2019年1月23日水曜日

代表史上、最も醜悪な勝利――アジア杯KOステージ、日本、サウジに辛勝

サッカーアジア杯UAE大会、日本―サウジアラビアは日本が1-0で勝利し、ベスト8入りを果たした。ベスト8は日本を含めたアジアの4強(イラン、オーストラリア、韓国)、そして、ベトナム(次戦日本)、開催国UAE、カタール、中国に決まった。

いまの日本代表は弱い

さて、サウジ戦、日本の勝利に喜んでいる人は少ないだろう。むしろ、日本の弱さをはっきりと認識したと思う。日本は予選リーグ3連勝で1位通過、そしてノックアウトステージの初戦、ベスト8を賭けた難敵サウジアラビア戦に勝ったのだから、記録の上では順調なようにみえる。

ほんとうだろうか。筆者は拙Blogにおいて、本大会における日本代表のサッカーに警鐘を鳴らしてきた。ここまでの日本代表のサッカーは危機的状況にあると。そのことをサウジ戦で確信できた。

サウジ戦のスタッツをみれば一目瞭然、ほぼサウジにボールを支配され、日本は攻撃のかたちを一度たりともつくれなかった。日本は自陣のハーフコートに押し込まれ、まるで守備の練習を見ているようだった。

日本が上げた決勝点は、前半20分、コーナーキックから日本のCBのヘッディングによるもの。それ以外、日本はほぼ試合時間のすべてを自陣に立て籠もり、守備に終始した。もちろん、サッカーにおいて、このような試合が発生することは承知している。日本より実力がはるかに上回るブラジル、フランスといった強豪国に対して、弱小国である日本が取らざるを得ない選択として。

日本の相手は難敵とはいえ、FIFAランキングで日本を下回るサウジアラビアである。そればかりではない。筆者が残念に思うのは、日本が虎の子の1点を戦術的に守り切ろうとしたとは思えないことである。日本が先取点を上げなくとも、日本はサウジに終始攻撃されていたであろうことは明白なのである。つまり、日本は成り行きとして押し込まれ、守備しかできなかった。だから、この試合は、日本代表史上、もっとも醜悪な勝利だと筆者は考える。

いまだ調子があがらない攻撃陣

すでに以前の拙Blogに記したとおり、本大会における日本代表の調子は悪い。とりわけ攻撃陣4選手は最悪である。サウジ戦のワントップ武藤は、相手DFとの接触プレーでことごとく手を使ってファウルをとられ、攻撃の芽を摘んでいた。主審イルマトフは手を使った接触プレーのすべてを公平にファウルにとった。だから、日本代表が狙われたわけではない。

2列目の堂安、南野、原口にいたっては、自らがフィニッシュを狙う動きばかりで、彼らが連動して攻撃を仕掛けるようなアクションがみられない。それ以外は守備要員といったありさま。後方及びサイドから、攻撃に転じられるような有効なパス等が彼らに供給されない。攻撃の基点が皆無であり、攻撃を構築するイマジネーションがない。W杯ロシア大会で見せた香川、乾、長友でみせたような創造性がない。

堅守はそれで結構なことだが、堅守から速攻がないから、相手にキープを許してしまう。相手のサウジに決定力がなかったから完封できたものの、このような試合が続くようであれば、チームの成長はない。

「自分たちのサッカーをやるだけ」はどこへいったのか

アジア杯を通じて日本代表はなにを獲得したかったのか。言うまでもなくそれは優勝である。優勝するためには「勝利」が最優先だという理屈は明白である。このような大会では、勝利し続けなければ、若い選手に経験を積ませることもできないし、チームの戦術の幅を広げることもできない。だから勝つための手段を選ぶ。ところが、である、これまで日本代表はなんと言ってきたのか。日本代表選手の主力たちは、W杯を前にして、ことごとく「自分たちのサッカーをする」と言ってきたのではなかったのか。そうすれば勝てるとも…

森保ジャパンは「自分たちのサッカー」のあるべき姿をもっていない。試合の成り行きで選手がやみくもに動きまわり、ここまでのところ、各個のバラバラなアクションの積み上げが結果として成功してきたにすぎない。それが、予選リーグ3連勝、ノックアウトステージ1勝をあげたにすぎない。しかもそれらの勝利は、どれも「幸運」なものばかりである。ツキも実力のうちとは言われるけれど、森保が監督として、日本代表の理想とするサッカーを見せるべく選手を動かさなければ、また、選手が必死で戦い抜かなければ、勝利の女神は日本チームから去ってゆく。

いまの日本代表の実力はアジアで6番手

本大会のここまでの試合を見た筆者の印象からすると、現時点の日本代表の力は、韓国→イラン→オーストラリア→サウジアラビア→UAE→ウズベキスタン、に次ぐ程度だと思われる。もしかすると、中国より弱いかもしれない。日本はサウジアラビア、ウズベキスタンに勝ったけれど、内容では劣っている。

森保ジャパンがこの先、ホームの親善試合で勝ち続けたとしても、W杯2020カタール大会予選では苦戦するし、アジア予選が突破できたとしても、カタールW杯でベスト16入りするのは難しかろう。結論は今回も同じ、狭隘なナショナリズムに拘って日本人(森保)監督に固執することはまちがっている。