がつく。今年はBクラスもあり得る。

中日松坂は一軍では無理

(中日・ヤクルト)
ゲレーロを読売にさらわれた中日は、攻撃面でかなりのダメージを受けた。新外国人は期待できない。平田良介の復帰だけが好材料。投手陣では、松坂大輔の加入が話題だが、練習試合、オープン戦を見た限り、一軍では使えない。球速は140㌔を超えたようだが、軸足に体重が乗らず、リリースが早くてボールが指にかからない「手投げ」状態。そのため抜け球が多い。外角を狙って内側に入るいわゆる逆ダマは長打されやすい。肘・肩の故障云々というよりも、松坂の下半身が衰えていて、フォームに粘りがきかないのだろう。大事な場面での登板はないと思われる。

ヤクルトはMLBから青木宣親が復帰。さらに川端慎吾、畠山和洋、雄平といった、「優勝メンバー」の復帰と明るい情報が出ている。昨年WBCで調子を崩した山田哲人も順調に仕上がっている。問題は投手陣で、いまのところ明るい材料に乏しい。昨シーズンの45勝96敗2分け(勝率.319)を上回るだろうが、Aクラス入りは望めない。

全体的に見たセリーグの傾向としては、Aランクが広島、阪神、Bランクが読売、DeNA、Cランクが中日、ヤクルトとなる。この等級は昨年と変化はないのだが、BランクとCランクの力は昨年より接近していて、3位以下が混戦となる。また、Aランクの広島と阪神も昨年ほど開かないと思われる。なお、昨人シーズンは、首位広島と2位阪神とのゲーム差は10、最下位ヤクルトと広島とは44ゲーム差と大差がついた。(いわゆる広島の「独走」だった。)

読売の「補強」を分析する

(一)元MLB上原の読売入団が刺激に?

今年も補強は超一流の読売。投手陣は昨年以上の戦力アップとなった。なかでも上原の加入は大きい。彼は「巨人」という価値に見切りをつけ、MLBに挑戦した純粋アスリート。つまり、「巨人」に甘んじない挑戦者の姿勢を貫いた。この気概をもった元読売選手は上原と松井秀喜しかいない。

上原・松井の「巨人相対化」の精神性が重要。「読売絶対化」精神の持ち主の代表的存在が、エース・菅野智之――彼はドラフト破りまでして読売に入団したが、その先(MLB)に挑戦する気概はない。彼は「巨人」が頂点であり、そこまでの選手にすぎない。読売のすべての選手は「菅野型」であり、「巨人」に入団したことで、終着駅に達してしまう。だから若手が伸びない。

その一方、古くは野茂英雄、それに続くイチローを筆頭に、MLBで実績を残しているダルビッシュ有、田中将大らの「巨人」以外に所属した超一流選手たちは、「巨人」以上の名声と富を目指してMLBに挑んだ。今年は大谷翔平が挑もうとしている。

上原・松井は「巨人」に入団しながら、そこにとどまらず、さらなる上を目指した。現役で上原が読売に入団したことで、いま「巨人」で安眠中の若手に活を入れられれば、読売の若手選手は向上する余地が十二分にある。「巨人安住型」の菅野はチームリーダーにならない。

(二)投手陣だけなら読売は球界一

さはさりながら、澤村拓一、山口俊、高木京介の復帰、中川皓太の台頭もあり、投手陣には明るい見通しが立つ。菅野―田口麗斗―野上―山口俊-中川―吉川光夫(故障で出遅れの畠世周、ベテランの大竹寛、内海哲也。外国人枠があるが、場合によってはヤングマン)を含めた先発陣はおそらく日本球界ナンバーワン。

しかも、抑えにカミネロと澤村、セットアッパーにスコット・マシソンと上原のダブルキャスティング。この4人のうち3人が9、8、7に登板するとなると、ほぼ鉄壁に近い。さらにブルペンには、宮國椋丞、今村信貴、山口鉄也、森福允彦、西村健太郎、高木、田原誠次となれば、読売の投手陣はそうとう強力である。

(三)今年も捕手・二塁が読売の弱点

さて、読売の補強の非合理性は、捕手と内野陣の補強がかなわなかったこと。この課題については昨年も指摘しておいたし、引き続きの弱点とも換言できる。打撃面から見れば、村田を放出してゲレーロを取ったことは、一見バランスしているようにみえるが、村田を放出したため、昨年成功したケーシー・マギーの二塁という奇策がつかえなくなった。

読売の内野陣は、一塁、三塁を阿部慎之助、マギー、岡本和真、中井大介でまわすつもりだろう。レギュラーは三塁・マギー、一塁・阿部。そして遊撃は不動の坂本勇人。だが、阿部、マギーはベテランの域に達しており、全試合出場はもちろん無理。そこで岡本に期待したものの、キャンプ、オープン戦でまったく向上した姿が認められない。打撃フォームは左足が早く開きすぎる悪癖が克服できていない。彼がヒットにできるゾーンは真ん中・外角の高めのみ。しかも半速球。投手のボールを怖がっている可能性を否定できない。

(四)読売期待の吉川尚輝はセンスなし、捕手小林は進歩なし

二塁については、首脳陣は吉川尚輝に期待しているようだが、この若手はセンスがない。一見すると足が速く俊敏そうだが、守備が悪く、走塁ミスも多い。打撃については、読売の若手すべてにいえることだが、吉川もストレートに対する反応が鈍いし、引っ張る打撃ができない。オープン戦で起用されている山本泰寛、田中俊太も吉川と同様ミスが多く、経験不足を差し引いても、一軍レギュラーの器ではない。

外野は、左翼・ゲレーロ、中堅・陽岱鋼、右翼・長野久義で申し分ないように見えるが、3選手とも故障が多く、常時出場は無理。控えに亀井善行、立岡宗一郎、石川慎吾とくるのだろうが、立岡はオープン戦で調子が上がらず、亀井、石川がいまのところ(3月13日現在)不出場。期待の重信慎之介は、足は速いが打撃は一軍レベルではない。

レギュラー捕手の小林誠司の打撃はまったく進歩していない。控えには宇佐見真吾、河野元貴、大城卓三のうち2選手がベンチ入りするのだろうが、河野はスローイングが悪すぎる。というわけで、投手陣が強力な読売が昨年ほどの連敗はあり得ないわけで、今年は順位を一つ上げて3位だろう。