2015年9月9日水曜日

戦火にある国の代表に勝って、なにが嬉しい

2018年ロシアW杯アジア2次予選
▽E組第3戦 アフガニスタン0―日本6
▽9月8日、イラン・テヘラン アザディスタジアム

シリア、アフガニスタン、カンボジアと同組という悲劇

サッカー日本代表がアフガニスタンと中立国テヘラン(アフガニスタンのホーム試合)で戦い、6-0で勝利した。日本と同組のこのアフガニスタン及びいずれ対戦するシリアは戦乱に明け暮れる国家。国情を鑑みるならば、代表チームを組織することさえ困難であろう。いわんや強化はとんでもない。同情すべき相手に圧勝したからといって喜べる状況ではない。いままさに、シリアでは難民が西欧を目指して流出し、その過程で多くの人命が不条理な死を遂げている。日本と同組にシリア、アフガニスタンが入ってしまったのは籤の偶然とはいえ、やりきれない。

日本代表選手・監督の年収が国家予算の3%弱?

ちなみにアフガニスタンの国家予算のコア予算(同国政府の国庫を通る資金の流れ。援助均等を含まない)は26憶2,543万ドル(約3,413億円。1ドル=130円で換算)。先に日本(埼玉スタジアム)と対戦したカンボジアは世界の最貧国の一つといわれる。20世紀中葉~末期にかけて戦争に巻き込まれ、国内は疲弊した。同国の2015年度総予算は約39億ドル(約5,070億円。同率換算)。

日本代表選手及び代表監督等の年俸はいくらになるかわからないが、ネット情報によると、本田圭佑が約3億円、香川真司が3.4億円、長友佑都が1.7億円、ハリルホジッチ監督が2.7億円・・・年収となると、CM契約料等が加算され、各選手とも倍以上になるらしい。 ざっくり、日本代表選手25選手及びハリルホジッチ監督の一人当たり総年収を3億円と仮定すると、日本チームを構成する選手・監督の年収は78億円程度と推定できる。この額はアフガニスタンのコア予算の2.3%、カンボジアの総国家予算の1.5%程度に当たる。たかだか日本代表のサッカーチームを構成する選手・監督の年収が、対戦相手国の国家予算の1.5%~3%弱に達するという驚愕の事実をどう受け止めたらよいのだろうか。

戦火にある国の代表にリスペクトを―日本のメディアとサポーターの頭の構造は大丈夫?

日本代表は、同組のシンガポールを除いた3チームに比べて、恵まれすぎた環境にある。選手は西欧及び日本という平和な国家でサッカーに専心でき、前出のとおり高い報酬を受け、なに不自由のない生活をしている。そんな日本代表が、アジアの戦乱に明け暮れている(た)国の代表と試合をして、辛勝だ、圧勝だ、と騒いでいる。そんなマスメディア、代表サポーターの頭の構造を心配してしまう。

日本代表選手がカンボジア、アフガニスタンと対戦して、その結果について不調、復調を論ずるのは愚かな批評的姿勢だ。香川、本田、岡崎らの攻撃陣がよい得点をしたとか、守備陣が完封したとか判断すべきでない。勝利して当たり前の相手。得点して当たり前の相手。

サッカーは何があるかわからない、といわれるが、戦火にある国、貧困にあえぐ国家代表との試合は、対等な条件下の試合だと考えてはいけない。心と身体に深い傷を負った相手(人間)との戦いだと心得るべきだ。日本代表はどのように試合をしたらいいのか。それこそ、粛々とサッカーをすればいい。勝って奢らず、勝った相手国の国情に心を寄せ、そんな中でチームをつくり、スタジアムに現れた相手を心底リスペクトすればよい。

シリア戦の結果を日本のメディアはどのように伝えるつもりか

アフガニスタン戦では、得点した日本選手が派手なガッツポーズをしなかったことはせめてもの救いであった。しかるに今朝、日本の新聞やテレビの報道を眺めてみると、日本代表の復活だとか復調だとか、圧勝とやらの試合結果が“ど派手”に伝えられるばかり。日本のスポーツメディアをこれほど、愚かだと感じた日はない。日本のスポーツメディアは狂っている。国家がいままさに溶解しつつあるシリアとの試合結果を、彼らはどう受け止め、どう報道するつもりだろうか。