2017年6月14日水曜日

日本代表、W杯アジア地区代表の資格なし

<W杯アジア最終予選:日本1-1イラク>◇B組◇13日◇イラン・PASスタジアム

ハリルの迷采配で日本苦境に
サッカー日本代表(FIFAランク45位)がイラク(同120位)と1-1で引き分けた。この試合はイラクのホームゲームであるが、戦乱下にある国情を考慮して、中立地イランの首都・テヘランでの開催となった。

試合は気温37度、湿度20%という厳しい環境の中での消耗戦となり、日本は前半8分にFW大迫(27=ケルン)が1点を決めたが、後半27分、ゴール前の混戦の中、DF吉田とGK川島の味方同士ぶつかり合い、イラクに同点弾を決められた。

炎天下、気温37度の下でサッカーは可能か

日本とイラクが中立国で試合をすることに異論があろうはずがない。だが、炎天下、気温37度の下でやる必要があるのだろうか。日没後でないのはなぜか。イランは電力不足の国なのだろうか。筆者は2009年にイランへ観光に行ったが、夜間、電力制限はなかったし、名所はライトアップされていた。イランが電力不足の状態にあるとは思わなかったし、そのような話は今も昔も聞いたことがない。試合開始時間の設定はテロ発生前からだから、テロ警戒のためでもない。

仮にも、日本のTV中継の関係(日本時間午後9時半というゴールデンタイム)上、日没前の現地時間4時55分キックオフならば、両国の選手及びサッカーファンにとって最悪だ。選手が最上のパフォーマンスを可能とする環境を提供するのが、FIFAやAFCのつとめであり、できうる限り最上の環境下でプレーできるよう、努力するのがこうした協会の義務だ。選手がよいパフォーマンスを発揮しやすくし、そしてそれをファンが享受できるために。

かりにも、酷暑、猛暑のため日本人選手が力を出しきれずに日本チームが負けてW杯にいけなくなったら、広告代理店もTV局も最良のコンテンツの一つを失うのではないのか。

サッカー選手は代理店・TV局の奴隷ではない

そればかりではない。炎天下では、選手に思わぬ事故や故障が発生しやすくなる。水分不足から筋肉系を痛めやすくなるし、注意力散漫から、選手同士の衝突や、受け身が取れなくなっての頭部打撲なども起こりがちだ。今回、故障者が多く出たが、選手寿命に関わるものでなく幸いだった。炎天下のため、選手生命にかかわる事故が発生したとしたら、代理店、TV局はどのような責任をとるというのか。アスリートはローマ時代の剣闘士ではない。代理店やTV局の奴隷ではない。

日本はアジアの代表になる資格がない

今月、日本はホームの親善試合(6月7日)でシリアと引き分け、中立国開催のW杯予選でイラクと引き分けに終わった。日本の対戦国、シリア、イラクは、政情不安どころではない、戦争状態にある。そんな国難にある相手に対し、日本はそのどちらにも勝てなかった。

いまから70年以上前、アジア太平洋戦争の最中にあった日本は、国中が米軍の空襲で焦土と化していた。いまのシリア、イラクも似たようなものだ。テロが相次ぐ分、そのときの日本よりも厳しい状態かもしれない。そのような情況で日本はスポーツの国際試合ができただろうか。

今日、平和な国・日本、その中にあって日本代表チームは協会の潤沢な資金援助を受け、国民、メディアから絶大な応援を受けている。何の不自由なくサッカーができる、世界で最も恵まれたナショナルチームの一つかもしれない。にもかかわらず、シリア、イラクに勝てない。

いまのサッカー日本代表はアジア代表として、W杯に行く資格がない。シリア、イラクの健闘があるとはいえ、スポーツの常識からいえば、恵まれた日本は国難にある両国に勝って当たり前。いや勝たなければいけない。「日本代表、情けない」の一言に尽きる。

