2018年6月29日金曜日

カミカゼ吹く――W杯ロシア大会、日本16強入り

サッカーW杯ロシア大会はグループ・リーグ(以下「GL」と略記)が終了。16強が決まった。各組の成績をおさらいしておこう。

【A組】
(1)ウルグアイ(2)ロシア(3)サウジアラビア(4)エジプト
【B組】
(1)スペイン(2)ポルトガル(3)イラン(4)モロッコ
【C組】
(1)フランス(2)デンマーク(3)ペルー(4)オーストラリア
【D組】
(1)クロアチア(2)アルゼンチン(3)ナイジェリア(4)アイスランド
【E組】
(1)ブラジル(2)スイス(3)セルビア(4)コスタリカ
【F組】
(1)スウェーデン(2)メキシコ(3)韓国(4)ドイツ
【G組】
(1)ベルギー(2)イングランド(3)チュニジア(4)パナマ
【H組】
(1)コロンビア(2)日本(3)セネガル(4)ポーランド

サプライズはドイツ(前大会優勝国)の最下位敗退

ロシア大会GLの結果の特徴は、▽アフリカ勢すべてが敗退したこと、▽前回優勝国のドイツ(F組)がグループ最下位で敗退したこと、▽H組では、FIFAランキング6位のポーランドも最下位で敗退し、同61位の日本が決勝トーナメントに進んだこと――の3点が挙げられるが、F組、H組以外は概ね順当で波乱のロシア大会と表現するのは当たらない。

抜群のクロアチア

参加32カ国中、筆者の印象に残ったチームは、GL敗退組ではモロッコ(B組)、イラン(同)、コスタリカ(E組)の3か国、勝ち上がり組ではなんといってもクロアチア(D組)であった。前者の3か国は、強いフィジカル、鋭いカウンターが持ち味で、90分間、走り続けることができる筆者の理想に近いチーム。見ていて面白い。

後者のクロアチアはフィジカルに組織力を兼ね備え、そのうえ群を抜いたタレントを擁した、ロシア大会最強のチームの一つだと思われる。しかし、最強チームが優勝するとは限らないのがW杯。

日本に吹いたカミカゼ

(一)勝てば官軍は思考停止

日本のGL突破についても簡単に触れておこう。筆者は拙Blogにて、ロシア大会における日本代表への興味を失ったと書いたとおり、試合はみたがコメントする気がおきない。結果として日本が16強入りを果たしたのだから、JFA、広告代理店、テレビ等々は万々歳だろう。とりわけハリルホジッチを電撃解任して西野を代表監督にもってきたJFAは、してやったり、笑いが止まらない状態かもしれない。

サッカーに限らず、勝負事では「勝てば官軍」「結果がすべて」あるいは「強い方が勝つのではなく、勝った方が強い」ともいわれる。このたびのロシア大会の公式記録ではコロンビアと日本が決勝トーナメントに進んだことが記録されるのであって、なぜ勝ったかは不問に付される。日本が初戦、試合開始直後にコロンビアが退場者を出したことや、フェアプレー・ポイントでセネガルより上だったという事実は記録されるが、それは二次資料のようなものだ。ただし筆者は、「勝てば官軍」という思考回路をもっていない。それですべてを片付けるタイプでもない。

(二)写真界では偶然撮れたいい写真を傑作としない

たとえば写真界には、こんないい方がある――偶然撮れた「いい写真」は傑作ではないと。なにげなく押したシャッターだが、撮り終わったあとみたら、光の加減、被写体の形状、色合い…が素晴らしかったということは、素人写真家ならだれでも経験している。だがプロの写真家は、自分が意図したとおりに撮れていなければそれを自己評価しない。プロとアマの限りない距離がそこにある。

(三)闘った選手の評価と日本のサッカーのあり方を考えることは別次元

今回の日本の16強入りを一言で表現するなら、“カミカゼが吹いた”ということ。だから、この結果をもって日本代表がブラジルからロシアまで歩んだ4年間のすべてがよかったことにならない。今日のサッカー日本代表のあり方が容認されるわけでもなければ、JFAの迷走が免罪されることにもならない。

▽興行、マーケティング優先、スポンサーへの忖度が横溢した日本代表のあり方、▽代表監督の人選及びその管理のあり方、▽代表選手の選考、代表試合の組み方…等については大いに問題が残っているし、ロシア大会16強入りをもって解決策が示されたわけではない。

ただ、そのこととロシア大会で闘った選手の評価とは別次元の話。大迫、乾、柴崎、長友、原口、香川はチームによく貢献した。強豪セネガルに引き分けたことが、今大会16強入りの素因以外のなにものでもなかろう。