2021年12月3日金曜日

消えたDH論争 日本シリーズ覇者はヤクルト


 2021NPB(日本プロ野球)日本シリーズはヤクルトが4勝2敗でオリックスを撃破し、日本一に輝いた。昨年、一昨年の日本シリーズは読売巨人がソフトバンクに2年連続で1勝もできずに敗退したことに比べ、今年の6試合はともに接戦で、中身の濃い試合ばかりだった。シリーズの詳細はメディア等で報じられた後なのでここでは書かない。注目すべきは、昨年議論されたDH論争が影を潜めたことだ。9人制のセ・リーグの覇者ヤクルトがDH制を採用するオリックスに勝ったのだから、昨年のDH論争の虚しさが確認されたようなものだ。

昨年、DH論争が沸き上がったのは、読売巨人が2年連続でソフトバンクに負たからだ。そしてその責任追及から逃れるため、敗軍の将・原があたかもDH制度がないから自軍が負けたかのようにメディアを誘導したからだ。こんな簡単な偽りのロジックに乗っかったスポーツメディアのあほさ加減についてはここでは書かない。筆者はMLBのア・リーグとナ・リーグのワールドシリーズの勝敗データを挙げて拙Blogで反論したのだが、メディアでは原の誘導に乗せられて、まじめにセ・リーグでもDH制採用をと声高に叫んでいたことを覚えている。

では、なぜ、読売巨人がソフトバンクに2年連続0勝4敗で撃破されたのか――その答えは簡単で、当時のソフトバンクが読売巨人より断然強かったからだ。ソフトバンクの強さの秘密はDH制度ではなく、優秀な選手がそれぞれ、実力の頂点に差し掛かる時期だったからだ。千賀、和田、竹田、モイネロ、森、石川、甲斐、松田、周東、今宮、柳田、中村、グラシアル、デスパイネ、牧原、・・・2021シーズンではソフトバンクの選手のうち何人かが故障し、同じく衰退期にさしかかり、Bクラスに沈んだ。そうそう連覇はできない。昭和の時代の読売巨人の9連覇はドラフトなしで、しかも他球団が球団経営に熱心でない時代だったから可能だった。それだけの話。

セ・リーグが9人制、パ・リーグが10人(DH)制の変則ルールの野球は奇妙なスポーツだ。サッカーもコロナ禍、交代要員が従来の3人から5人に変更されたり、延長戦に限り4人になったりの変更はあるが、少なくとも世界大会では統一のルールの下で運営されている。野球の世界大会ではDH制が一般的で、管見のかぎりだが、9人制が採用された国際大会はないはずだ。時代はDH制に傾いているのだから、NPBもいまさらMLBの真似をしないで、DH制に統一したほうがいいと筆者は思う。もっとも、投手が打席に入る9人制はそれなりの面白さがある、という野球通がいることは確か。筆者はその差異を楽しむほどの野球ファンではないので、このままでもかまわないし統一でも構わない、というのが本音である。