2022年6月24日金曜日

完全、ノーノーは今季、なぜ続出するのか

 今シーズンのNPBは完全試合(パーフェクト)、無安打・無得点(ノーヒット・ノーラン)が両リーグを通じて多発している。シーズン半ばにして、完全の佐々木(ロッテ)を筆頭に、記録に残らな準完全が大野(中日)の二人。ノーノーは山本(オリックス)、今永(DeNA)、東浜(ソフトバンク)と3人である。打高投低といわれる野球界の昨今の傾向からすると、信じがたい感がある。

当然、その理由をたずねなければなるまい。しかるに、筆者においては、野球解説者諸氏の見解を管見の限り聞く範囲において、明快な回答を得るに至っていない。そこで筆者の見解を披歴する次第である。

その答えは単純にして明快、主審の縦ゾーンのストライク判定が低めに広くなったからである。ルールでは、打者がヒッティングに入った状態において、縦方向の上限:肩の上部とユニフォームの ズボンの上部との中間点に引いた水平のライン、縦方向の下限:膝頭の下部のライン、と定められている。(下図参照)

今シーズン、主審はこの規定通りにストライク判定をしている。以前はどうだったのかというと、縦ゾーンの低めに辛く、投手に不利な状況が続いていた。MLBはその低めがさらに甘く、打者がフライボール革命を起こし、低めを克服しようと努力している。NPBでは永らく、ダウンスイングがよしとされ、高めを叩く打法が推奨されてきた。投手側はそれに対してチェンジアップ、スプリット、ナックルカーブ等、縦の変化に生き残り策を見出し、縦方向におけるストライクゾーンぎりぎりからさらに低めに変化する球種を多投するようになった。今シーズンは更に、縦方向の低めが広くなったため、投手有利へと変異したことになる。しかし、MLBでも同じようなものだけれど、NPBの場合は主審の個性にバラツキがあること。だから、主審次第で、1試合に10本近くのホームランが飛び出すような打撃戦もある。

筆者の見解としては、ルール通りにストライク判定することがあたりまえであって、観客に忖度する必要はない。今季、審判団が規定順守に切り替えたことは英断である。コミッショナー、メディア、ファンも審判団の英断を支持し、へんな圧力を加えないことを望む。たとえば、投壊にあえぐ読売あたりから、打者有利のストライクゾーンに戻せというような圧力がかからないとも限らない。投手はさらに低めのストライクをうまく使える投球に磨きをかけるように、打者は打者で、低めに広くなったストライクゾーンを克服するための技術向上に、それぞれ、はげんでもらいたいものである。(了)