2019年9月18日水曜日

絶望の「二刀流」ーー大谷、膝の手術でシーズン終了

9月13日、大谷翔平(MLB)が左膝蓋骨の手術を受けた。全治まで8~12週間かかる見通しだ。大谷の病状は二分膝蓋骨と呼ばれ、生まれつき膝の皿が1つではなく、2つに割れている体質だったという。手術で割れた皿を1つに戻すのであろうか。とにかく今季の試合出場は絶望、彼の2019シーズンは終了した。

打者専念でも不本意な成績

2019シーズンの成績は、打率.286(106試合、384打数、110安打)、18本塁打、62打点、51得点、35四死球、110三振、12盗塁という結果に終わった。二刀流を封印しDHに専念したにもかかわらず、不本意な結果に終わった。昨年の肘、今シーズン後半には膝と、プロ野球選手としては選手生命に係る部位の手術なだけにおおいに心配だ。

膝の悪化は「二刀流」による蓄積疲労が主因

大谷の身体の変調の原因については、医学的知識皆無の筆者の直観にすぎないが、日本での2013~2017年の5シーズン(日本ハム時代)の「二刀流」にあると考えている。筆者は拙Blogにおいて常々、「二刀流」は無理だと書いてきた。繰り返しになるが、打者と投手は野球という同一の競技にありながら、異なる運動だ。日本での5シーズンにおける過剰な練習による身体的負担が蓄積したうえに、MLBに移籍。そしてその直後にやってきた、肘の故障と手術による「二刀流」の挫折、加えて、環境変化や過酷な移動を伴うMLB生活で心身の疲労が蓄積し、それまで発症しなかった膝にまで故障が及んだと考えられる。

専門化して進化してきたベースボールの歴史

大谷が来シーズン以降、「二刀流」に固執するならば、彼のプロ野球人生は儚いもので終わるだろう。プロ野球、就中、MLBを甘くみてはいけない。野球という競技は進歩に進歩を重ね、ダイナミックな変容を遂げてきた。先発投手の球数制限、分業制、新球種開発、スピードガン、rpm(回転数測定)などの機器の発達…があったし、この先も変化があろう。野手においては、投手、捕手以外の複数ポジションをこなせる能力が求められる一方、DH制度の導入により、打撃のスペシャリストが誕生した。この期に及んで、野手と投手の兼任――「二刀流」はあり得ないポジションなのだ。

大谷にとってMLB生き残りの正念場

MLBにおける大谷を取り巻く環境は、日本のメディアが流す好意的報道ほど、甘くないと思われる。「二刀流」が不可能と判断されれば、大谷は打者か投手かの選択を迫られる。野手の経験がない大谷は守るところがないため、DH専門の打者としてMLB業界で生きていかなければならない。そうなると、打率、本塁打、打点で求められる成績は一層厳しい数値となる。

大谷の「二刀流」を引っ提げたMLB移籍はここまでのところ、大失敗だ。彼の願望、夢への挑戦は、甘かった。「二刀流」という変則的選手である大谷と契約を結んだエンゼルスの計算は、筆者の想像だが、短期的な営業成果を期待したものにすぎなかったのではないか。アメリカの打算的なスポーツビジネス界は、金の卵を産まなくなったアヒルを見切るのも早い。

投手専念がベスト、打者ならば日本に早期復帰を

大谷はどうしたらいいのか。エンゼルスとの契約が残っている期間にコンディションを整え、投手か打者かの一本化を決断(当然のことながら練習もどちらかに一本化)すべきだ。筆者は肘の故障が完治しているのならば、投手に専念すべきだと思う。投手としてMLB挑戦を続け、挫折した段階で、日本球界に復帰したらいい。肘の状態が悪く、投手として専念できないようならば、直ちに日本球界にDHとして復帰すべきだろう。とにかく、大谷が野球を続けられる進路を探るべきだ。