2026年8月29日土曜日

FIFAの処罰に異議あり

  


 FIFA(国際サッカー連盟)は、北中米ワールドカップの決勝後に起こった乱闘騒ぎについて、関与した選手4名、およびチームスタッフ1名に対する処罰を発表(8月21日)した。 

  スペイン代表vsアルゼンチン代表の決勝戦。スペインが16年ぶり2度目の優勝を飾った直後、乱闘事件が起きた。タイムアップの笛が鳴り響き、スペインの全選手がピッチに流れ込んでセレブーションをはじめたところ、まずはアルゼンチンのナウエル・モリーナがベンチから飛び出したスペインの主将ロドリに対し、胸部へパンチを放つ。怒ったロドリがモリーナに詰め寄ると、スペインのエリク・ガルシアがサポートする。これに猛然と割って入ったのがアルゼンチンのレアンドロ・パレデスで、ガルシアを"のど輪"で突き飛ばすと、止めに入ったスペインのガビにも2~3発のパンチを浴びせる暴挙に出た。アルゼンチンのチアゴ・アルマダとガビが揉み合う場面も目撃されており、別の場所ではアルゼンチンのコーチのロベルト・アジャラがスペインのダニ・オルモの頭を殴打した。FIFAはこれらの行動を問題視し、規律委員会を立ち上げて調査を続け、以下の処分を発表した。 

 パレデス(アルゼンチン)→10試合の出場停止、9万ドル(約1430万円)の罰金 

モリーナ(アルゼンチン)→7試合の出場停止、9万ドル(約1430万円)の罰金 

アルマダ(アルゼンチン)→1試合の出場停止、3万ドル(約476万円)の罰金 

アジャラ(アルゼンチン)→3試合のベンチ入り停止、3万ドル(約476万円)の罰金 

ガビ(スペイン)→1試合の出場停止、3万ドル(約476万円)の罰金 

 この処罰が軽いのか重いのか適正なのかと言えば、筆者は軽すぎると思う。出場停止とはいえ、代表選にかぎられている。彼らが代表として公式に出場するのは2年後の2028年の南米選手権だ。その間、親善試合がどのくらい組まれるのか見当もつかないが、アルゼンチン代表チームおよびパレデスらにとって大きな痛手とはならない。罰金の最高額を課せられたパレデスは、ASローマ、エンポリFC、ゼニト・サンクトペテルブルク、パリ・サンジェルマンFC、ユヴェントスFC、 ASローマ、ボカ・ジュニアーズと一流クラブを渡り歩いた経歴をもつ。移籍金等は500万ユーロ~2800万ユーロと高額だった。移籍金は選手の報酬とは無関係だが、おそらく罰金の1,430万円などはした金だろう。あのような行為が街中の路上や飲食店内で行われれば警察沙汰になることはまちがいないのだが。 

 FIFAの処分が軽いと批判しても罰金の適正額ははかれない。ではどうしたらいいのか。答えは簡単――処分を受けた選手らが彼らが犯した重大な過ちについて反省の弁をサッカーファンのみならず世界中に発出すればいい。そのうえで、寄付なりボランティア活動を進んで行えばいい。いまのところ、管見の限りだが、そのような報道に筆者は接していない。おそらく処分を受けた選手たちは反省もしていないし、処分など気にもかけていないだろう。彼らは傲慢な「サッカーバカ」なのだ。 

 FIFAは、処分を発表したことで、2026W杯は完全に終わったことにして、決勝戦後の暴力事件はなかったことにするつもりだろうが、このような幕引きについて、筆者はまったく納得していない。〔完〕

2026年8月4日火曜日

W杯は終わっていない


優勝したスペイン代表


2026サッカーW杯を総括する


 スイスの実況・解説者デイヴィッド・レモスが今回のW杯の問題点を総括した。彼の言説を要約すると、今回のW杯は、至上最も商業化され、かつ政治色の強い大会だったとなる。

