阪神タイガース、リーグ優勝おめでとうございます。
アンチ巨人としては嬉しいかぎり。しかも、ぶっちぎり(2位巨人になんと17ゲーム差)、で史上最速優勝というおまけまでついた。
惨状を呈したセントラルリーグ
今季のセントラルリーグの惨状は目を覆いたくなるばかり。5球団がそろいもそろって勝率5割に満たなかった。筆者の野球観では、優勝決定後の記録はすべて無効だから、この先CS出場権争いで多少、5球団の勝率が上がったとしても、筆者にとっては意味をなさない。
そもそも、CS制度そのものを認めない。拙Blogで何度も繰り返し書いていることだが、CSはフル・マラソンが終わった後の走者に、短距離レースをやらせて(多少のハンディはつけているようだが)、日本シリーズ出場権を争わせるという、愚かな制度だ。即刻廃止が望ましい。CSは日本シリーズ(日本一決定)の価値を貶めている。
(一)罪深きはヤクルト
最下位ヤクルト(勝率.398)はNPBから退出すべきだ。主砲村上が長期離脱したから、という弁明は許されない。彼の長期離脱がわかった時点で、外国人獲得、トレード等、チーム強化の努力をしなければプロ球団とは言えない。しかも、村上ばかりかサンタナも長期離脱していた。「やるきなし」だ。
加えて、ヤクルトはここ数年、弱体投手陣という指摘を受け続けていたにもかかわらず、強化を怠ってきた。防御率8.23の石川を200勝がかかっているからという理由でローテーションに入れていることも理解できない。セリーグを「破壊」した責任は重い。
(二)阿部采配が巨人を壊す
開幕前、「巨人優勝」を予想した評論家は多かったし、筆者もそう予想した。結果は勝率5割を切っての2位だ。ヤクルトの村上離脱が許されないように、岡本離脱という弁明は巨人においても許されない。昨シーズン低迷期が続いたなか、ヘルナンデス獲得が救いとなり、優勝にこぎつけた。そのヘルナンデスが不調に喘いでいるのならば、第二のヘルナンデスを探すべきだった。巨人のシーズン途中での新戦力獲得はリチャード(ソフトバンク)にとどまった。
守備の崩壊
巨人の凋落は、短期的視点からというよりも、長期的に見て、阿部采配の不確実性という観点に立つべきだと思われる。その第一が守備の崩壊だ。阪神優勝が決まった9月7日現在、巨人のチーム失策数は71で不名誉なトップ、二位がDeNA・ヤクルトの64、4位広島62、5位阪神53、6位中日52という順だ。
そもそも、岡本が負傷した主因は、彼の守備位置を一塁、三塁。左翼とたらい回しにした原前監督の采配にあり、それを引き継いだ阿部に責任がある。近年、巨人は複数ポジションを守れることがレギュラーの条件だとされると聞いている。確かにそのとおりで、選手側からすれば出場機会は増えるし、ベンチとしても、好調な選手を多く起用することが可能となる。しかし、守備を甘く見てはいけない。どんなに練習しても、複数のポジションを上手にこなすのは難しい。
こんなシーンがあった。巨人-ヤクルト戦、巨人リチャードの5回の守備。ヤクルト増田の三ゴロのベースカバーで捕球後に増田の左膝がリチャード臀部付近に直撃。危ないプレーだ。リチャードの危ない守備はそれだけではない。彼が一塁を守っているとき、三塁岡本からのワンバンド送球を一塁ベース上に腰を下ろすような体勢で捕球しようとして走者と衝突した。当たり所が悪ければ、岡本の二の舞だったかもしれない。リチャードは一塁と三塁が守れることになっているが、彼の一塁守備はおよそ素人に近い。
定位置を獲得しているのは、野手では泉口(遊)、吉川(二)だけ。岡本が負傷離脱したあとの三塁は、坂本、中山、門脇、浦田、増田大、リチャードと定まらず、一塁も大城、荒巻、増田陸、リチャードと日替わり状態だった。中山は二塁、ライトを兼任したし、大城も捕手をつとめた。門脇は吉川離脱時に二塁を守った。阿部は打撃の調子が悪くなると、即座にベンチに下げ、他のポジションの選手をそこに入れる。選手は打撃も守備も上達しない中途半端なシーズンを送らざるをえない。
一塁と三塁はチームの顔
筆者の野球観では、一塁と三塁はチームの顔となる選手でなければならない。なぜなら両者はファンから最も近いところに位置するからだ。古くはV9時代の巨人のON、いまの阪神ならば大山(一塁)と佐藤輝(三塁)だ。ついでに言えば、打てない一塁手、三塁手は不要だ。このポジションは、守備の負担が比較的軽いのだから。
巨人が「顔」を失ったのは、遡れば、これも原前監督の時代からだ。岡本が本塁打を量産する選手に成長したとき、原(当時)監督は三塁岡本、一塁中田翔の布陣を選択した。中田翔は「とりあえず」の選手だろう。その後、遊撃坂本に衰えが見え始めた巨人は、三塁坂本、一塁岡本の布陣を選択した(岡本はときに左翼も守ったが)。この選択も「とりあえず」感が強い。坂本が三塁で打撃を活かせる期間はせいぜい1~2シーズン。坂本が元気なうちに、打てる一塁手を決めなければならなかった。
