去就が注目されていた野球界のビッグネーム3人、イチロー(マーリンズ→マリナーズ)、上原浩治(カブス→読売)、村田修一(読売→栃木ゴールデンブレーブス)の移籍先が決まり、NPB各球団の戦力再編が一段落した。この先、サプライズが絶対にないとはいえないが、各球団とも現状の戦力で開幕を迎えると思われる。そこで、順位予想をセリーグからしてみたい。
1位は広島、読売は3位
今年の順位は、1.広島、2.阪神、3.読売、4.DeNA、5.中日、6.ヤクルト、と予想する。
(※昨年の3位DeNAが4位に落ちて、読売が3位にいれかわっただけ。)
各球団の戦力分析は以下のとおり。
(広島=昨年1位)
昨年、リーグ戦優勝したものの、CSで敗退し日本一奪回を逃した広島。例年どおりFA補強はなし。この球団は、ドラフト及びアカデミーで獲得した新人を育成しつつ、補いきれない部分について外国人選手を手当てするという方策を続けている。広島の戦力は、〔レギュラー〕+〔控え選手の底上げ〕+〔新外国人〕で計ればいい。
レギュラー陣は野手、投手とも概ね体力・経験において伸び盛りの選手が占めていて、昨年以上の成績が期待される。唯一の弱点は捕手で、正捕手の石原慶幸が今年39才に達することから、曾澤翼、白濱裕太、磯村嘉孝との併用になるが、白濱、磯村には不安が残る。甲子園のスター、中村奨成が一軍でプレーするにはもっと時間を要する。投手陣についても野手同様、昨年に比べて力を落とすような要素は見つけられない。ずばり、広島が優勝すると筆者は予想する。
(阪神)
昨年2位と阪神は健闘した。その要因はまちがいなく、投手陣にあった。先発陣はベテランと若手がうまく融合し、セットアッパー、クローザーが安定した成績を残した。今年も若手に逸材が揃い、昨年よりも投手選手層は厚みを増した。藤波晋太郎が伸び悩み状態から脱却できるのか注目を集めているが、藤波が10勝を稼ぐようならば、阪神は広島に対抗できる。
阪神の弱点は第一に捕手。練習試合、オープン戦をチェックしたかぎり、梅野隆太郎、坂本誠志郎に進歩が見られない。打撃の良さを買われて原口文仁が捕手に復帰したようだが、このポジションはそう簡単にはいかない。今年捕手に復帰させるくらいなら、昨年から捕手の実戦経験を積ませるべきだった。金本監督の見通しの悪さ、判断ミスである。
第二の問題点は外野陣。糸井嘉男(36才)、福留孝介(40才)の両ベテランと控え選手との差が大きすぎる。メディアは、金本監督の積極的若手起用を称賛するが、筆者は彼らの実力が話題性ほど伸びているとは思っていない。糸井、福留のどちらかが故障したとき、大幅な攻撃力ダウンは免れない。豊富な投手陣を背景として、守備、走塁等のミスを減らし、接戦で勝てるような緻密な采配がなされるようならば、広島とペナント争いする可能性はある。
(読売)
昨年DeNAに競り負けてCS進出を逃した読売だが、今年も派手な補強を敢行した。投手陣ではマイルズ・マイコラスを放出して、前MLBの上原浩治、FAで前西武の野上亮磨、さらに、テイラー・ヤングマン(前ブルワーズ)を獲得。野手は村田修一を放出して、昨年中日で本塁打王に輝いたアレックス・ゲレーロを獲得した。相変わらずの金満補強である。だが、この補強が理にかなっているのかというとそうでもない。そのことは後述する。
(DeNA)
昨年、読売を接戦で制しCSに3位で進出。CSでは2位阪神、1位広島を撃破して日本シリーズに勝ち上がったDeNA。戦力的にみれば、広島、阪神、読売よりかなり見劣りするところでのこの成績は、立派というほかない。しかし、この調子が今年も続くのかというと、大いに疑問符がつく。今年はBクラスもあり得る。
中日松坂は一軍では無理
(中日・ヤクルト)
ゲレーロを読売にさらわれた中日は、攻撃面でかなりのダメージを受けた。新外国人は期待できない。平田良介の復帰だけが好材料。投手陣では、松坂大輔の加入が話題だが、練習試合、オープン戦を見た限り、一軍では使えない。球速は140㌔を超えたようだが、軸足に体重が乗らず、リリースが早くてボールが指にかからない「手投げ」状態。そのため抜け球が多い。外角を狙って内側に入るいわゆる逆ダマは長打されやすい。肘・肩の故障云々というよりも、松坂の下半身が衰えていて、フォームに粘りがきかないのだろう。大事な場面での登板はないと思われる。
ヤクルトはMLBから青木宣親が復帰。さらに川端慎吾、畠山和洋、雄平といった、「優勝メンバー」の復帰と明るい情報が出ている。昨年WBCで調子を崩した山田哲人も順調に仕上がっている。問題は投手陣で、いまのところ明るい材料に乏しい。昨シーズンの45勝96敗2分け(勝率.319)を上回るだろうが、Aクラス入りは望めない。
全体的に見たセリーグの傾向としては、Aランクが広島、阪神、Bランクが読売、DeNA、Cランクが中日、ヤクルトとなる。この等級は昨年と変化はないのだが、BランクとCランクの力は昨年より接近していて、3位以下が混戦となる。また、Aランクの広島と阪神も昨年ほど開かないと思われる。なお、昨人シーズンは、首位広島と2位阪神とのゲーム差は10、最下位ヤクルトと広島とは44ゲーム差と大差がついた。(いわゆる広島の「独走」だった。)
読売の「補強」を分析する
(一)元MLB上原の読売入団が刺激に?
