2024年10月8日火曜日

NPB2024総括(パリーグ)

 

 NPBパシフィックリーグは早々とソフトバンクが独走態勢を固め、すんなりと優勝を決めた。以下、日本ハム、ロッテ(CS出場権獲得)、楽天、オリックス、西武となった。筆者が本年3月26日に拙Blogで予想した順位は1.オリックス、 2. ソフトバンク、3. 楽天、4. ロッテ、 5. 西武、6. 日ハム  だったから、まったく当たらなかった。 

パリーグ3つのサプライズ 

 パリーグの2024シーズンで特筆すべきは以下の3点だ。第一が、2シーズン最下位だった日ハムの2位躍進、第二が、二連覇したオリックスの5位転落、第三が、最下位西武の悲惨な成績(勝率.350/2024/10/07現在)だ。今シーズン、西武球団は黒歴史を刻んでしまった。

(1)バランスのとれた日ハム

  まず、日ハムの2位躍進の主因を探りたいところだが、いまのところ筆者には考えが及ばない。わからない、謎のままだ。手元のありきたりのデータから探るならば、本塁打数111本はソフトバンクに次いでリーグ2位であること、チーム打率.245はリーグで3位であること、盗塁数91はリーグトップであること。一方、防御率.295は、ソフトバンク(2.53)、オリックス(2.82)に次ぐ3位であること――から、日ハムは盗塁数、本塁打数が多く、攻撃型のチームだったことがわかる。日ハム・新庄監督はスクイズ多用のイメージが強く、貧打で守備型のチームだと思っていたが、データからするとそうではなかった。なお、失策数75は、オリックスに次ぐ2位であるから、守備が特段上手いチームでもない。今季の日ハムは、バランスの取れたチームだったことだけは確かである。

(2)5位オリックスは予想外

 開幕前、筆者は、優勝するのはオリックスかソフトバンクかで迷ったくらいだから、ソフトバンクの優勝は驚かない。しかし、オリックスが勝率5割を割り、5位に沈むとは思わなかった。
 結果論になるが、オリックス凋落の要因はわかりやすい。絶対的エース山本がMLBに移籍し、投手陣の柱が抜けたことだ。若手投手陣が支柱を失い、精神的安定感を失い、昨年培った自信が揺らいでしまったと思われる。投手陣を引っ張るリーダー的投手が育っていなかった。加えて打撃陣も精彩を欠いた。主砲杉本が82試合の出場にとどまり、FAで広島から移籍した西川もパリーグの野球にフィットできなかった。
 連覇は難しいといわれるくらいだから、三連覇はなお難しい。若手が多いオリックスだから、既存戦力が昨年から上乗せして戦力アップと単純に考えてはいけなかった。これは予想と結果の乖離という難題だ。既存戦力が順調にスキルアップすれば問題は生じないが、NPB球団が職業野球集団である以上、リーグ途中であっても、構想から外れた弱点をトレード、外国人などで補う努力を必要とする。フロントがなにもせず、すべて現場まかせならば、GMも球団社長も給料を返納すべきだ。 

(3)西武の大不調は論評不能 

 大敗西武の主因は内部の者でないとわからないのではないか。戦力、モチベーション、チーム内不和・・・なのか、それらが複合的にからみあったのか。選手、コーチ・監督、フロントすべてにかかわる問題なのだろう。NPBはセパ6チームと少ない構成だ。そのうちの一つが勝率.350となれば、リーグ戦の興味は失せる。
 さて以下の記述は推察にすぎないが、昨シーズン、西武は「山川問題」でつまずき、その山川がソフトバンクで大活躍したという重い現実がある。以下、「山川問題」を大雑把に振り返ってみる。

 事件は、2023年5月、山川が東京都内のホテルで当時20代の知人女性に対して性的な暴行を加えたとして、警視庁が強制わいせつ致傷の容疑で捜査を進めていることが文春オンラインより報じられたことで明るみに出た。
 文春によると、警察は被害届を受理し、山川に事情聴取が行われたという。その直後、山川は強制性交等の容疑で警視庁により東京地検へ書類送検され、西武球団は謝罪のコメントを発表した。
 同年8月、東京地検は山川を嫌疑不十分で不起訴処分とした。球団は、9月に無期限の出場停止処分を発表すると同時に、山川自身の「不起訴と判断されましたが、そもそもの主たる原因は、わたしがプロ野球選手という立場をわきまえずにした行動が招いたものであり、深く反省しています」というコメントを紹介した。
 2023年、2024年に行われた西武ホールディングスの株主総会では、株主側から山川に関する質問が2年連続で行われた。西武側は回答の中で、「不法行為ということは今のところ考えていない」として、グループ全体が負った損害に対する賠償請求を行わないことを示唆したという。
 2023年シーズンオフの10月5日、公式戦外の教育リーグであるみやざきフェニックス・リーグへの参加が発表され、同11日の同リーグの試合で5か月ぶりに実戦復帰を果たした。同23日には、4月に右足痛で登録抹消となった期間に「故障者特例措置」が適用されたことにより、国内FA権を取得しFA権を行使。この行使を受け、ソフトバンクが山川獲得に乗り出し、2023年12月19日、ソフトバンクへの入団が発表され、入団会見が行われ、山川は改めて、一連の不祥事について関係者や西武ファンに対する謝罪を行った。なお人的補償として甲斐野央が西武に移籍することとなった。ちなみに甲斐野の今シーズンの成績は、開幕一軍入りを果たすも、18試合登板で1敗5ホールド、防御率3.12。戦力にならなかった。(Wikipediaより抜粋)

 真相は藪の中である。検察が不起訴処分とした背景が不明である。一般に被害者との間で示談が成立した場合、不起訴処分とするケースが多いというが。しかし、前出の文春によれば、「女性は膣内やその他下半身などから出血するけがを負って」いたという。文春の報道のとおりならば、性的暴行、傷害の加害者が不起訴処分というだけで大観衆の前で平然とプレーをするのはやはり異常事態である。
 山川のFA宣言、ソフトバンクの獲得もおおいに疑問が残る。ソフトバンク側は獲得に際し十分な調査をしたというが、調査の実施主体、調査内容も非公開である。NPBも「山川問題」について調査委員会を立ち上げた様子はないし、スポーツメディア、マスメディアも不問に付した。いまになっては、「山川事件」はなかったことになっている。
 西武というチームが歴史的負け数を記録した主因が「山川問題」に結びついているという証拠はもちろんない。ただ、西武の選手たちが複雑な気持ちを抱かないはずはないと推測できなくもない。「カネがあって野球がうまければ、なにがあっても許される」という風潮は究極のモラルハザードである。「山川問題」の幕引きは、NPBの統治能力の限界をみせた、と筆者は考えている。

西武とオリックスは猛省を

 西武およびオリックスの両球団は来季に向け、既存戦力の分析からはじめて、スカウティング(ドラフト・トレード)戦略を固める必要がある。球団社長、GMがリーダシップをとって来季のチーム編成の骨格を示さなければならない。選手として実績のある者を監督に迎え入れただけで、「手を打った」とする「現場丸投げ」の方策は時代遅れ。セリーグも含めて、NPBの近代化が望まれる。(次回は「これでいいのかNPB」)