2019年1月25日金曜日

森保ジャパンに未来なし――ベトナム戦は悲惨な勝利

ベスト4を賭けた日本―ベトナムは日本が1-0で辛勝した。同組のイランが中国に勝ったので、日本はイランと準決勝で相まみれる。

まだツキがある日本代表

ベトナムの大応援団
日本に惜敗したベトナムは東南アジア王者。成長著しく、予選リーグ3位ながらノックアウトステージ(NOS)に勝ち上がり、ヨルダンをPK戦で破った。当然、勢いに乗っている。この試合、日本にとって予断は許されないと言われていたものの、ここまで日本が苦しむとは思っていなかった。

日本の決勝点はVAR(ビデオアシスタントレフリー)によるPK獲得によるもの。このPK判定について、各国で議論があったという。VARからの確認要請を受けて主審がビデオを見たとしても、堂安の転倒をファウルとみなしてPKをとる主審とそうでない主審がいたにちがいない。日本はまたまた幸運に恵まれた。既報のとおり、日本は吉田の先制得点がVARで取消しになっていたから、なんともすっきりしない勝ちだった。

この日の日本代表は試合には勝ったものの、内容は相変わらず悪い。NOSの日本の対戦相手、サウジアラビア、ベトナムにしてみれば、「相撲に勝って、勝負に負けた」と言いたくなるに違いない。

ベトナムの戦術に簡単にはまった森保ジャパン

日本がこの試合苦戦した要因の第一は、日本がベトナムの術中にはまっていた点。ベトナムは日本のパスコースを読みきっていて、ことごとく遮断した。たいへんな運動量だった。森保ジャパンはベトナムの作戦に対処できなかったが、ベトナムが納得できないVARで失点した後、彼らの足が止まってから、やっと、パスがとおりだし、前線も機能し出した。それでも、幸運なPKによる1点にとどまった。つまり、90分間を通して、日本がベトナムを完全に崩し、クリーンシュートを放ったシーンは一度もなかった。堂安の強引さが功を奏したまで。いってみれば個人プレーの結果にすぎない。フィジカルの強い対戦相手ではまずもって通用しない。

残念だが北川は代表レベルに達していない

相手がパスに対して労を惜しまず遮断してくるのなら、ワントップに当てる作戦もあった。ところが日本のワントップ(CF)として先発した北川が起点として機能しない。筆者は北川が代表に選ばれ、大迫の控えで試合に出る理由がわからない。北川の技術、闘争心はまだまだ低レベル。もっと練習してほしい。

CFの大迫に次ぐ二番手は武藤だが、彼の欠陥については前回の拙Blogで詳論したので繰り返さない。森保ジャパンのワントップは人材難だ。

森保ジャパンの最弱点はGK

森保ジャパンにおいて、結果に現れないが最も心配なウイークポイントはGK。正GKは権田らしいが、とにかく判断力が悪い。フィジカル、キャッチング、高さ、反応のレベルはJリーグの並みクラス。対戦相手ベトナムのGK、ダン・バン・ラムに比べて権田の技術、フィジカルが数段落ちることはだれの目から見ても明らかだった。日本代表のGKこそ筆者が最も心配しているポジションだ。

森保ジャパンの弱点整理

ここまでの5試合で露呈した森保ジャパンの弱点は以下のとおり。親善試合ではわからなかったが、公式戦だとはっきりする。
  • ワントップ=人材難
  • 二列目=攻撃の創造性の欠如、連携、有機性、構築力がなく個人プレーばかり
  • GK=フィジカル、判断力が低い。人材難で、もっとも心配なポジション
  • 代表監督=力量不足(情報力、指導力、サッカー観、采配の未熟さ、戦術の柔軟性の欠如…)
アジア杯は結果か内容か

このアジェンダは不毛。アジアのサッカーはいま、急速に発展しつつある。視点を広げてアジアのサッカーを地域別にみると以下のとおりとなろう。

  1. 急速に台頭する東南アジア、
  2. 資金力豊富な中国、
  3. 独特の「サッカー王国」を築く湾岸、中東諸国、
  4. フィジカル面で欧州に引けを劣らないイラン及びオーストラリア、
  5. 潜在能力の高い中央アジア、
  6. 飛躍が期待される西アジア(インド、パキスタン、ネパール、ブータン…)
  7. そして②の中国を含めた、日本、韓国、北朝鮮、台湾で構成される東アジア

そのなかにあって、イラン、日本、韓国、オーストラリア、サウジアラビアが強豪国だった。ところが、本大会においては唯一、イランだけが抜群の強さをみせているものの、日本、韓国、オーストラリアが停滞している。日本に惜敗したサウジアラビアは、あまり変化がない。

一方、前出の全地域が急速に力をつけてきたから、強豪国といわれた5カ国との差が一気に縮まった。一般論として、世界のスポーツのレベルは年々上がっている。上位が停滞すれば、下位にひっくり返される。2019アジア杯はそのような現実を目の当たりにした感がある。

冒頭のアジェンダに対しては、日本はこれからもアジアで絶対的な強さを誇らなければだめ、という解答しかない。内容的にも結果的にも、他国を圧倒しなければ、世界に追いつけない。日本が停滞すれば、アジアから見くだされ、世界で通用しない代表チームになってしまう。後退はもちろん、停滞すら許されない。日本が森保監督のままガラパゴス化し、停滞すれば、全アジア地域との差が縮まるどころか、逆転されるのは時間の問題となる。

森保が代表監督として的確でない理由

森保が代表監督としてなぜ、適正を欠くのかといえば、彼がJリーグというローカルなクラブチームの監督の経験しかないから。森保が少なくとも他国のナショナルチームを指揮した経験があっての日本代表監督就任ならば、適職の可能性はあった。それすらないのだから、悪いのは森保ではなく、任命者ということになる。

レベルの低い国の代表チームが外国人監督を招聘する理由は、代表監督を専門職とする者がもつ視野の広さ、引き出しの多さを買ってのこと。彼らは世界中を渡り歩き、異なる言語、文化、習慣、宗教等を乗り越えながら、受託した代表チームを指導する経験をもっている。世界のサッカートレンドに敏感な彼らは、契約先固有の国民性・フィジカル・世界観と、世界のサッカートレンドを融合し、代表チームを強化するスキルを持っている。

直近の事例でいえば、世界の有能な代表監督たちは、2018W杯ロシア大会当時の世界のトレンドが堅守速攻であることを認識し、それまでのポゼッションサッカーに見切りをつけていた。日本サッカー界に向けて、2018ロシア大会開催よりもずっと前から「フィジカル重視」の発言を行っていたのは、管見の限りだが、元日本代表監督のオシムだったと記憶する。そしてロシア大会は、オシムの言葉どおりのサッカーが展開された。ことほどさように、サッカー後進国にとって、代表監督を専門職とする者の存在は、世界のサッカー潮流を知るための潜望鏡のようなものなのだ。

準決勝、森保が目指すサッカーを明確に示してほしい

森保日本代表監督が目指し、また、理想とするサッカーはどのようなものなのか。世界と合い渉れると(思い描く)日本代表のサッカースタイルはどのようなものなのか。彼は代表監督として、代表ファンにどのような言葉でそれを発信し、日本代表チームに意識づけし、代表選手のプレーに浸透させているのか。このことを次戦イランとの試合で、明確に示してほしい。それが示せなければ、森保ジャパンに未来なし――と断言できる。