2013年9月5日木曜日

2020年オリンピック東京招致に反対する

2020年夏のオリンピック等(以下「五輪等」と略記)の東京招致を進める東京招致委員会の暴走が止まらない。もちろん東京招致委員会の背後には、東京開催によって大儲けが期待できる安倍政権、大資本、役所、東京都知事、大マスコミが控えている。大マスコミが五輪等開催の最大の受益者の一つであるため、五輪等招致の是非に係る国民的議論が封殺されてしまっている。大マスコミによって、五輪等招致が日本国民の総意であるかのような空気が、いつのまにかつくられてしまっている。その顕著な事例が、皇室の政治利用の問題だろう。

アルゼンチンで開かれる、2020年夏の五輪等開催都市を決めるIOC総会に高円宮妃の久子さま出席される。宮内庁の風岡長官は総理大臣官邸などから出席の要請があったとしたうえで、「招致活動とみられるのではないかとの懸念も持ったが、やむをえないと判断したもので苦渋の決断だった。天皇、皇后両陛下も案じられているのではないかと拝察した」と述べた。これを受けた菅官房長官は、閣議のあとの記者会見で、高円宮妃の久子さまが、2020年夏の五輪等開催都市を決めるIOC=国際オリンピック委員会の総会に出席されることについて、皇室の政治利用にはあたらないという認識を示した。

五輪招致活動は政治的テーマ。その理由は、(1)国内において、五輪等開催を望む勢力と望まない勢力が対立していること、(2)招致活動は国際間の利害の対立そのものであること――である。だが先述のとおり、(1)については、マスコミが、国民的議論について報道しないため、大衆が招致における対立の図式を理解することを阻んでいる。

この時期に高円宮妃の久子さまがIOC総会に出席されることは、招致活動=政治活動の一環であることは明らか。であるから、当然、政治活動として皇室が利用されたことになる。

さて、筆者は東京五輪等招致に大反対である。その理由は以下のとおり。
  1. 東京五輪等招致は、被災地復興を推進するかのように報じられているが、筆者は五輪等開催がそれを阻害すると考えるから
  2. 日本の最重要課題は、五輪等開催ではなく、福島第一原発事故の一日も早い収束であると考えるから
  3. 日本国における地震活動の活発化、気象変動等の災害リスクが五輪等開催まで改善する保証はまったくないと考えるから
  4. スポーツ団体における暴力問題、セクハラ問題の多発で明らかなように、日本のスポーツ風土の歪みが今後も是正される見込みがないと考えるから。換言すれば、日本のスポーツ界には、スポーツの祭典を開催する資格がない。

1、2も根本は同じである。繰り返すが、五輪等開催で利益を得るのは大都市東京を拠点とする大資本、大マスコミとそれに紐付けられた政治家・公務員であって、3.11の被災者ではない。福島第一原発事故による汚染水問題など、解決のめどが立たない問題が山積しているいま、「フクシマ」が「オリンピック」に優先すると考えることのほうが自然であり、日本国の総資源を「フクシマ」の収束に向けて集中しなければならない。このことに議論の余地はまったくない。

東京で五輪等が開催され、ホームの利を生かして日本人アスリートがメダルを多数獲得したとしても、そのことが被災地の実質的な復興推進にはつながらない。被災地からみれば、東京五輪等は遠い彼方の「夢物語」の一つに過ぎない。

3については、南海トラフ大地震である。政府の地震調査委員会が発表した「今後数10年以内にM8以上の南海トラフ大地震がやってくる確率」は、▽今後50年以内に90%以上、▽今後30年以内に60~70%、▽今後20年以内に40~50%、▽今後10年以内に20%程度――となっている。2020年五輪開催は、10年以内であるから、20%程度の確率でM8以上の大地震が起こることになるかもしれない。

それだけではない。3.11の大地震・大津波の震源である東北地方太平洋沖海底、すなわち、太平洋プレートと北アメリカプレートの境界域(日本海溝付近)における海溝の不安定さは、引き続き、同地域において大規模地震を引き起こす可能性を残している。

4については、当コラムで何度も書いたことであるが、繰り返せば、日本帝国軍隊の悪しき伝統が戦後、スポーツ界において、生き続けたということだろう。とりわけ、学生スポーツ(体育会)及び日本の武道をルーツとするスポーツ団体がその巣窟であった。さらに、高校野球に代表される、スポーツ有名校の存在も無視できない。スポーツを学校の経営戦略とすることによる弊害が勝利優先主義であり、そのため学校をあげて暴力を容認する傾向が是正されない。

以上を根拠として、筆者は、2020年オリンピック等の東京招致に反対する。