 その主因は、国際サッカー連盟( Fédération internationale de football association /通称FIFA)現会長のジャンニ・インファンティーノの主導の下、これまでのレギュレーションに変更を加えたことに起因する。インファンティーノは、開催国のひとつである米国トランプ大統領と近しい関係にあるという。二人の共謀の下に顕在化した改悪事例とは、①ダイナミックプライシング導入、②ハイドレーションブレイク導入、③国籍を理由に開催国への入国禁止措置、④イランチームに対する陰湿ないじめ、⑤フォラリン・バログン事件、⑥ 出場チーム増(32→48)、⑦ 開催圏の広域化、⑧アルゼンチン贔屓の疑惑の判定――といったところで、大会運営上の問題、政治的介入、レギュレーション変更等に及んだ。前出のデイヴィッド・レモスは、今回のW杯について次のように警鐘を鳴らした。
(これらの)問題の根底には、『金』と『権力』という二つの存在がある。いま、サッカーに関わる多くの人々とFIFAとの間には、深刻な信頼の危機が生じている。 今後数週間のうちに、多額の資金が各国サッカー協会や、多くのサッカー関係者へ分配されるだろう。そして彼らは、『どうか黙っていてほしい』と丁重に促されることになる。

アルゼンチン疑惑


 この疑惑は、アルゼンチン代表を優勝させるために大きな力が加えられた疑いがある、と換言できる。

アルゼンチン選手の悪質なファウル

 アルゼンチン代表有利の判定は決勝トーナメントに入るや、より顕著になり疑惑を深めた。対エジプト戦(ベスト8ラウンド)、スイス戦(ベスト4ラウンド)では、アルゼンチン選手の悪質なプレーはノーファウル、あるいは笛のみでカードが出ないが、相手選手の反則にはイエローが連発されたばかりか、いきなりのVAR判定によるゴール取り消しや、相手チームのエースに退場処分が出るといったありさまで、エジプト、スイスは苦杯をなめた。アルゼンチン選手はそのことを理解していて、自分たちにイエローは出ないという前提で悪質なファウルを繰り返した。

 アルゼンチンを現場で優遇したのは審判団(主に主審)である。彼らがFIFAの意向に逆らえば、W杯に呼ばれなくなるから、FIFAの圧力に耐えられなくなる可能性を否定できない。VAR担当者も同様に、圧力を気にして恣意的に介入した結果、疑惑の判定が相次いだのではないか。また、インファンティーノFIFA会長と特別な関係があると言われるメッシが、試合中、主審に圧力をかけている、という報道もある。

アルゼンチン優遇を推論する


 なぜ、アルゼンチン代表は優遇されるのかを推論すると、以下のとおりになる。

(1)マールアラーゴとインテルマイアミ


   アルゼンチンのエース、メッシはフロリダ州マイアミを本拠地とする米国MLS(Major League Soccer) のインテルマイアミというクラブに属している。メッシのアルゼンチンがW杯で優勝すれば、彼はアルゼンチンの英雄かつ米国MLSインテルマイアミの英雄として、米国サッカー界が盛り上がる。

 ところで、トランプの別邸マールアラーゴはフロリダ州パームビーチにある。マイアミの人口は46万人だが、マイアミ・デイド郡、ブロワード郡、パームビーチ郡の3郡に及ぶ南フロリダ都市圏の人口は600万人を上回り、全米第8位の都市圏を形成している。つまり、インテルマイアミは南フロリダ都市圏を本拠地としていて、トランプの私邸がその中に含まれる。トランプの本貫はニューヨークだが、いまやニューヨークを代表する政治家は市長のマブダニにとってかわっていて、トランプはでまるで人気がない。トランプのホームはいまや南フロリダに移ってしまった感があるのだが、3月の州議会選挙でトランプが推す共和党候補が負けた

 かくして トランプに近いインファンティーノFIFA会長がトランプに忖度して、アルゼンチンというよりもMLSの英雄メッシをつくりだしたいため、アルゼンチン優勝を画策しているのではないか、という憶測が流れた。こうして、アルゼンチン代表を優勝させるために大きな力が加えられた疑いが世界中から湧き上がったのだ。

(2)ドンロー主義


  トランプが宣言したドンロー主義をここで持ち出すのは穿ちすぎだろうか。ドンロー主義とは、ドナルド・トランプのファーストネームと19世紀の「モンロー主義」を掛け合わせた、米国の新たな外交・安全保障方針を示す造語。北米・中南米を含む西半球を米国の絶対的な勢力圏・支配下と捉え、必要とあれば強硬な武力介入も辞さない姿勢を指す。
 トランプ(ドンロー主義)→西半球→南米→アルゼンチン→メッシという関係性だ。

