2014年8月3日日曜日

イスラエルの無差別殺戮は許せない

イスラエルによるガザ攻撃が開始され、この2日でひと月(26日目)近くたった。この攻撃は、イスラエルによる同地区のパレスチナ人の大量虐殺であって、戦闘や戦争ではない。双方の戦力はあまりにも非対称的である。ガザはイスラエルが開発するハイテク装備と最新兵器の実験場と化しているという。

イスラエルが同地区を攻撃した理由は明らかで、先の選挙によって成立した同地区の自治政府にハマスの勢力が合流したからだ。そのことを機に、イスラエルは謀略を通じて侵攻の火ぶたを切った。26日間のイスラエルの殺戮行為により、ガザでのパレスチナ人の死者は1700人を超え、負傷者は9000人以上になったらしい。その中には、民間人(子供、女性)が多く含まれている。

近年の中東の混乱はすべからく、イスラエル(アメリカ)による、アラブ弱体化の帰結である。20世紀末、それまで安定していた中東において、アメリカは世紀を挟んだ二度のイラク戦争により、イラク=フセイン政権を打倒し、イラクを内戦状態に追い込んだ。

エジプトではイスラム同胞団の新政権を軍部クーデターにより打倒し、親米(親イスラエル)政権を樹立した。相前後して、シリアのアサド政権(シーア派)に対して、イスラム教スンニ派過激勢力を使って内戦状態に追い込み、いま現在のシリアも内戦状態にある。

ヨルダンはすでに、親米(親イスラエル)国家となっていて、脅威ではない。アメリカとイスラエルは、イスラエルに好意的でない周囲のアラブ諸国をすべからく、内戦・内乱状態に陥れ、その弱体化に成功している。そのうえで、ガザ地区パレスチナ人の大量殺戮に踏み切った。イスラエルの脅威となる周辺国は内乱状態もしくは親米(親イスラエル)国家となっているから、イスラエルの安全が損なわることはないという読みである。

イスラエルによる空爆と民間人無差別虐殺は、イスラエルによる、(ナオミ・クラインがその著書名とした)『ショック・ドクトリン』と呼ばれる支配方策の実践である。激しい空爆と地上戦における無差別殺人を受けた側は、恐怖によって頭の中が真っ白になり、軍事作戦終了後、抵抗や反抗の意思を喪失してしまう。アジア太平洋戦争末期、アメリカは日本中に激しい空爆を続け、そのことにより、焦土に残された日本人は戦争終了後、アメリカに対し抵抗する意思を無くした。

1970~80年代、チリ、ブラジル等の南米南部地域の軍事政権が国内の社会主義勢力や市民運動家に対して行ったのは、空爆・砲撃等の軍事行動ではなく、拉致、誘拐、拷問(電気ショック等)及び無差別処刑であった。おそらくガザ地区では、軍事作戦と並行して、反イスラエル活動を行ってきたパレスチナ人活動家に対し、報道されていないが、前出のような非人道的弾圧が繰り返されているに違いない。

筆者は昨年(2013年)12月、イスラエルに観光旅行に行った。もちろん、ガザ地区を訪れたわけではないが、観光ガイド氏は、イスラエル国内のユダヤ人とアラブ人は、互いに共存の道を模索していると説明していた。

当時、筆者が訪れた観光地はみな平穏で、今の状態を想像することはできなかった。ガザの悲劇をよそに、エルサレム、テルアビブ、ファイファといった主要都市は平穏なのかもしれないが、イスラエル国内各所のパレスチナ人がガザの虐殺に憤って決起しないとも限らない。情勢は予断を許さない。
子供たちの殺戮を許すことはできない(イスラエル・ナザレ市内/筆者撮影)