NPB(日本プロ野球)が開幕から30試合以上を消化した。セリーグ優勝の行方は、早くも阪神・読売の上位2チームに絞られた感がある。3位ヤクルトについては、筆者の予想に反して、ここまで善戦しているといえる。だが、問題もある。そのことは後述する。最下位DeNAは外国人の合流がおくれた影響をもろに受け序盤でつまずいた。広島、中日はこんなものだろう。
阪神は筆者の予想以上に勝ち進んでいる。要因は新人佐藤の活躍、外国人選手の好調、内野の層が厚くなったことなどだが、もちまえの豊富な投手陣が順調なこと、失策・盗塁失敗・走塁ミスなどが減少し、チームに安定性が増したことは特筆すべきだろう。
2位の読売は、ほかのチームなら下位に沈むくらいの危機的チーム状況だが、層の厚さで持ちこたえている。序盤にコロナ禍で主力選手が長期の登録抹消、さらに新外国人のテームズがデビュー試合でケガ、しかも重症で今シーズンはほぼ戦力外となる見込みだ。加えて、クローザー2人(デラロサ、ビエイラ)も離脱したかと思えば、今度はエース菅野が肘の故障、キャプテン坂本が指の骨折で離脱した。それでも、なんとかしぶとく持ちこたえて2位をキープしているのは、ひとえに選手層の厚さのおかげだ。
読売は確かにしぶといのだけれど、読売を助けている球団の存在も見逃せない。DeNAは対読売戦、0勝5敗3引分(2021/05/13現在)と勝ちがない。もっとも首位を行く阪神はヤクルトに6勝0敗1引分(同)とカモにしているのだが。
DeNA・三島一輝投手 |
DeNAとヤクルトの弱さには共通点がある。両球団ともクローザーの調子が上がっていないことだ。中盤までリードしていながら、勝ちパターンのセットアッパー、クローザーを投入して、失敗するという負け方で勝星を拾えない。
下位チームの負け方を見るとき、どうしても救援失敗が印象に残り、そこに非難が向かいがちだが、実は構造的弱点がある。救援投手を例に挙げると、DeNAの場合は、三島を切り札に指名して、三島の調子が上がっていなくても彼を起用し続けなければならないという構造を崩せないでいる。ヤクルトの場合は石山だ。読売の場合、クローザー第一候補のデラロサが離脱してビエイラをその任に充てたが、通用しないと見切るや、中川、鍵谷、高梨を状況に応じて使い分けている。このような選手起用が可能なのが、読売の選手層の厚さの象徴なのだ。
選手の使い分けは、投手陣だけではなく、野手にも通じている。読売の場合は、他球団の2倍余りの選手を擁していると換言できる。捕手〈大城、炭谷、他球団ならレギュラーの小林が二軍〉。野手は近年、複数のポジションを守れることが読売のレギュラーの条件になっているので、截然と2選手を並べるのは難しいのだが、一塁〈中島、ウイラー、スモーク、香月〉、二塁〈若林、吉川、廣岡〉、三塁〈岡本、若林、吉川、廣岡〉、遊撃〈坂本、吉川、廣岡〉。外野は左翼〈ウイラー、重信、亀井〉、中堅〈丸、松原〉、右翼〈梶谷、松原、香月〉。つまり、レギュラーが調子を崩せば、調子のよい選手にすぐ代えられる。
DeNA、ヤクルトは、いますぐにでも外国人クローザー候補を複数見つけて入団させなければ、コロナ禍の外国人の入国に係る困難さに鑑み、間に合わない。今シーズンに限らないが、最後を任せられる投手は人材難で、国内トレードは無理だろう。筒香がMLBをクビになってNPBのどの球団に入団するかは不明だが、古巣のDeNAの補強ポイントは筒香ではない。
新戦力の手配は、現場(監督)ではなく、フロント(GM)の仕事だ。読売は確かに金満球団だが、カネがあるからといって何もしなければ、チームは強くならない。DeNA、ヤクルトがシーズン序盤で阪神、読売に白旗を上げるようでは、セリーグは終わったようなものだ。プロ麻雀の対局で、上位2名がトップ争いを繰り広げると、逆転の可能性がない下位の2名は手組をせず、どちらかに振り込むようなことのないよう、初手から降りてしまうことがあるという。DeNA、ヤクルトの選手は勝とうと必死なのだろうが、精神力、必死さだけでは勝てない。