2020年1月31日金曜日

アジアからも取り残された森保ジャパン

田嶋幸三(日本サッカー協会/JFA)会長と森保一(サッカー五輪監督兼日本A代表監督)の続投が正式に決まった。JFAの技術委員長などの主要人事にも変化はみられなかった。
驚くに当たらない結果ではあるものの、これで日本サッカーの進化の道は閉ざされた。この先、日本サッカーのガラパゴス化が一段と進む。

ガラパゴス化する森保ジャパン

2019年1月のAFCアジア杯準優勝から本年1月のAFC・U23アジア選手権タイ大会グループリーグ敗退に至る1年間を振り返ってみれば、日本サッカーの現体制が世界のサッカートレンドから外れ、弱体化してゆくプロセスをたどっていることに疑いようがない。にもかかわらず、JFAは体制を維持した。

本年夏の東京五輪は日本ホームの大会だから、タイで開催されたU23大会よりはましな成績をおさめるだろう。その結果、おそらく森保が五輪以降もA代表監督であり続けることはあり得る。そうなれば、日本がW杯カタール大会アジア地区最終予選は厳しい結果となり、もはや手遅れとなる可能性を否定できない。田嶋を筆頭とするJFA幹部の頭の中には、いまの日本の代表サッカーの危機の認識は薄く、自分たちの権力維持だけが充満している。カタールに行けなくなれば、日本における代表サッカー人気はもちろんのこと、Jリーグにも悪い影響を与える。

U23タイ大会から見えたもの

U23アジア選手権タイ大会のベスト4は韓国(優勝)、サウジアラビア(準優勝)、オーストラリア(3位決定戦勝者)、ウズベキスタン(同敗者)であった。ベスト4に残ったチームに共通するサッカーは、①堅守、②速攻、③ロングボール(パス)の多様、④ミドルシュート、ロングシュート、⑤デュアルの強さ、⑥強いフィジカル――を備えていたところだった。これらは、W杯ロシア大会直前で代表監督を解任されたハリルホジッチが常々口にしていたものだし、かつ、これらの要素はかつてオシムが“世界のサッカートレンド”として指摘したものであって、特段新しいものではない。

アジア杯、W杯といった短期決戦(代表サッカー)でよい成績をおさめるためには、これらに焦点を当てて磨き上げなければ勝ち抜けない。代表サッカーの成功は、これら要素を満たす資質をもった選手で構成された代表チームを短期間で醸成させなければならない。そのうえ、試合間隔の短い大会におけるコンディション調整などにも気を配る必要がある。

楽しみな韓国、ウズベキスタン

U23アジア選手権タイ大会で成功した前出の4チームは、精度は低いもののこのような要素をもっていた。優勝した韓国は成長が期待できるタレンティブな選手で構成されていた。そればかりか、アジアでは群を抜いたデュアルの強さとスピードがあった。長身のCFWを積極的に起用し、経験を積ませようとしていた。かれらが五輪を経験し、現在の韓国A代表と融合してW杯カタール大会予選を戦っていくことになる。韓国代表はより強力な戦力を保持することになる。

準決勝で韓国に負けて決勝進出を逃したオーストラリアは大会を通じて物足りなさを感じさせたものの、元来のフィジカルの強さがW杯アジア予選では武器になる。日本が苦手とするタイプなので、注意すべき存在であることに変わりない。

3位決定戦でオーストラリアに負けて五輪出場を逃したウズベキスタンは未完成ながら、堅守速攻を持ち味とするモダンサッカーを身に着けた良いチームだった。韓国同様、現在のA代表と融合したとき、日本を脅かす存在になる。

評価が難しいサウジアラビア

決勝で韓国に負けたサウジアラビアは不思議なチームだった。強いCBを柱とした守備の固さが目立ったが、攻撃のポイントをつかむ集中力は驚異的だ。AFCアジア杯で日本を苦しめたサウジアラビアA代表とそっくりなチームだったことに驚いた。よくわからないチームである。

瀬戸際の日本、イラン

U23タイ大会で日本同様予選敗退したチームとしては、日本と予選同組(死のBグループ)だったアジア杯優勝国のカタールがあり、同じく死のCグループで韓国、ウズベキスタンに退けられたイランがある。アジアのサッカー界はいま流動的であり、この先、絶対的な強さを維持できるのは韓国だけだろう。

筆者のアジアのランク付けは、▽ランクA=韓国、カタール、サウジアラビア、▽ランクB=オーストラリア、ウズベキスタン、日本、イラン、▽ランクC=イラク、UAE、ヨルダン、タイ、シリア、中国・・・と続く。W杯カタール大会アジア最終予選の組合せは現在のところもちろん不明だが、アジア枠は4.5はわかっている。前回と同じレギュレーションであれば、開催国枠のカタールを除いた2グループの2位以内であることが望ましい。大陸間プレーオフにもちこまれると厄介である。日本のライバルは前出のランクA及びBの韓国、イラン、サウジアラビア、オーストラリア、ウズベキスタンであることは確実だが、イラク、シリア、UAEなどの中東勢にアウエーで取りこぼしをすると、グループ2位に入ることは難しくなる。

結論はあい変わらず、繰り返しになるが、森保を早期に更迭しないと、日本はカタールに行けなくなる。