2014年10月21日火曜日

小渕優子は原発推進派によって「消された」のか

小渕優子経済産業相と松島みどり法相が20日、閣僚を辞任した。小渕優子は不適切な政治資金問題、松島みどりは地元選挙区で「うちわ」を配布した問題の責任を取った。松島の「うちわ問題」はさておき、小渕優子の政治資金問題については、不自然な印象が拭えない。

第二次安倍内閣が発足したのが9月3日。その後、9月18日に『赤旗新聞』が、9月23日に『日刊ゲンダイ』が、そして、10月16日発売の『週刊新潮(10月23日号)』が小渕優子のスキャンダルを報じた。以降、同誌の発刊を契機として、日本の全メディアが小渕優子の政治資金問題をスキャンダルとして大々的に一斉報道し始めた。各メディアの論調はそろって、“政治とカネ”という醜聞仕立てであった。

同誌の内容を大雑把にいうと、小渕優子関連の2つの政治団体が平成22年と23年、選挙区の後援会員らのために「観劇会」を東京の劇場で開催した際、劇場側に支払った費用が、参加した後援会員らから集めた会費を2年とも約1300万円上回っていることが15日、両団体の政治資金収支報告書からわかったというもの。

だが、小渕優子の2つの政治団体(小淵優子後援会と自由民主党群馬県ふるさと振興支部)の収支報告書」の公表日付は不明だが、少なくとも、『赤旗新聞』掲載の直前ではない。群馬県のホームページに掲載された政治資金収支報告書の最新の公表日は、平成25年11月25日であって、それ以降の更新はない。総務省のホームページの定期公表も平成25年11月29日が最後(平成24年分)になっている。 

いったいなぜ、いまになって小渕優子の政治資金収支報告書が問題視されたのだろうか。小渕優子が経産相に就任した本年9月3日から、『週刊新潮』がスキャンダルを報じた10月15日のあいだにいったい、なにがあったのだろうか。

日本のメディアは一切報じていないが、『ロイター』は10月17日に小渕優子経産相(当時)の動きとして、以下のとおり伝えていた。

[東京 17日 ロイター] - 小渕優子経済産業相は17日夕、電気事業連合会の八木誠会長(関西電力)と会い、老朽原子炉7基の廃炉判断を早期に示すよう要請した。「来年4月から7月に運転延長を申請する必要がある炉7基の取り扱いの考え方を早期に示していただきたい」と述べた。
八木会長は小渕経産相との会談後、記者団に対し、「取り扱いは各社の経営判断。それぞれの会社で検討していただきたい」と述べた。判断を示す期限についての質問に八木会長は「できるだけ早く示すようにしたい」と答えた。
対象の7基は、古い順に日本原子力発電の敦賀1号、関電美浜1・2号、中国電力島根1号、関電高浜1号、九州電力玄海1号、高浜2号。
八木氏は関電の対象4基について「検討を進めているが、現時点で決めたものはない」と話した。同氏は、今後、廃炉の際の財務面への影響を緩和するために、国に会計制度の見直しを求めたいとの考えを示した。
原発の運転期間に関する現行ルールは、運転期間を原則40年に制限しながらも、原子力規制委員会の認可を条件に20年間を上限に1回だけ運転延長が認められる。
すでに40年超の4基を含め、2016年7月時点で40年を超える7基を運転延長させるには、来年4月から7月までに規制委に申請する必要がある。その際、事業者は原子炉の劣化状況などを調べる「特別点検」を実施し、規制委の認可を得る必要がある。
小渕氏との会談に先立って行われて電事連の定例会見で八木氏は、特別点検には「数カ月はかかる」と述べた。(浜田健太郎)

また、10月21日の『東京新聞(朝刊)』は署名入り記事で以下のとおり報じている。

電力政策停滞も 再生エネ、原発…経産相の課題山積

小渕優子経済産業相が辞任し、後任に宮沢洋一氏が就く。(略)経産相が抱えるエネルギー政策の課題は多い。中でも太陽光発電を中心とする再生可能エネルギーを増やす議論は小渕氏が重視してようやく動きだした感があり、経産相の交代で政策が停滞する懸念がある。(略)経産省、電力会社ともに原発の再稼働を重視し、再生エネルギーを増やす対策を怠っていたが、9月3日に就任した小渕氏は電力各社の判断が妥当かどうかを専門家に検証してもらう部会を設置。背景には「電力会社の説明は本当なのかと疑った小渕氏の鶴の一声があった」(経産省関係者)という。中長期的な再生エネの拡大策も含めて議論は始まったばかりだが、経産相の交代で腰が折られる恐れもある。(吉田通夫)

小渕優子の後任には、宮澤洋一が決まったが、宮澤洋一はWikipediaによると、東京電力株を大量に保有しているというし、前出の『東京新聞』も、原発再稼働推進派として報じている。

『ロイター』及び『東京新聞』の報道からうかがえるのは、小渕優子は経産相に就任してから、原発エネルギー問題について、何かをしようとしたことだけは確かである。小渕優子は少なくとも、原発再稼働を検証抜きに推進するような政治家ではなかった。

安倍首相は、平成26年10月16日(現地時間)、第10回アジア欧州会合(ASEM)首脳会合等に出席するためイタリアを訪問し17日まで滞在した。つまり安倍が日本にいない間に、『週刊新潮』の小渕バッシング報道が始まり、その勢いは日本の全メディアによって燎原の火のごとく日本中に燃え広がったのである。この騒ぎを異国で知った安倍は急きょ予定を変更し帰国、事態収拾にあたったようだ。

つまり、小渕を任命した安部が不在の間に小渕バッシングは仕組まれ、安倍は小渕の首を切るために急きょ帰国したといえる。このことが意味するのは、小渕優子のスキャンダルに安倍は関与していないということ。安部の思惑とは異なるところで小渕優子の解任は準備され、そして実行されたものと推定できる。

総理大臣である安部を無視して大臣の首を挿げ替えることができるのはだれなのか。もちろんそれができるのは(小渕優子を経産省から追い出すことができるのは)、官・産の原発推進派であり、日本のマスメディアが後押しした結果にほかならない。

今回の小渕優子スキャンダルの発覚は、安部にまったくメリットがないわけではない。第二次安部内閣には、江頭聡徳防衛相、塩崎恭久厚労相、西川公也農水相の3つのスキャンダルがまだ控えている。さらにヘイトスピーチで知られる在特会との関係を疑われる閣僚が(女性閣僚を含めて)数人いる。同会との関係は、国際的スキャンダルに発展しかねない。

ここで、女性2大臣を切れば、世間も納得し、閣僚スキャンダル・ドミノの類焼を免れる目も出てくる。世間が注目する「女性」をあくまでも利用し尽くそうという魂胆である。国民が関心を失えば、野党の追及も迫力が薄れる。小渕優子だけではインパクトが低いので、ついでに、朝日新聞出身の松島みどりも切っておこうというわけか。残念ながら、日本国民は、権力の陰謀にナイーブ(うぶ)であり、メディアの扇動に乗りやすい。