アルゼンチン代表がおかした大きなあやまち



 アルゼンチン代表はイングランド戦、スペイン戦の試合終了後、大きなあやまちを犯した。準決勝のイングランド戦に勝利したアルゼンチンは、試合後、「Las Malvinas son Alzentinas(マルビナス=フォークランド諸島)はアルゼンチンのものだ」という横断幕を掲げた〔註〕

  「フォークランド諸島はアルゼンチンのものだ」というアルゼンチン代表の心情はわからなくもない。しかしこのような行為を許してしまえば、「パレスチナはイスラエルのものだ」「ウクライナはロシアのものだ」「グリーンランド(デンマーク自治領)は米国のものだ」といった横断幕が当事者間の試合ごとにピッチに乱立し、サッカーW杯が紛争国によるプロパガンダと当事国のナショナリズムの発揚の場になってしまう。FIFAには、政治、イデオロギーの介入を断固として阻止する義務がある。

〔註〕1982年4月、アルゼンチンの軍事政権がフォークランド諸島を占領、これに端を発してイギリスとアルゼンチンが同島で大規模な武力紛争を展開した(フォークランド紛争/マルビナス戦争)。イギリスは2ゕ月後に同島を奪還して勝利を収めた。戦争状態が終結したのは1990年2月のことだった。

 そればかりではない。スペインとの決勝戦に敗けた試合の直後、アルゼンチン代表選手・チーム関係者がスペインの選手に暴行を加えるという不祥事を起こしたばかりか、スペイン代表の優勝表彰の際に、彼らは表彰者に背を向けたのだ。いわゆる`Bad Loser`の振る舞いだ。

 アルゼンチン代表がここまで傲慢かつ悪質な振る舞いを行ってしまった要因は以下のとおりだ。①主審は自分たちに常に有利に判定している、②VARがアルゼンチンにとって都合の良いように運用されている、③イエローカード、レッドカードは自分たちに出されない――つまり自分たちは審判(FIFA)に護られていると確信するに至った。その結果、彼らは万能感に浸り、自分たちは罰せられないという増長、思い上がりの気分で試合に臨み、相手選手を傷つけ、試合後も勝手に振る舞った。


これはサッカーではない

 もうひとつの見方としては、南米のアルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイの3か国のサッカーは荒っぽいし悪がしこい。相手を挑発したり、平気で削って弱らせたりする。 パラグアイがフランスと戦った試合を思い出せば、そのことが理解できる。

 前出のとおり、本大会では、結果として、国際試合の反則コードが南米並みに緩くなったから、彼らは自分たちが育った南米サッカーを思う存分発揮できると確信した。決勝戦後のアルゼンチン国民の反応は、あのレッドカードは許しがたい審判の判断だった、と主審を批判している。つまり、アルゼンチンがW杯で行った悪質な反則プレーは、アルゼンチン本国では当たり前のプレーのようだ。 

 大会終了後、アルゼンチンを除く世界各国のサッカーファンがアルゼンチンをW杯から追放すべきだ、と叫び始めた。

ビンチッチ主審の勇気あるレッドカード


やっと出されたアルゼンチン選手へのレッドカード


 前出のとおり、VARを含めた審判員もFIFAの意向に逆らえば、W杯に呼ばれなくなるから、FIFAに忖度する。決勝戦でアルゼンチンの選手にレッドカードを出したスラビコ・ビンチッチ主審(スロベニア出身)の心中はいかばかりかと察する。筆者はこのレッドカードで、W杯の将来に希望を見た。

 ビンチッチは、大会終了からわずか1週間後に審判からの引退を発表したという報道を筆者は目にした。

W杯はまだ終わっていない


(1)FIFAは暴力選手を規定どおり処分できるか


 7月29日、BBCはスポーツジャーナリストのElizabeth Botcherbyの署名でFIFAがアルゼンチン代表チームについて、懲戒手続きを開始したと報じた。アルゼンチンがワールドカップ決勝でスペインに敗れた後、そして大会期間中を通して見せた振る舞いに係る懲戒だ。その内容は以下のとおり。

