2018年6月6日水曜日

盗まれたW杯出場メンバー

サッカー日本代表は8日後に開催されるW杯ロシア大会に向け、オーストリアで合宿中。メディアからは相変わらず、華々しい美辞麗句で飾られた近況が送られてくる。ベスト16は間違いないような雰囲気である。

アジア最終予選得点者――本田は初戦の1得点のみ

そんないま、W杯メンバー選出について云々したところで始まらないことはわかりきっているものの、やはり割り切れなさが残る。W杯アジア最終予選の難しい試合で活躍した選手たちの評価についてである。W杯アジア最終予選の得点者をみてみよう。

2016/09/01:UAE戦(1-2):本田
09/06:タイ戦(2-0):原口・浅野
10/06:イラク戦(2-0):原口・山口
10/11:オーストラリア戦(1-1):原口
11/15:サウジアラビア戦(2-0):清武、原口
2017/3/24:UAE戦(2-0):久保、今野
3/28:タイ戦(4-0):香川、岡崎、久保、吉田
6/14:イラク戦(1-1):大迫
8/31:オーストラリア戦(2-0):浅野、井手口
9/05:サウジアラビア戦(0-1)

得点ランキングとしては、原口4、浅野2、久保2。以下、得点1が、本田・山口・清武・井手口・大迫・香川・吉田・岡崎で並ぶ。「得点王」の原口はW杯メンバーに選ばれたが、2得点を上げた浅野、久保は落選した。「ビッグ3」と呼ばれる本田、岡崎、香川は1点のみ。本田は初戦のUAE戦が最初にして最後の得点で終わっている。香川、岡崎はホームのタイ戦で1得点したにとどまっている。得点だけがチームへの貢献ではないとはいえ、合点がいかない。

西野の非論理的選考基準


次なる疑問は、西野監督がイングランド・プレミア、ブンデスリーガ1部(ドイツ)、リーガ・エスパニョール・プリメーラ(スペイン)及びJ1に所属している選手を優遇している点。ベルギー、ポルトガル、オランダには目もくれないが、なぜか、メキシコ・リーグに所属する本田にだけはその実績を配慮している。

原口はブンデスリーガ2部のフォルトゥナ・デュッセルドルフ所属だけれど、まさか、アジア予選の国内得点王をW杯メンバーに選ばないわけにはいかない。

さて、浅野の扱いは難しい。彼はアジア予選で2得点を上げ、イングランド・プレミアのアーセナル所属だが、手続きの関係等でブンデスリーグ2部のハノーファーにレンタル移籍されている。

他の攻撃的代表候補としては、本田、井手口、香川、岡崎が予選1得点で横並び。井手口はイングランドのリーズ・ユナイテッドAFC(プレミアの下のチャンピオンズ・リーグ)へ完全移籍したが、イギリスの労働ビザ発行基準を満たしていないため、スペインのクルトゥラル・レオネサ(スペインのセグンダ・ディビジョン=プリメーラの下)へレンタル移籍している。

浅野、井手口は両選手ともに移籍に失敗し、レンタル先で出場機会を得ていない。ここで彼らの落選理由としては、「所属先で実績を上げていない、試合に出ていない」が適用されたと思われる。

西野のロシアW杯メンバー選出の基準については、ある選手には「所属リーグの格」が適用され、ある選手には「予選の実績」が適用され、ある選手には「所属クラブでの実績」が適用される。

その一方、落選理由については、「ポリバレントではない(意味不明)」が適用され、ある選手には「所属クラブで試合に出ていない」が適用され、ある選手には「所属リーグの格が下」が適用される。つまり、選出理由及び落選理由に論理性、一貫性がないのである。たとえば、Jリーグとポルトガル・リーグのどちらが「格上」なのかと問われれば、筆者は「ポルトガル」だと確言するが、西野の場合はあやふやなまま。

世界的名選手のW杯デビューはきわめて若い

それだけではない。過去、W杯でブレークし世界的名選手に成り上がった者はいくらでもいるが、いずれも若い。ペレ(ブラジル)17才、マラドーナ(アルゼンチン)21才、メッシ(同)19才、C・ロナウド(ポルトガル)19才…と日本ではユース扱いの年齢で本大会に出場している。W杯のような短期戦の場合、若い力のブレークによって、チームもその選手自身も勢いを得て、好成績を上げることが多い。

ベテラン、経験者重視の失敗事例

その反対に前大会のメンバーがそのまま4年後に持ち越された場合、惨敗するケースも多い。1998年自国開催で優勝したフランス代表だが、2002年(日韓大会)に代表選手をあまり入れ替えず、予選敗退した。また、日本も2002年に自国開催W杯でベスト16の成績を上げたが、4年後ドイツ大会、そのメンバーの入れ替えを控えて予選敗退した。また、日本代表は、2010年南アフリカ大会(ベスト16)から、2014年ブラジル大会(予選敗退)でも同じ過ちを繰り返した。

このたびは、南アフリカ(2010)からロシア(2018)へ――なんと8年のタイムスリップである。ベテラン、実績重視の代表選考にして新星は皆無(年功序列)。ブラジルから4年待った甲斐なし。なんとも残念な2018年W杯開催まで残り8日、日本の初戦(コロンビア)まで残り13日になってしまった。