2016年12月23日金曜日

鹿島アントラーズの傷


FIFAクラブワールドカップ(CWC)は開催国枠で出場した日本の鹿島(J1優勝)が決勝進出。欧州大陸王者のレアルマドリードと90分間では2-2と善戦した。延長で鹿島は4-2で負けたものの、鹿島の奮闘に対して世界中から称賛が寄せられた。

さて、鹿島アントラーズとは不思議なチームである。先のJ1優勝決定戦では3位の位置から勝ち上がり優勝をさらった。鹿島の優勝については、拙Blobにおいて、Jリーグの優勝決定システムの瑕疵を指摘しておいたので、繰り返さない。もちろん真のJ1王者は、前後期を通じて最も勝ち点を上げた浦和レッズである。

鹿島は、CWCでは開催国枠で出場権を得た。アジア大陸枠からはACLを制した韓国の全北が出場したのだが、準々決勝で北中米大陸王者のクラブアメリカに1-2で負けた。開催国枠とACL優勝枠とは出場の重みが違うと筆者は思う。もちろん大会レギュレーションでは開催国枠には厳しい日程が組まれていて試合数が多い。しかしそんなハンディはハンディにならなかった。

鹿島のCWCにおける善戦の要因は何か――といえば、“ホームの利”に尽きる。開催国枠クラブが決勝進出した事例は、2013年、北アフリカのモロッコ開催で起きていて、同国のラジャ・カサブランカが果たしている。同大会のアフリカ大陸代表はアルアハリ(エジプト)であった。また、2015年日本開催では、開催国出場枠のサンフレッチェ広島が3位になっている。ちなみち、広島3位のときのアジア大陸王者は広州恒大で、広州はなんと3位決定戦で広島に苦杯を舐めた。

日本のクラブが開催国枠以外で、つまりACL覇者としてCWCに出場したのは2007年の浦和レッズ、2008年のガンバ大阪の2回のみ。その2回のCWCは日本開催で、浦和、大阪とも3位の成績をおさめている。

つまり、日本開催のCWCならば、ACL王者であろうが開催国枠であろうが、日本のクラブでもけっこう戦えることが実績で証明されている。これすなわち、“ホームの利”にほかならない。

CWCは課題が多い。開催国が有利なのは、各大陸王者が開催国まで移動する時間が長いことに起因する。とりわけ欧州王者はリーグ戦の真っ最中。クリスマス休暇に突入する前だから、激戦が続いている。その時期におよそ15時間の飛行時間を経て、試合の3日前くらいに開催国にやってくるのだから、時差等でコンディションはよくない。欧州以外からでも、日本開催の場合、北中米、南米、アフリカのクラブならば、概ね20時間以上の飛行時間を覚悟しなければならない。

結論をいうならば、鹿島がJ1で年間勝ち点最多の成績(=優勝)をおさめ、さらにACLを制し、日本以外の開催地で行われるCWCで決勝に進むことができたならば、このたびの鹿島の善戦が実力によるものと証明される。幸い、来季からはJ1リーグは1シーズン制に復帰する。また、WCWの開催国はUAEに決まっている。つまり、鹿島がリーグ戦とACLを並行して戦い、どちらも手を抜くことなく、アジア大陸王者としてUAEに乗り込めるかどうか。そして、CWCの舞台でどれだけの成績をおさめられるのか。換言すれば、鹿島がACLを制せなければ、Jリーグで優勝してもCWCには進めない。鹿島がACLを制しても、Jリーグで優勝できなければ、リーグを捨てたと見做される。来季の鹿島アントラーズの戦いぶりを注視しよう。