 世界統括団体(FIFA)は、7月にニューヨーク・ニュージャージー・スタジアムで行われた試合の終了ホイッスル後に何が起こったのかを調査するため、懲戒倫理担当の検察官を任命した。この試合では、アルゼンチンの複数の選手とスタッフが、1対0で敗れたスペインの選手たちと口論になった。
検察官の勧告に基づき、FIFAはアルゼンチン代表選手のナウエル・モリーナ(2件)とレアンドロ・パレデス(3件)、およびアルゼンチン代表アシスタントコーチのロベルト・アヤラ(1件)に対し、FIFA懲戒規定第14条に基づく暴行容疑で調査を行う。
 モリーナは、第14条に基づく非スポーツマン行為の疑いで懲戒処分を受ける可能性もある。
 チームメイトのチアゴ・アルマダとスペイン代表MFのガビも、同様の違反行為で告発されていて、FIFAの懲戒規定によれば、選手や役員は非スポーツマン行為に対して最低1試合の出場停止処分、暴行に対して最低3試合の出場停止処分を受けることになる。 (BBC)

(2)頓挫したインファンティーノの野望


 FIFAはW杯終了後、W杯など主催大会の商業的価値を高めるために放映権やスポンサーシップなどを集約した子会社を設立し、最大2割の株式を投資家に売却する方針を発表した。子会社の当初の株式評価額を200億ドル(約3兆2千億円)とし、売却益を原資に、加盟する211のサッカー協会には計画に参加すれば最大2千万ドル(約32億円)の一時金の支払いを約束した。

 これに対して欧州サッカー連盟(UEFA)は7月30日、「W杯は売り物ではない」と表明し、計画が取り下げられない限り、加盟協会のチームはFIFA主催大会に参加しないと宣言した。北中米カリブ海連盟とアジア連盟も計画への反対を表明。インファンティーノ会長の上級顧問を務めていたカルロス・コルデイロ氏もFIFAの提案に反対して辞任を決めたとの声明を出した。

 これらの反発を受けたFIFAは8月1日、「この提案を進めることはありません」と方針転換を明言した。銭ゲバ、インファンティーノの野望は頓挫した。

 FIFAは、暴行を働いたアルゼンチン選手を規定どおり処分できるのか、また、インファンティーノは今後、どのような提案でW杯を壊しにくるのか、それにたいして、UEFAに代表される良識派が彼を退陣に追い込むことができるのか――世界中が注目している。
 その結果が判明するまで、W杯は終わらない。〔完〕

2026年8月1日土曜日

イオンモール ガス爆発事故と戦争

ミサイル攻撃を受けたかのような事故現場

 このたびの熊本大地震に被災された皆々様に心よりお見舞い申し上げます。

被災地のようすをTV映像で確認する限り、もっとも衝撃的だったのが熊本イオンモールのガス爆発のものだった。 

筆者は、不謹慎ながら、その影像が、パレスチナ・ガザ地区、ウクライナ各所、そしてベイルートなどの現在進行中である戦地のようすと重なってしまった。ミサイル、ドローンあるいは空爆によって破壊された市街地の――イオンモールとおなじく、人々が日々の暮らしを営む――住宅、病院、店舗・・・のものだ。

イオンモールにおいては、国を挙げて救命、救援活動が展開され、おそらく多くの人が救出されたと思われる。 

さてもしも、日本がどこかの国と戦争になったならば、相手国の放つミサイル、ドローン、長距離砲等や空爆により、街中いたるところが破壊され、イオンモールのような、いや、それ以上の破壊を被ることだろう。戦争の最中、国を挙げての救援、救出を望む術もなかろう。そればかりではない。日本が相手国にたいして破壊攻撃を行い、相手国の生活者の生命・生活を奪うのだ。

戦争は軍人同士が前線で戦ったり、空中戦・海戦で攻撃し合ったりするものだけではない。市民の生活の場および生活インフラが攻撃を受け、兵士と同じように生活者(非戦闘員)に被害が及ぶ。 生活者の死には英雄もいなければ、国から讃えられることも、顧みられることすらない無言の死だ。

人類は、地震という自然災害を予知し予防する手立てをいまのところ、もちわせていないが、戦争をなくすことは可能だ。 もちろん、世界中の人々の努力と叡知が結集しなければ可能ではないのだが。

きょうから8月、敗戦から81年が経過しようとしているいま、日本国民が忘れ去ろうとする「反戦・平和主義」を、いまいちど取りもどさなければならない。〔完〕