筆者は、原が岡本に三塁と一塁を守らせる起用法に不信を抱いていた。巨人の三塁手は岡本で決まりだが、一塁手は不在。そこは外国人選手を迎えてもいいとさえ思えた。原からバトンタッチした阿部が監督就任一年目で優勝した2024シーズン、巨人の一塁・三塁を振り返ってみよう。一塁岡本・三塁坂本、三塁坂本・一塁ウレーニヤ、一塁大城・三塁門脇・左翼岡本・・・と変化が著しかった。この年、大城は打数321、打率.254、本塁打3、打点27、坂本は打数395、打率.238、本塁打7、打点34だった。この実績を踏まえるならば、2025シーズンは一塁大城、三塁岡本で固定すべきだったのではなかろうか。ちなみに、2023シーズンの大城は134試合、424打数、打率.281、16本塁打の好成績で、岡本の打率.278を上回っていたし、坂本(116試合、403打数、.288)に次ぐチーム2位の打率を記録していた。
そして今シーズン、岡本が一塁手で負傷、長期離脱した。岡本の本職は3塁手。チームの顔であり、打撃の中心であるべき選手であることは前に書いた。岡本を本職の三塁に固定していれば、負傷は防げたかもしれない。岡本はどこでも守れるというのは原・阿部の過信である。一塁手岡本は、捕球と走者の距離感、時間軸の計算がとっさに働かず、左腕を走者にもっていかれるという、最悪の結果をまねいた。阿部は「複数ポジション」を原から引きつぎ、岡本の長期離脱という痛手を負った。岡本離脱後、一塁大城で固定していれば、少なくとも、リチャードよりは確実性ある打撃が期待できたと思うのだが、大城の調子が上がらず、代打要員に格下げされた。筆者の見立てでは、大城は試合に出て調子を上げるタイプのように思える。けっきょく巨人の一塁は打率2割に届かぬ(60試合/168打数/打率/.190)リチャードで固定されるという不思議な展開で終わりそうだ。大城という非凡な打者の才能が潰されそうだ。一方、優勝した阪神は、三塁佐藤、一塁大山を固定して、佐藤の大きな成長を促した。
チーム内打率トップの選手にバントはない
阿部采配のバントの多様は許容しがたい。とりわけノーアウト1、2塁でクリーンナップにバントのサインを出すのはいただけない。阿部はこわがりな性格なのだろう。併殺が怖いのだ。筆者は打率チームトップの選手のスリーバント(失敗)なんか見たくもない。ヒットを打って、二塁走者が本塁につっこむシーンを見たい。もちろん、併殺打に終わることもあるだろう。しかし、バントが成功したところで、次の打者が外野フライで1点取ったとしても、おもしろくない野球である。
泉口がバントを失敗した挙句、ベンチで涙をこぼしたシーンがTV映像に流れた。彼は打率リーグトップの選手に成長している。チーム内でもっとも信頼すべき打者のひとりなのだ。彼を大物に育てたいのならば、ベンチもリスクを負わなければならない。でなければ、チャンスにバントをする選手で終わってしまう。しかも阿部は泉口を懲罰交代させた。選手は人間である。どんな選手にもプライドがある。阿部の采配は、言葉を持たないパワハラ行為だ。
阿部の選手起用は短絡的
阿部は「起用即結果」を求めすぎる。不慣れなポジションを守らされれば、ミスが起きる。守備、走塁でミスをする、チャンスで打てないとなると、すぐ打順を代える、交代させる。選手は委縮し、緊張してミスをする。という負のスパイラルが選手のあいだに広がる。巨人に必要なのは一塁と三塁というチームの看板選手を育てることだった。三塁の岡本が育ったのだから、坂本が元気なうちに、一塁の強打者を外国人でいいから一時的に補強すべきだった。繰り返すが、一塁と三塁はチームの顔でなければならない。
岡本に限らず、複数ポジションをプロレベルで守れるだけの練習を積ませて起用しているのかどうか、選手がミスをした後、それを取り返すだけのタフさを身につけさせているのかどうか、監督、コーチが選手の技量を正確に把握しているのかどうか、ユーティリテープレイヤーとしての才能を見極めているのかどうか。選手を責める前に、球団・監督・コーチの無能無策を反省しなければ、来季も5割を維持することは難しいだろう。
(三)DeNA、広島に進歩なし
巨人に勝てないDeNA、後半失速する広島。この2球団には進歩向上のあとが見られない。どちらも選手層が薄い。前者は投手陣、後者は打撃陣に駒不足。DeNAにしても、ベテラン宮崎、筒香に頼っているようではヤクルトの二の舞になる可能性が高い。対戦成績をみると、阪神に5-12(2) 、巨人に6-14(1)というひどさ。先が思いやられる。
中日は昨年より向上した。課題だった打撃陣に新戦力を加え、もとから良い投手陣とあいまってバランスを回復した。しかし、対戦成績を見ると、阪神に10-10、巨人に10-12と善戦している一方で、DeNAに8-15、ヤクルトに9-9(1)という成績は不思議であるし、もったいない。来季の課題となろう。〔完〕