2010年11月8日月曜日

尖閣ビデオ映像投稿は「国家反逆罪」

尖閣諸島の中国漁船衝突事件のビデオ映像が流出した問題で、日本中が大騒ぎになっている。本件の前に、公安資料がやはりインターネット上に流出しており、日本の治安関係組織の情報管理の甘さが心配されている。

当該ビデオ映像の投稿者については、検察もしくは海上保安庁の内部の者であると推測されている。また、動機については、中国の強圧外交に屈した日本政府に対する抗議であるとか、逮捕した中国人船長を釈放した、これまた、日本政府に対する現場(=海上保安庁)の怒りだともいわれている。マスコミに登場する一部ナショナリストからは、ビデオ投稿者を「憂国の徒」「国士」だと賞賛する声まであがっている。TVのワイドショーでは、ビデオ映像公開を控えた日本政府に非難が集中し、早く公開しておけば、こんなみっともないことにならなかったであるとか、犯人探しは必要ない、とまで公言するコメンテーターまで現れている。

まずもって、ビデオ投稿者は、これが検察もしくは海上保安庁の職員によるものであるならば、犯罪者である。国家公務員法(守秘義務)違反であるから、即刻逮捕し、背後関係など徹底的に捜査しなければならない。もちろん処分の対象となる。国は、犯人を特定し、犯罪者の氏名を公開し、捜査結果もまた、国民に公表すべきである。さらに、杜撰な管理を行った(検察もしくは海保の)管理者も処分しなければいけないし、今後の改善策を作成・提出させるべきである。

第二に、ビデオを公開すべきかどうかという問題がある。筆者は、当該ビデオは外交カードだと考えるがゆえに、公開・非公開は政府の判断に委ねられるべき性格のものであり、これまで、原則非公開という政府の措置は正しいものと確信する。つまり、ビデオ映像の公開を控えた政府判断は正しかったと。

中国漁船が海保の警備艇に体当たりをしたことは事実であり、そのことは、ビデオ映像を見なくても判断がつく。中国政府もそのことはわかっている。それでも、中国政府は、日本側が中国人船長を逮捕するという事実を許容できない事情があった(と筆者は推測する)。だから、中国は強圧的な手段をとった。それに応じて、日本政府が対抗的強硬姿勢を示せば、日中関係は修復できないところまでいってしまう。武力衝突である。それは、両国政府も国民も望まない。では、中国の事情とは何かといえば、これまた推測だが、中国の権力中枢内部における、日本外交に係る路線対立である。

今回中国政府が示した強硬姿勢は、世界(とりわけ欧州)から、非難の的となった。それは副次的な成果だった。また、日本が中国人船長を釈放し、さらに、中国で逮捕された日本人4名の釈放を急いだことは賢明であった。なお、両国のトップ同士がいくどか非公式に接触し、両国の関係修復に努力したことも正解だった。ビデオ映像非公開が、日中関係が比較的早期に修復に向かった理由の1つであったかもしれないし、どうでなかったかもしれない。いずれにしても、両国の関係が修復されるのは、あとは時の経過を待つだけという状況にたどり着いた。そして、完全に修復された暁には、ビデオ映像は永遠に日の目を見なかった可能性もある。それでいい。

一方、可能性としては低かったものの、中国側が、なお引き続き日本政府を非難し、中国漁船のとった行動を正当化するような姿勢をいまにいたっても示していたとしたら、そのとき、日本政府は、外交カードの1枚として、ビデオを世界中に公開するという選択肢も浮上したかもしれない。現実にはそうならなかったのだが。

繰り返すが、ビデオ投稿者は、「憂国の徒」でもなければ「国士」でもない。一歩まちがえば、国家を危機に陥れたかもしれない反逆者・犯罪者・スパイである。投稿者が国家公務員ならば、前出のとおり、犯罪者である。犯罪者は裁かれなければならない。そして、外交カードについて杜撰な管理を行った行政組織の管理者にも、処分が必要である。

本件では、幸いにして日中関係は修復しつつあり、当該ビデオは重要な外交カードではなかった。だがしかし、だからそれを勝手にもちだして、動画サイトに投稿してよいわけがない。本件は軽微な外交カードの流出であったが、もっと重要なものであったならば、それを持ち出した者は、亡国の徒であり、(わが国には存在しないが、)“国家反逆罪”に該当する。“国家反逆罪”を犯した者には、断固とした処分を行わなければならない。