2024年10月26日土曜日

2024ドラフト会議に思う


  前回の拙Blogにて、NPBの課題を整理した。その中の一つが限られた球団数であり、それを象徴するのがドラフト会議である。

2024 プロ野球ドラフト会議


 今年のドラフト会議では育成契約をふくめて123名が指名された。今年はどちらかといえば話題をさらうアマチュア界のスター選手が不在のため、父親が元NPB選手で西武、巨人で活躍しながら、覚せい剤取締法違反によって有罪判決を受けた長男の「指名漏れ」が大きな話題となってしまった。彼は東京六大学野球リーグでそれなりの成績を上げたにもかかわらず、「指名漏れ」となったのだ。このことについては後述する。
 さて、指名された選手数は1球団当たりおよそ10人にすぎない。ドラフト会議はNPBの狭き門をもっとも象徴するイベントといわれる所以だ。ドラフト会議が開催される晩秋は、未来のプロ野球選手の誕生が華々しく報道される一方で、NPBから引退、自由契約、戦力外通告によって100人超が退場する時期にもあたる。「プロ野球界の厳しさ」をもっとも実感する季節でもある。

いわゆる「指名漏れ」選手の総数は200人超

 NPB入りの厳しさは、メディアで報じられる指名および「指名漏れ」の選手だけでは実感しにくい。
 NPB球団から指名を受けるには、社会人選手・独立リーグ選手を除く高校生・大学生にはプロ野球志望届の提出が義務付けられている。2024年は、高校生159人、大学生162人の計321人がプロ野球志望届を提出した。ということは、指名をうけなかった選手がおよそ200人いたことになる。もっとも、プロ野球志望届はだれでも提出可能なので、届出者すべてが職業野球を志しているとはかぎらないのだが、届を出さないで指名を待つ独立リーグ選手や社会人野球選手を含めると、実態上の「指名漏れ」はかなりの人数にのぼる。
 NPBが間口を狭めて才能ある人材を埋もれさせているのか、逆に篩にかけ、高いレベルを維持しているのか――について即答することは不可能だとは思う。それでも筆者は、前者の可能性の方が高いと感じている。その根拠となるのが、ドラフト高順位指名選手が必ずしもレギュラーになるとは限らない現実を見るからだ。たとえば近年、育成枠指名でNPBに入団したした選手の活躍が目覚ましい現実に注目したい。ざっと挙げると、MLBメッツ所属の千賀滉大を筆頭に、甲斐拓也(ソフトバンク)、周東佑京(同)、大竹耕太郎(阪神)、宇田川優希(オリックス)、牧原大成(ソフトバンク)が思い浮かぶ。それに下位指名選手を加えるとどうなるだろうか。

ドラフト指名は難しい

 ドラフト指名については、専門の球団専属スカウトが全国をとびまわり、アマチュア選手の才能を見極めた結果だから、その結果は尊重されるべきであり、文句をつける筋合いはない。指名した選手がレギュラーになるか埋もれてしまうかは、さまざまな条件の複合的結果だ。たとえば、ケガ、故障、性格なども関与する。
 また、前出の話題をさらた「指名漏れ」選手の場合、各球団が、覚醒剤問題を起こした父親の影を意識した可能性を否定できない。彼がいわくつきの父親の長男でなかったならば、上位指名は難しくても下位指名はあったように思う。というのも、彼が野球を始めたのは大学生になってからで、中学ではバレーボール、高校ではアメリカンフットボールの選手という経歴をもっていることにある。大学から野球をはじめたにもかかわらず、大学野球界で老舗の東京六大学野球のレギュラーになっていることから、高度の野球センスと身体能力をもっていることが想像できる。彼がこの先、野球の道を進むのかどうかいまの段階では不明だが、NPBに入るにはもう少し時間を要することは確かである。
 NPB入りを目指して10代のほとんどの時間を野球に打ち込んできた若者を「指名漏れ」というかたちで排除するのはいかにも残酷だ。「指名漏れ」となった選手が日本で野球を続ける道は、①国内独立リーグ入団、②社会人野球入り、③高校生なら大学進学または社会人野球入り――にかぎられる。①のみが職業野球であるが、待遇・環境はかなり厳しいという。①②を経てNPBから再指名を受けるには時間経過が必要となる。

NPBが20球団があれば...

 くり返しになるが、NPBの12という球団数は、日本の野球競技人口および日本社会における野球への関心度からして少なすぎる。いますぐ球団数を増やすことは難しいとしても、MLBにおけるマイナーリーグに匹敵する下部リーグの組織化から着手し、たとえば上部リーグをB1、下部リーグをB2とカテゴライズし、サッカーJリーグに倣って、B1下位2チーム⇔B2上位2チームの入れ替え制度なども参考にして、長期計画によってB1(現在の一軍)の球団数増を図ってもらいたいものだ。
 プロ野球選手を目指して青春を賭けた若者に門戸を広げたい。隠れた才能が発掘され開花し、大スターが生まれる可能性が高まることに期待したい。冒頭の写真のとおり、今年のドラフトで最も注目を集めた選手の名前は「夢斗」である。一日も早く、夢が広がるNPBになってほしい。〔完〕