2016年12月4日日曜日

浦和は負けるべくして負けた―J1CSファイナル

◇JリーグCS決勝第2戦 鹿島2-1浦和(12月3日/埼玉)

CS2戦目は鹿島が浦和からアウエーゴール2を奪い、CSチャンピオンとなった。年間勝点トップの浦和が同3位(前期優勝)の鹿島に負けた結果、年間3位チームがリーグチャンピオンとなってしまった。こんな結果に違和を感じるのは筆者だけだろうか。何度も拙Blogで書き続けてきたことだけれど。

●適正だった主審のジャッジ

そのことを詳述する前に、CSの2試合について、簡単に触れておこう。第一に、決勝第1戦に比べて、主審のジャッジが格段に良かったことを挙げたい。拙Blogで触れたとおり、Jリーガー、海外組を問わず、日本人選手は選手同士の接触プレーに弱い。その主因はJリーグの審判団がデュエルを好まないからだ。見かねた代表監督のハリルホジッチがその必要性・重要性をことさら強調して改善を要請してきた。しかし、Jの審判団はハリルホジッチの希望にこたえていない。その代表的な試合がCS第1戦だった。

ところが、第2試合の主審は実に的確に接触プレーを判定した。その結果どうなったかというと、御覧のとおり、フィジカルの強い鹿島が浦和に勝った。この試合の笛を第1試合の主審が吹いていたら、浦和は負けなかったかもしれない。つまり、浦和の1勝1分けもしくは2勝で終わった可能性が高かった。

●浦和の守備力に難あり

第二は、浦和の守備力の弱さだ。前出のとおり、浦和選手のフィジカルに難点が目だったが、とりわけ守備面でその弱さが表出した。

メディアは浦和のCS敗退を「埼スタの悲劇」「番狂わせ」「下剋上」と、予想に反した結果として報道しているが、果たしてそうなのだろうか。筆者はCS制度が導入された昨年今年のJリーグに興味を失っていたのでその試合を見ていないが、CS2試合を見た限りでいえば、浦和に足りないものはフィジカル及び守備力だ。鹿島に同点に追いつかれたのは、前半40分、浦和の左サイドにでたロングボールを処理しようとした浦和DFが、鹿島の遠藤に簡単にボールを奪われ“どフリー”でクロスを上げられ、右サイドのノーマークの金崎にゴールを決められたもの。守備的MF阿部もケアしきれなかった。

浦和は攻撃力に定評のあるチームだといわれているようだが、守備力は弱い。DFの背後に配されたパスもしくはロビングに対応しきれなかった。3バックの両サイドに広大なスペースがある。だれがどう守るのかの決め事がないようにみえる。決勝PKを献上したシーンは前がかかりになった自陣で簡単にボールを奪われ、決定的なパスをつながれて槙野が鹿島のFWを背後から倒したもの。浦和敗戦の戦犯は、左サイドの守りを担当する槙野、宇賀神、阿部だ。

違和感残る「真の王者」――鹿島がJ1最強なのか

さて、CSの結果、J1の「真の王者」は鹿島となった。年間勝ち点74の浦和に対し、3位の鹿島は59と“5勝分”にあたる15点もの勝ち点差があった。J1リーグ戦年間順位は、1位=鹿島(勝ち点59)、2位=浦和(勝ち点74)、3位=川崎F(勝ち点72)。違和感が拭えない。

(一)後期を捨てたチームでもCSに参戦できる?

年間勝ち点首位の浦和が負けた結果、CS制度の矛盾が一気に噴出してきた。その第一点目は、後期を意図的に捨てたチームでも、CSに参戦できること。鹿島は前期優勝を果たしたが、後期はまるで振るわず、内紛まで起こしたチーム。前期優勝で気が緩んだのか、意図的に後期を捨てたのか定かではないが、後期は試行錯誤を覚悟して臨んだ可能性が高い。鹿島の心理を大げさに書けば、“前期優勝でCS出場権を確保した。後期いくら一生懸命やってもCSがあるから、流そう”と。そんなムードがあったかどうかは知らないが、ただいえるのは、前期を制したチームは、後期について、CSに向けた調整期間としてとらえることが可能だということ。

(二)シードの浦和は実戦から遠ざかりすぎ

第二点目は、リーグ(後期)終了から、シードチーム(今年は浦和)はCS決勝まで空白期間があること。浦和は年間勝点1位を決めてから3週間以上も間が開いた。公式戦は、11月12日に行われた天皇杯4回戦以来となる。試合勘に不安があって当然だ。

一方の鹿島は川崎と試合(11月23日)をして「肩慣らし」をして29日に決勝第1戦を迎え(0-1で負け)、2戦(12月3日)に臨んだ。浦和に比べれば、きわめて順当な間の取り方だ。実戦から遠ざかっていた浦和の第1戦は辛勝。精神的に優位に立てなかった可能性がある。いわゆる「追われる立場」の弱さだ。

●CSが明らかにした、J1リーグのレベルの低さ

浦和のCS敗退はもちろん、制度の欠陥だけではない。浦和の弱点は、前述のとおり、フィジカルの弱さであり、3バックのもつサイドの空きスペースを埋めきれなかった点であり、翻っていえば、攻撃重視の姿勢が前のめりとなりすぎ、横の視線が欠けたことにある。守備ブロックという概念さえ、浦和の選手には欠落していたように思われる。

フィジカルが弱いから、相手のプレッシャーが強ければ、ボールを奪わる回数が増える。前のめりでしかも、3バックだから、サイドに大きな穴が開く。自陣でボールを奪われれば、相手に決定機を与える。一発勝負となれば、偶発性、ミス等によって、勝敗の行方は左右される。第1戦は判定に救われて先勝したが、2戦目の主審は浦和に有利な判定をしてくれなかった。浦和は負けるべくして負けた。

CS制度が「真の王者」の決定の場として相応しくない場であることだけが証明された。確かにこのような制度は矛盾が多い。今年で最後となるのは当然だ。CS制度に飲み込まれた浦和は、ある意味において、悲劇のチームだといえなくもない。

しかし、CSファイナルに出場した2チームのレベルはどうなのだろうか。難点ばかりが目立った浦和が、年間勝ち点トップなのはなぜか。フィジカル面で強さを見せた鹿島の後期の成績はどうなのか。普通ならば3位のチームにすぎない。J1のレベルアップが望まれる。