今年も補強は超一流の読売。投手陣は昨年以上の戦力アップとなった。なかでも上原の加入は大きい。彼は「巨人」という価値に見切りをつけ、MLBに挑戦した純粋アスリート。つまり、「巨人」に甘んじない挑戦者の姿勢を貫いた。この気概をもった元読売選手は上原と松井秀喜しかいない。
上原・松井の「巨人相対化」の精神性が重要。「読売絶対化」精神の持ち主の代表的存在が、エース・菅野智之――彼はドラフト破りまでして読売に入団したが、その先(MLB)に挑戦する気概はない。彼は「巨人」が頂点であり、そこまでの選手にすぎない。読売のすべての選手は「菅野型」であり、「巨人」に入団したことで、終着駅に達してしまう。だから若手が伸びない。
その一方、古くは野茂英雄、それに続くイチローを筆頭に、MLBで実績を残しているダルビッシュ有、田中将大らの「巨人」以外に所属した超一流選手たちは、「巨人」以上の名声と富を目指してMLBに挑んだ。今年は大谷翔平が挑もうとしている。
上原・松井は「巨人」に入団しながら、そこにとどまらず、さらなる上を目指した。現役で上原が読売に入団したことで、いま「巨人」で安眠中の若手に活を入れられれば、読売の若手選手は向上する余地が十二分にある。「巨人安住型」の菅野はチームリーダーにならない。
(二)投手陣だけなら読売は球界一
さはさりながら、澤村拓一、山口俊、高木京介の復帰、中川皓太の台頭もあり、投手陣には明るい見通しが立つ。菅野―田口麗斗―野上―山口俊-中川―吉川光夫(故障で出遅れの畠世周、ベテランの大竹寛、内海哲也。外国人枠があるが、場合によってはヤングマン)を含めた先発陣はおそらく日本球界ナンバーワン。
しかも、抑えにカミネロと澤村、セットアッパーにスコット・マシソンと上原のダブルキャスティング。この4人のうち3人が9、8、7に登板するとなると、ほぼ鉄壁に近い。さらにブルペンには、宮國椋丞、今村信貴、山口鉄也、森福允彦、西村健太郎、高木、田原誠次となれば、読売の投手陣はそうとう強力である。
(三)今年も捕手・二塁が読売の弱点
さて、読売の補強の非合理性は、捕手と内野陣の補強がかなわなかったこと。この課題については昨年も指摘しておいたし、引き続きの弱点とも換言できる。打撃面から見れば、村田を放出してゲレーロを取ったことは、一見バランスしているようにみえるが、村田を放出したため、昨年成功したケーシー・マギーの二塁という奇策がつかえなくなった。
読売の内野陣は、一塁、三塁を阿部慎之助、マギー、岡本和真、中井大介でまわすつもりだろう。レギュラーは三塁・マギー、一塁・阿部。そして遊撃は不動の坂本勇人。だが、阿部、マギーはベテランの域に達しており、全試合出場はもちろん無理。そこで岡本に期待したものの、キャンプ、オープン戦でまったく向上した姿が認められない。打撃フォームは左足が早く開きすぎる悪癖が克服できていない。彼がヒットにできるゾーンは真ん中・外角の高めのみ。しかも半速球。投手のボールを怖がっている可能性を否定できない。
(四)読売期待の吉川尚輝はセンスなし、捕手小林は進歩なし
二塁については、首脳陣は吉川尚輝に期待しているようだが、この若手はセンスがない。一見すると足が速く俊敏そうだが、守備が悪く、走塁ミスも多い。打撃については、読売の若手すべてにいえることだが、吉川もストレートに対する反応が鈍いし、引っ張る打撃ができない。オープン戦で起用されている山本泰寛、田中俊太も吉川と同様ミスが多く、経験不足を差し引いても、一軍レギュラーの器ではない。
外野は、左翼・ゲレーロ、中堅・陽岱鋼、右翼・長野久義で申し分ないように見えるが、3選手とも故障が多く、常時出場は無理。控えに亀井善行、立岡宗一郎、石川慎吾とくるのだろうが、立岡はオープン戦で調子が上がらず、亀井、石川がいまのところ(3月13日現在)不出場。期待の重信慎之介は、足は速いが打撃は一軍レベルではない。
レギュラー捕手の小林誠司の打撃はまったく進歩していない。控えには宇佐見真吾、河野元貴、大城卓三のうち2選手がベンチ入りするのだろうが、河野はスローイングが悪すぎる。というわけで、投手陣が強力な読売が昨年ほどの連敗はあり得ないわけで、今年は順位を一つ上げて3位だろう。