2019年2月1日金曜日

決勝は日本とカタール 優勝候補イラン、ミサイル不発で自滅

アジア杯2019・UAE大会、決勝は日本とカタールの組合せになった。準決勝、日本はイランを3-0で、カタールは開催国UAEを4-0とくだした。2試合とも大差の結果となった。

荒れた準決勝2試合

準決勝2試合が大差の結果に終わったことに加え、試合終了間際、前者ではイラン選手が日本選手を突き飛ばしたことから両チームが小競り合いを演じ、後者では、負けがほぼ確定したUAEの選手がカタールの選手を肘打ちしてレッドカードで退場と、準決勝2試合とも混乱した幕切れとなった。

敗色濃厚となったチームがファウル等の非紳士的プレーを行うのはアジアにおける大会ではしばしば起こる。本大会では、開催国UAEがカタールと政治的対立関係にあることから、スタジアムはキックオフ前から異様な雰囲気に包まれていた。UAEが失点したシーン直後にUAEサポーターがカタール選手にモノを投げ込み、その後もUAEサポーターの見苦しい行為がやまず、なんとも後味の悪い試合となった。

イランは自滅で日本に大差の敗北

アジア最強と謳われたイランだが、日本に大差で敗れた。この結果は筆者にとって、意外だった。本大会、順風満帆で勝ち上がってきたイラン、守備も鉄壁に近く、与えた得点はなし。一方の日本は予選リーグから薄氷を踏む勝利で勝ち上がったばかりか、準々決勝は格下相手のベトナムにてこずり1-0の辛勝だった。

イランの敗因は、日本を舐めてかかったこと。前半、そして後半開始から10分までのあいだ、イランは日本を圧倒していた。ロングボールの攻撃は得点に結びつかなかったが、フィジカルで日本を圧倒し、イランの得点は時間の問題かと思われた。

イランDFの勘違い

イランにとって悪夢が訪れたのは56分、日本がイラン陣内ペナルティーエリア(PE)内に攻め込んだ瞬間からだった。PE付近で日本の南野がイランの選手との接触プレーで倒れた。イランDFは南野のシミュレーションだと主審に猛抗議し、南野から目を離した。南野はタッチライン際に転がったボールを追いかけ追いつき、フリーで狙いすましたような絶妙なクロスをあげた。それをゴール前に走り込んでいた大迫が頭で仕留めた。イランDFは大迫につききれず、ほぼ大迫をフリーにしてしまった。主審への抗議でゴール前を空けたイランDF痛恨のミスだ。

イラン選手は主審の笛に不信感を抱き続けていた

この得点シーンに至るまで、イランは主審のジャッジに不満を露わにしていた。主審のジャッジがことさら、日本寄りというわけではなかったが、イラン選手と価値観が異なったようだ。南野が倒れたシーンについては、南野のシミュレーションをとる主審もいただろうし、とらない者もいただろう。それだけの話だ。イランDFが抗議に夢中になっているあいだ、ボールを追いかけ、大迫にクロスを上げた南野の執念が勝負を分けた。

日本にとって喜ばしいVAR判定

イランにとって不運が続く。67分、日本選手のPE内進出を阻もうと守備に入ったイランDFが滑って手をついたところに南野のパスが当たり、VAR判定の結果、日本がPKを得た。このPK判定も微妙。スロービデオを見ると、確かにイランDFの上腕にボールが当たっているが、故意ではない。イランDFがピッチに手をついたときにボールが偶然、飛んできたかたちだ。VARを見た主審がPK判定したのは、日本にとってラッキーだった。

イランにとって0-1で後半が進めば、同点、逆転の目はもちろんあっただろう。しかし、後半開始57分~67分のイランにとって不本意なダブルパンチは、致命的だった。失点の仕方が悪すぎた。主審との相性の悪さ、油断から失った本大会初失点のショック、続くVARによるPK判定による失点と、イラン選手にとって悪夢のような10分だった。

日本がイランDFを完全に崩した結果での得点でない。そのことが余計に、イラン選手の焦燥感、不信感を深め、戦闘意欲を喪失させていった。この試合も日本にツキがあった。このような流れは、ワールドカップやアジアカップのような短期決戦で優勝するための重要な要素だ。

結論をいえば、本大会優勝候補のイランに日本が大差で勝利したからといって、得点差ほど実力差があるわけではない。ボタンの掛け違いが90分経過して、大きな得点差に昇華したのだ。日本は“勝って兜の緒を締めよ”と心したほうがよい。

カタールは冷静なスナイパー、決勝は2-0でカタール勝利か

カタールは異様なスタジアムの雰囲気の中、開催国UAEに準決勝で完勝した。スタジアムの興奮やペットボトルはもとより靴が投げられるような状況の中、冷静沈着だった。試合終了間際のUAE選手の暴力行為にも動じなかった。彼らはよく訓練されていて、精神的にタフ。精巧に組み上げられた機械のようなプレーをする。

日本の勝機は、彼らが構築してきたメカニズムを狂わせることで、見いだされるのではないか。決勝は、フィジカル、スピードでカタール、メンタル、技術で互角、経験で日本が有利だと判断する。

実力は両者ほぼ互角。ノックアウトステージにおいて試合を決定する不確定な要素としては、VAR判定を含めたジャッジ、セットプレー、ミスだろうか。決勝は日本時間今夜23時、筆者の予想は、日本がツキを使い果たし、カタールが2-0で勝つ。