シリア戦のアンカーをやめてダブルボランチに戻す

さて、試合内容に戻ろう。まずメンバー。

GK川島永嗣

DF昌子源
DF長友佑都
DF酒井宏樹⇒酒井高徳(後半31分)
DF吉田麻也

MF遠藤航
MF井手口陽介⇒今野泰幸(後半17分)

MF原口元気⇒倉田秋(後半25分) 0
FW本田圭佑
FW久保裕也

FW大迫勇也

この試合、シリア戦で採用したワンボランチ(アンカー)をやめて、4-2-3-1のダブルボランチに戻した。攻撃的MF(トップ下)には、シリア戦で故障した香川に代えて原口が入り、ワントップに大迫、右に本田が先発復帰し、左に久保が入るというこれまでにない形。

先制しながら日本は追い込まれる展開に

システム変更の成果ではないが、前半8分、コーナーキックから、日本が先取点を奪った。アウエーで喉から手が出るほど欲しい先取点が取れたのだから、勝点3が見えた、とだれもが思ったはず。まずは幸先の良いスタートを切った。ところが、ハリル采配の混乱から、試合はもつれた。

  • 後半17分、頭を強打したMF井手口のため1枚目の交代カード(今野を投入)を切った。この交代はいたしかたないが、これが混乱の前触れともいえるものだったとは
  • 後半25分、FW原口に代え、MF倉田を投入。結果的には、この交代で日本は勝ち越し点を奪う可能性をなくした。厳しい気象条件下、二人目の交代は早すぎた
  • 後半27分、DF陣の混乱から同点とされる
  • 後半31分、酒井宏が倒れ、担架で退場


ここで最後のカード(3人目の交代枠)として、最終ラインにDF酒井高を投入せざるを得なくなった。同点にされた後15分以上を残して、攻撃の切り札、FW乾、浅野を送り込めなくなった。しかもこのときすでに、FW久保は足を引きずるダメージを受けていて、試合に参加できない状態だった。久保は交代枠がなくなった以上、やむなくピッチに残らざるを得なくなった。同点にされた後の日本は、実質10人で戦わざるを得なくなった。

混沌としてきた日本の予選通過

かくして、日本は勝点3をとるべき試合で勝点2を失った。結果、日本は勝点17でB組トップを維持したものの、残り予選2試合(オーストラリア=勝点16、サウジアラビア=勝点16)を厳しい条件で戦わざるを得なくなった。オーストラリア戦はホームだが、日本はこれまでW杯予選で勝ったことがない。サウジアラビアとの試合は9月のアウエー戦となり、イラク戦のような中立国でないうえ、気候はイランよりも厳しいといわれている。オーストラリアは日本以外にタイと、サウジアラビアは同じくUAEとの試合を残しているが、どちらも勝点3が見込める相手だ。

オーストラリアが日本に勝てば、タイに勝つ可能性が高いので、勝点は16+6で最終22となる。日本と引分に終わると、オーストラリアは16+4で最終20となる。

日本はオーストラリアに負けた場合は、勝点17で最終サウジアラビア戦に臨む。日本がサウジとの最終戦に勝てば勝点20。ところがサウジアラビアはUAEに勝っている可能性が高いので、日本戦を前にして勝点19だから、サウジは日本と引分でOKだが、負けると日本のほうが2位になる。サウジが日本に勝つと勝点23となり、一気に首位に躍り出る。その場合、日本は17にとどまるのでオーストラリアに次いで3位となってしまう。

日本は、オーストラリアと引き分けた場合、17+1=18でサウジアラビア戦に臨むことになる。サウジはその時点で前出のとおり勝点19で日本戦に臨むため、サウジは日本に引分以上で2位以上通過できる。オーストラリアは前出のとおり20だ。もちろん、タイ、UAEが両国に負けると決まったわけではないから、グループBの上位2カ国がどこになるか混沌としてきた。

日本は次戦オーストラリアから勝点3を上げないと、最終サウジアラビア戦でひっくり返される可能性が高まる。かくして、日本代表のW杯予選通過は予断を許さなくなった。