2014年6月22日日曜日

閉幕しない小保方劇場――小保方が現場復帰?

「STAP細胞」問題で小保方が論文の取下げを表明。あとは理研の処分発表を待つばかりと思われたが、ここにきて問題はより複雑化してきているようだ。

状況証拠は固まった?

いわゆる「STAP細胞」の作製実験に係る「不正の証明」としては、6月7日、理研の遠藤高帆・上級研究員が、小保方が作製に成功したとした「STAP細胞」は別の2種類のマウスの細胞だったという独自の解析結果の公表から開始された。

6月12日、理研改革委員会が、この問題は科学史における、世界の三大不正事件の一つに数えられるとしたたうえで、▽小保方に厳しい処分をくだすべきこと、▽笹井ら関係者にも厳正処分をくだすべきこと、▽理研のガバナンス強化、▽この問題の現場である理研発再生科学総合研究センターの解体、▽小保方の検証実験参加――を含めた提言をまとめた。理研改革委提言が奇妙なのは、小保方の厳正処分を求めている一方で、小保方の検証実験参加を促している点だ。このことは後述する。

6月16日、小保方を指導した若山照彦が同実験に使用されたマウスの第三者機関による鑑定結果を公表し、若山が小保方に渡したマウスと違うマウスが小保方によって「STAP細胞」の作製実験に使われたことを明かした。若山は小保方による「STAP細胞」の存在を否定した。

さらに同日、理研内の小保方の実験室の冷蔵庫からES細胞の容器が見つかったという報道があった。このES細胞と小保方が作製した「STAP細胞」の特徴が一致したという分析結果が理研内の研究者から公表された。

厳正処分といいながら検証実験参加とは?

ここまでで、もはや小保方が「STAP細胞」を実験段階で捏造したという不正に係る状況証拠は出そろったものと筆者には思えた。理研改革委員の提言が小保方の検証実験参加を含めたのは、「STAP細胞」は小保方の作為による捏造であることを前提とし、そのうえで、小保方が検証実験に参加してその作製に失敗したことをもって、小保方「単独犯」を固める理研に対するアシスト的提言だと考えていた。つまり、理研幹部(理事長を筆頭とする)に非が及ばないよう、この問題を小保方の次元でせきとめるためだ。

TVの警察ドラマでよく耳にする「泳がせ捜査」に近い。逮捕するに足る確実な証拠が不足している場合、犯人を自由にさせて監視し、犯人が証拠隠滅等の行動をとった現場をおさえる手法だ。小保方の捏造を確実なものとする最良の手段は、小保方が再度作製実験にトライし、その結果、それが「STAP細胞」なのかそうでないのかを判定するという方法ならば、だれもが納得する。小保方ができなければ、今回の騒動の責任はすべて小保方に帰する。理事長もセンター長も小保方の上司もすべて無罪放免という筋書きだ。反対に作製に成功すれば(その可能性はゼロだと筆者は思うが)、その成果は理研に帰するというわけだ。どちらに転んでも理研にマイナスはない。

それを裏づけるように、6月19日、野依理研理事長も小保方の検証実験参加を希望する旨の談話を発表している。野依は、改革委員会のきわめて建設的諸々の提言は反故にするつもりのようだが、唯一、小保方の検証実験復帰の事項だけは賛成というわけだ。そもそも理研改革委員会は権限をもたない。いわば、自由な外野席の声すぎない。提言を受けた野依理事長も、同提言に沿った改革に着手しようという意思はまったく表示していない。ところが、同提言のうち、小保方の検証実験参加の事項にだけは、奇妙に一致している。

小保方復帰は政府・自民党の強力な意向か

それだけではない。政府(下村文科大臣発言)も17日、「小保方さん自身が(「STAP細胞」の)あることを自ら証明しなければ・・・」という発言をした。すなわち、政府、改革委、野依理研理事長の三者が、小保方の検証実験参加については一致し、三者あいまって、小保方の復帰を強力に支持している。

下村文科相の意向を受け、野依理事長は、小保方を不正者と判定したうえで、不正者を理研に復帰させるつもりのようだ。トップが規程を無視して、不正者を現場復帰させる・・・これはどういうことなのだろうか。野依理事長は、理研の定めた規程と不正者の復帰という矛盾をどう整理するつもりなのか。超法規的措置を行うのか。

はたして小保方は理研と政府に追い詰められ、きわめてリスクの高い「STAP細胞」作製という検証実験の罠に乗るのか乗らないのか。それとも、法廷闘争に持ち込むのか。

理研が小保方に対してどのような処分をいつ、くだすのかが注目される。もちろん、処分に対して、小保方がどのような反応をするのか――大いに気になるところだ。