NPBセントラルリーグ、読売ジャイアンツ(以下「巨人」)の優勝が決まった。以下の順位は、阪神・DeNA(CS出場権獲得)そして、広島、ヤクルト、中日である(2024/10/05現在)。筆者が本年3月26日に拙Blogで予想した順位は阪神(優勝)、 広島、 巨人、ヤクルト、DeNA、中日であったから、かなり外れた。
DeNA・中日が巨人優勝をアシスト
巨人のチーム別対戦成績を見ると、阪神=12勝12敗(1)、DeNA=16勝8敗(1)、広島=13勝 9敗(3)、ヤクルト=13勝12敗(0)、中日=15勝9敗(1)である。( )内は引分 。巨人の優勝は、DeNAと中日をカモにした結果ともいえる。この2チームがもうちょっとがんばってくれたなら、筆者の予想が外れなかった可能性もなくはない。
巨人のライバルが阪神、広島であることは容易に予想できたことだが、その阪神は序盤・中盤、打線の不振と拙守で星を落とした。終盤の追い上げも時すでに遅し。追い越せなかった。広島のBクラス落ちは想定外。終盤の大不振は日本球界の歴史に残るかもしれない。投打にわたって息切れした。
巨人を救ったヘルナンデス
ライバル2チームに比べて、巨人はシーズン途中で有効な補強をした。悪い流れを変えたのは米国AAAからやってきたヘルナンデスだ。MLB経験はないが、なかなかの巧打者でNPBに短期間でフィットした。ケガで、優勝を決めるまでの試合に出場できなかったが、彼の貢献が巨人を優勝に導いたといえる。MVPに値する活躍だった。
一方の阪神は動かなかった。再契約した外国人(ミエセス、ノイジー)が不振で一軍出場すらかなわなかったにもかかわらず、既存戦力の台頭に期待したようだが、結果としては失敗に終わった。
広島は阪神よりも重傷だった。序盤に末抱が故障で出場できず、2024年に新たに契約した外国人2選手(マット・レイノルズ内野手/MLBレッズと、ジェイク・シャイナー内野手/AAAタコマ)がNPBにフィットしないまま退団した。広島は主力の西川がFA移籍で退団し戦力低下していたにもかかわらず、シーズン途中の補強を怠り、既存戦力の台頭に賭けたが、阪神同様失敗に終わった。
他球団を寄せつけなかった読売の球団経営力
巨人は変わった。阿部新監督は、それまでの監督(原、高橋、原)の野球を捨てた。ヘルナンデスの補強はそのことの象徴でもある。狭い東京ドームに本拠地を構える巨人は、一貫してホームラン打者を揃えるチームづくりを行ってきたが、阿部はアスリートタイプで臨もうとしたようにみえた。このことは、開幕前の拙blogで詳述した。
(1)積極的に動いたフロント
序盤から中盤にかけて、阿部の構想は、梶谷が故障で長期欠場したことで崩壊しかけた。外野陣に大穴が空いたのだ。丸以外のレギュラーがいなくなった。読売球団はまず、国内トレードを試みたが結果がでなかった。最後の選択として、AAAの選手の獲得に乗り出し、前出のヘルナンデスに巡り合えたわけだ。それでも、LFの穴が埋まらず、内野手登録の新外国人モンテスで応急手当てをした。ヘルナンデス離脱以降は、モンテス、浅野、オコエが日替わりヒーローとなり勝星を重ねた。
(2)すぐれた体調管理
内野では、吉川(2B)の活躍も見逃せない。シーズンをとおして優勝に貢献した。天才的守備力とチャンスに強い打撃が巨人のピンチを幾度となく救った。彼の弱点は故障(腰痛持ちだと聞いたことがある)が多いことだったが、今シーズンはそれが出なかった。後述するが、菅野の復活もみごとである。本人たちのセルフコントロールの努力もあるし、また、コンディション担当コーチの功績かも知れない。
(3)円滑な一軍⇔二軍の交流
巨人は二軍との連携が円滑で、そのことが弱めの攻撃陣を救った。一軍で調子を落とした選手は二軍で調整させ、二軍で調子の良い選手が上がってきて活躍するというパターンを確立した。前出のとおり、二軍で賄いきれなければ、外国人選手を輸入するといった思い切った策が功を奏した。このシステムは球団-阿部監督-桑田二軍監督-各コーチ-スカウトを中心としたスタッフの有機的連携の結果だろう。球団レベルにおいて、阪神、広島を引き離した。
投手王国となる予兆
巨人優勝の一方の要因は投手力である。菅野が完全復活以上の働きをみせた。筆者は菅野限界説を唱えていたのだが、その予想は大外れだった。前出のとおり、彼の復活はコンデションを維持できたことだろう。持病の腰痛が発症せず、肘の故障もなかった。そのうえ、今シーズン序盤に話題となった飛ばない公式球といいたいところだが、圧倒的な投高打低現象の主因は、ストライクゾーンの変化ではないか。取材をしていないので筆者の主観にすぎないが、公式球の仕様というよりも、球審のストライクゾーンが低めに広がったことが大きいと思う。そのため、コントロールの良い大瀬良、菅野というベテランが復活したし、髙橋宏斗(中日)の防御率1.38は驚異的記録となっている。スプリット、チェンジアップといった落ちる球が全盛の時代、加えて低めに甘くなったストライクゾーンという条件がそろえば、投手力の良い巨人には好都合である。
真剣さが足りない5球団
巨人の優勝に文句をつける気はないが、2024年シーズンは、NPBセントラルリーグの実力低下を露見させた。阪神の淡白な球団運営、中日、ヤクルト、DeNAのやる気のなさ、強調すべきは広島球団の緊縮経営による終盤の絶望的凋落である。巨人を除く5球団からは、ペナントを必死で取りにいこうとする気迫・姿勢がうがえない。球団創設90年の読売に花をもたせたのか、と疑いたくもなる。(次回はパリーグ)